米FRB議長への風当たり強まる、対応に懸念-31日に危機後初の講演

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB) 議長に対する米政府やウォール街からの風当たりが強まっている。信用市場の 危機に対する議長の対応能力に、疑問の声が出ている。

世界的な信用収縮はバーナンキ議長が就任して以来の1年半で最大の試練 だ。議長はリスク投資を行った投資家を保護することなく、米経済のリセッシ ョン(景気後退)入りを回避するため難しいかじ取りを迫られている。

米金融当局の政策を長く見守ってきた一部の研究者やエコノミストは、サ ブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン市場の問題は「限定されてい る」との楽観的発言を議長が繰り返すべきではなかったと指摘する。サブプラ イム問題は短期市場の信用収縮につながり、世界の中央銀行は異例の資金供給 を余儀なくされた。米連邦準備制度の元政策当局者らを含むバーナンキ議長へ の批判は、信認の失墜や政策効果の低下にも言及しつつある。

連邦準備制度の元エコノミストで中央銀行についての著書のあるデービッ ド・M・ジョーンズ氏は、今は「バーナンキ議長の命運を分ける時期だ」とし て、「就任から日が浅いが、これは恐らく究極の試練だろう」と語る。

バーナンキ議長は7月以来、公の場で発言していない、8月31日の住宅と 金融政策についての講演が、危機発生から最初の発言になる。議長はワイオミ ング州ジャクソンホールで開催される恒例の中央銀行当局者・エコノミスト会 議で講演する。

痛みに無頓着?

米当局は8月17日に公定歩合を引き下げるとともに、景気見通しを修正し フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の引き下げに道を開いた。リーマン・ ブラザーズ・ホールディングスの米国担当チーフエコノミスト、イーサン・ハ リス氏によれば、この対応の前には「バーナンキ議長は市場の痛みに無頓着だ という感じ方が広がっていた」。

「金融政策には信頼が重要だ」とハリス氏は話す。「当局が市場の機能まひ を解消しなければ、米経済はリセッションに陥るだろうが、同時にバーナンキ 議長の評判も傷つくだろう」と同氏は指摘した。

バーナンキ議長の対応は、就任3カ月足らずだったグリーンスパン前FR B議長の1987年の株価暴落への対応と比較されがちだ。グリーンスパン前議長 は積極的なマネー供給でリセッションを阻止し、信頼を勝ち取った。

経済予測の専門家で、ニクソン、フォード両大統領時代に顧問を務め政界 での経験もあったグリーンスパン前議長と異なり、学者出身のバーナンキ氏は FRB理事時代にも議長就任直後にも発言に批判を浴びることがあった。しか し、今回の危機はこれらの事件とは比べ物にならない。

8月7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明でインフレ抑制が最重 要課題との見解を繰り返した3日後に、当局は2001年の米同時テロ事件以来で 最大の資金供給を実施した。翌週には緊急会合で公定歩合引き下げを決め、景 気見通しを軌道修正するという異例の事態になった。

31日の講演は期待薄か

混乱は収束の傾向にあるものの、金融市場参加者の多くは次の一手として のFF金利誘導目標引き下げを期待している。ウエイン・エンジェル氏ら米連 邦準備制度の元当局者やシェロッド・ブラウン上院議員(民主、オハイオ州) など政治家からも、対応の遅れを懸念し早期の行動を望む声が出ている。

しかし恐らく、バーナンキ議長の31日の講演は、当局の行動についてのヒ ントを求める投資家を失望させるだろう。ブルッキングス研究所の上級研究員 で元FRB副議長のアリス・リブリン氏は、バーナンキ議長は「当局の行動に ついては一言も言わないだろう」として、「議長が望むのはただ、市場が議長の 手腕を信頼し、金融政策はFRB議長の仕事であることを認めることだろう」 と話した。