FOMC:「必要なら行動」、成長リスクに焦点-公定歩合先行下げ(7)

米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナン キ議長は16日午後6時(米東部時間)から連邦公開市場委員会(FOMC)の緊 急会合を招集し、金融市場の混乱とそれに伴う政策対応について協議した。17日 に公表された声明は、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目 標を現行の5.25%に維持する一方で、「状況を監視し、必要に応じて行動する用 意がある」とした。

新たな金融政策方針を声明の形で公表することについて、バーナンキ議長、 ガイトナー副議長(ニューヨーク連銀総裁)ら10人の投票メンバーが全会一致 で承認した。投票メンバーのプール・セントルイス連銀総裁は、緊急会合の憶 測が広がることを警戒して予定していた夕食会に出席。緊急FOMCでは、フ ィッシャー・ダラス連銀総裁がプール総裁に代わって表決に加わった。

NY連銀、公定歩合の大幅引き下げを要請

ワシントンのFRB本部のボードメンバーと地区連銀総裁らは16日午後6 時から電話回線を通じて緊急FOMC会合を開いた。さらにFOMCが終了し たところで、公定歩合を決定するFRBのボードメンバーは午後7時30分か ら公定歩合の変更について検討を開始。ニューヨーク連銀とサンフランシスコ 連銀から提出されていた0.5ポイントの引き下げ案を承認した。この結果、新 たな公定歩合水準は5.75%とされた。

公定歩合は通常、FF金利誘導目標の変動に合わせて変更されるが、今回は FF金利を現行水準に据え置いたままで、公定歩合の引き下げを先行させた。公 開市場操作を担うニューヨーク連銀を含む2行が0.5ポイントの引き下げを申請 しており、今後景気リスクがさらに高まれば、政策金利のFF金利誘導目標の大 幅引き下げが視野に入ってくる可能性もある。

米国の公定歩合は2002年までFF金利を下回る水準に設定されていたが、 2003年1月からプライマリークレジットと名称が変更され、FF金利を1%上 回る水準に引き上げられた。この制度変更の狙いは日本銀行や欧州中央銀行(E CB)のロンバート金利と同様、短期金融市場の一時的ひっ迫でFF金利が跳ね 上がるのを阻止するというものだった。

FRBは10日、緊急声明で「金融市場の秩序ある機能を支援する」ため、必要 な資金を供給する方針を表明。さらに、「連銀窓口通じた直接の資金提供も通常通 り実施している」と、借り入れを促していた。ただし、金利が割高になっているた め、利用は限られていた。

連銀窓口貸し出しの利用を呼び掛け

バーナンキ議長は今回、そのアナウンスメント効果を上げる狙いもあり、公定 歩合を引き下げたとみられる。さらに、その効果を高めるため、ニューヨーク連銀 のガイトナー総裁とコーンFRB副議長は17日、JPモルガン・チェースやシテ ィグループ、ゴールドマン・サックス・グループなどの大手金融機関と電話会議を 開き、公定歩合が適用される連銀窓口貸し出し制度の活用を促した。ガイトナー総 裁とコーン副議長は席上、窓口貸し出しの活用を促すとともに、「その活用は力強 さの表れだ」との認識を示し、公定歩合を通じた貸し出しの意義を強調した。

FRBは公定歩合の引き下げとともに、貸し出し期間を通常の翌日物から、最 長30日間とすることを承認した。これらの変更は、市場の流動性が著しく改善され たとFRBが判断するまで継続される。

三菱東京UFJ銀行の上級金融エコノミスト、クリス・ラプキー氏はFOMC の緊急声明について、「今回の決定では、FF金利誘導目標について何も言及され ておらず、市場に大きな混乱をもたらしている。公定歩合を0.5ポイント引き下げ たということはFF金利も引き下げると考えられる」と指摘。さらに「FOMCは 9月18日の次回定例会合で0.25ポイントの利下げを検討しているかもしれないが、 市場は0.5ポイントの利下げを求めてくるだろう」と付け加えた。

米フィフス・サード・アセット・マネジメントの運用担当者、マーコ・ミケリ ック氏はインタビューで、「恐らくFOMCは9月にFF金利の誘導目標を0.50 ポイント引き下げる必要が出てくるだろう。資本市場は失速しつつあり、FOMC はもっと積極的な措置を講じる必要がある」と述べた。

金融市場の混乱で景気リスク高まる

FOMC声明は「金融市場の状況は悪化し、借り入れ条件の引き上げと不透 明感の高まりがこの先の経済成長を抑制する可能性が出てきた。最近の経済統計 は緩やかなペースでの景気拡大が続いていることを示唆しているものの、FOM Cはこうした状況を考慮し、経済成長の下振れリスクが目に見えて高まったと判 断した」と指摘した。

今月7日に開かれたFOMC定例会合は声明で、「インフレリスクが金融政 策面で、最重要の懸念事項である」と指摘していたが、今回の声明ではインフレ リスクが削除されている。フランスの銀行最大手、BNPパリバによる資産担保 証券(ABS)関連ファンド3本の凍結発表を発端とする今回の国際金融市場の 波乱を背景に、景気下振れリスクが急速に高まり、インフレリスクと逆転した。

FOMCは、これで明確な景気悪化リスクを阻止する新たなステージへと移 行した。FOMCは「状況を監視しており、金融市場の波乱が経済に与える悪影 響を緩和するため、必要に応じて行動を取る準備を整えた」と表明、利下げ方向 に舵を切った。