日銀会合:翌日物金利「0.5%」据え置き-賛成8人、反対1人(3)

(第13段落以降にコメントを追加します)

8月23日(ブルームバーグ):日銀は23日午後、同日開いた金融政策決定 会合で、無担保コール翌日物金利の誘導目標を「0.5%前後」とする金融調節方 針を8対1の賛成多数で決定した、と発表した。反対したのは水野温氏審議委員。 米サブプライム問題に端を発した世界的な金融市場の混乱を受けて、日銀は第3 次利上げを見送った。今後、金融市場の動向と欧米中央銀行の金融政策をにらみ つつ、9月以降の利上げに向けて仕切り直しを行う。

日銀は補完貸付金利を「0.75%」に、長期国債の買入額は「月1兆2000億 円」に据え置いた。同日午後3時に金融経済月報を公表し、3時半に福井俊彦総 裁が会見を行う。

モルガン・スタンレー証券のロバート・フェルドマン経済研究主席は「世 界の市場が不安定になっていることや円高やデフレ状況を考えれば、十分説明で きる判断だ。市場は『日銀はきちんとやった』と思うだろう。逆に、上げていた 場合、どういう論理で上げたか納得できる説明が必要になっていた」としている。

サブプライム問題に吹き飛ばされた日銀

日銀は7月の決定会合で4月末の展望リポートの中間評価を行い、経済・ 物価情勢は「おおむね見通しに沿って推移すると予想される」との判断を示した。 月末に参院選が控えていたこともあり、日銀はその結果を見極めたうえで8月会 合で利上げに踏み切る腹積もりだったが、米国の信用力の低い個人向け住宅融資 (サブプライムローン)問題を発端とした世界的な金融市場の混乱で、利上げの 機会は吹き飛ばされてしまった格好だ。

世界的な株安とリスク資産の回避を受けて、米連邦準備制度理事会(FR B)は17日、臨時の連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、公定歩合の緊急 利下げを実施した。同時に公表した声明では「経済成長の下振れリスクが目に見 えて高まった」としたうえで、「金融市場の混乱から生じる経済への悪影響を和 らげるため、必要に応じて行動する用意がある」と表明した。

これを受けて、世界の株式市場は小康状態となっているが、金融市場は9 月18日のFOMC、ないしはそれ以前に、政策金利であるフェデラルファンド (FF)金利が引き下げられることを完全に織り込んでしまった。米国が景気の 下振れリスクを前面に出して利下げすれば、外需に依存する日本経済の成長シナ リオも修正を迫られ、日銀の利上げはさらに遠のく可能性がある。

米国は利下げ、欧州は据え置きか

日銀が9月18、19日の金融政策決定会合で利上げに踏み切るためには、① 世界の金融市場が落ち着きを取り戻す、②欧州中央銀行(ECB)が6日の理事 会でトリシェ総裁の予告通りに利上げを行う、③FOMCが利下げをしない―と いう3点が前提条件との見方が市場では強い。しかし、BNPパリバ証券の河野 龍太郎チーフエコノミストは②と③のいずれについても否定的だ。

河野氏は米国について「資金の出し手である機関投資家のリスクテイク能 力は大きく悪化しており、今後、資本コスト上昇や資金のアベイラビリティー (有用性)悪化が家計や企業の支出行動に悪影響をもたらす」と指摘。「次回F OMCまでに0.5%の利下げに踏み切り、FF金利を4.75%にする」と予想す る。ECBについても「9月利上げは現在の金融市場の不安定性を考えるとほと んど不可能になった」とみる。

その場合の日本への影響について河野氏は、「世界的な金融市場の混乱の 日本経済への影響はそれほど大きくない」し、「米欧を中心とした中央銀行の流 動性供給によって流動性枯渇といった状況は避けられ、世界金融市場が早期に落 ち着く可能性はある」とみる。しかし、それでも「日銀は混乱の再発を警戒し、 しばらくは様子見を続けるだろう」と指摘。利上げは「早くて11月13日」と 予想している。

