米超長期債は金融当局の姿勢転換の犠牲となる恐れ-信用収縮の対応で

米国債のなかで過去1年3カ月の投資リ ターンが最高だった30年債は、信用収縮を緩和しようとしている米金融当局 の犠牲になる恐れがある。

JPモルガン・プライベート・バンクの債券トレーディング責任者、ブラ イアン・カーリン氏は、米金融当局が利下げを実施し、インフレが加速する恐 れがあることから、超長期債の利回りが上昇(価格は下落)すると予想してい る。

カーリン氏は、投資家が長期債保有に「より大きなリスクプレミアム(上 乗せ金利)」を求めるようになるだろうとして、利下げは「ある程度インフレ 圧力を高める可能性がある」と解説した。

フェデラルファンド(FF)金利先物の動向は、9月18日の米連邦公開 市場委員会(FOMC)での利下げを市場参加者が確実視していることを示唆 している。当局は8月17日に、公定歩合を引き下げた。

米金融当局の措置は株式・社債市場の混乱収拾に役立つ一方、超長期債投 資家の懸念は強まった。当局は1年余りで初めて、インフレ抑制が最優先課題 ではないことを示唆した。声明では、サブプライム(信用力の低い個人向け) 住宅ローン危機で景気リスクが高まったと指摘した。

カーリン氏は2、3年債の買いを推奨し、長期債を避けることを勧めてい る。30年債の利回りは年末までに5.25%(先週末は4.89%)に達する可能性 があるとみている。同氏の予想通りならば、30年債の価格は3.7%下落するこ とになる。

キャンター・フィッツジェラルドによると、先週の30年債(表面利率5 %、2037年5月償還)価格は1 28/32上昇の101 26/32で終了した。

投資家は消費者物価の上昇を予想すれば、超長期債保有により大きなプレ ミアムを求める。30年債のインフレ調整後の実質利回りは現在3%。当局が インフレ重視姿勢を明らかにした2006年5月以来の平均は2.65%だった。同 時期からの30年債のリターンは金利再投資を含め10.8%と、10年債の9.4% や2年債の7.2%を上回る(メリルリンチ調べ)。

米国のサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローンの焦げ付きに端 を発した混乱は、ヘッジファンドの破たんをもたらし短期市場を機能停止に陥 れた。トランスアメリカ・インベストメント・マネジメントの債券ファンドマ ネジャー、デレク・ブラウン氏は、米金融当局は今「金融市場の大混乱という リスクに対処している」として、「インフレ抑制から政策の焦点を移すのは必 要なことだ」と指摘した。

当局のインフレ抑制重視の姿勢は超長期債の利回りを短期債との比較で、 低く抑えてきた。30年債利回りは04年6月30日には2年債を2.61ポイント 上回っていたが、今回のサイクル最後の利上げでフェデラルファンド(FF) 金利の誘導目標が5.25%となった06年6月29日には、スプレッド(利回り 格差)は0.06ポイントになっていた。

その後当局は金利を据え置く一方で、FOMC声明でインフレ抑制重視の 姿勢を明確にしてきた。8月7日の声明も同様だったが、信用収縮を受けて 17日には公定歩合を0.5ポイント引き下げ5.75%とした。30年債利回りの2 年債とのスプレッドは0.59ポイントに拡大している。

リバーソース・インスティチューショナル・アドバイザーズで運用に携わ るコリン・ランドグレン氏は「当局は本当に、インフレ抑制重視の声明から、 180度姿勢を転換させた」として、「超長期債にとっては数週間前の当局のメ ッセージの方が好ましかった」と話す。同氏は保有資産中の現金比率を高めて いるという。