ECBが利上げすれば日銀も

一方、今月9日に巨額の資金供給を行うと同時に、突然の声明を公表し、 世界的な株式市場急落の一因になったECB。22日には再び声明を公表し、 「金融政策のスタンスは2日にトリシェ総裁が表明した通りだ」と表明した。ト リシェ総裁は2日、ECB理事会後に会見し「物価上昇を強く警戒している」と いう決まり文句を使って、9月の次回理事会での利上げを事実上予告した。

バークレイズ・キャピタル証券の小林益久チーフ債券ストラテジストは 「金融政策とプルーデンス(信用秩序維持)政策は別物である」と指摘。「現在、 G3(欧米日)の中央銀行が流動性供給しているが、金融システムが落ち着いて くれば、金融引き締めをすることは十分に考えられる」とみる。

小林氏は22日のECBの声明について「まさに、金融政策とプルーデンス 政策が別物であることを示した」と指摘。そのうえで「日銀はG3中央銀行の一 員として、ECBとFRBに協調的な行動を取るだろう。ECBが9月6日の定 例理事会で利上げを見送るのか、あるいは利上げをするのかが、日銀の9月利上 げの鍵を握る。今回のECBの声明文は、日銀の9月利上げの後押し材料となる だろう。9月利上げの可能性が少し大きくなってきた」としている。

9月の織り込み度合は39%に

クレディ・スイス・グループが市場金利から導き出している9月利上げの 織り込み度合は、23日の決定会合終了後の時点で、前日の0%から39%に上昇 した。日経平均株価は同日午後1時半現在、前日比350円以上上昇し、5営業 日ぶりに1万6000円台を回復している。

ただ、ECBが9月6日に利上げに動けば、日銀も9月会合で利上げに動 けるのではないか、という見方に対して、懐疑的な向きもある。みずほ証券の上 野泰也チーフマーケットエコノミストは「ユーロ金融市場の実情や、米国の9月 FOMCとの(日程上の)バッティング、中間決算期末接近などの諸事情からみ て、9月も日銀の利上げはないと予想するのが自然だろう」と指摘する。

上野氏はその上で「米国が0.25%幅で最低2回は利下げを行ってくると予 想される中で、日銀の利上げは10-12月期についても『封印』されている」と している。

今後の金融政策決定会合の予定

決定会合の開催時間は22日が午後2時-午後4時49分、23日が午前9時 -午後零時31分。出席者は日銀政策委員9人と、22日が鈴木正規財務省大臣官 房総括審議官、浜野潤内閣府審議官、23日が田中和徳財務副大臣、大村秀章内 閣府副大臣。議事要旨は9月25日に公表される。

次回以降の金融政策決定会合、総裁会見などの日程は以下の通り。

会合開催 総裁会見 金融経済月報 議事要旨公表 9月18、19日 9月19日 同左 11月5日 10月10、11日 10月11日 同左 11月16日 10月31日 10月31日 ― 12月26日 11月12、13日 11月13日 同左 12月26日 12月19、20日 12月20日 同左 1月25日 (2008年) 1月21、22日 1月22日 同左 2月20日 2月14、15日 2月15日 同左 3月12日 3月6、7日 3月7日 同左 4月14日 4月8、9日 4月9日 同左 5月23日 4月30日 4月30日 ― 6月18日 5月19、20日 5月20日 同左 6月18日 6月12、13日 6月13日 同左 未定

金融経済月報は午後3時に公表。総裁会見は午後3時半。経済・物価情勢 の展望(展望リポート)は10月31日と08年4月30日の午後3時に公表。

--共同取材 廣川高史 Editor:Ozawa(hin)

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 日高正裕 Masahiro Hidaka +81-3-3279-2894 mhidaka@bloomberg.net 東京 大久保義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net

David Tweed +81-3-3201-2494 dtweed@bloomberg.net

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE