【米経済コラム】「流動性供給は利下げの前触れ」は大誤解-J・ベリー

米連邦準備制度が9、10日に銀行システム に注入した資金の規模とその重要性について、幅広い層が誤解している。

ニューヨーク連銀は市場が開いている限り毎日、フェデラルファンド(F F)金利を誘導目標である5.25%に近づけるために同じ活動を繰り返している。 9、10日のオペが特別だったのはその度合いと、10日に声明が出されたことだ けだ。

当局は利下げを示唆したわけではないし、世界の金融市場の状況が大幅に 悪化して米国の成長を脅かさない限り、利下げを実施しないだろう。

声明は「金融市場と信用市場の間に分断が生じた現状で、預金機関に通常 と異なる資金ニーズが生じる可能性がある」と指摘した。つまり、資金ニーズ の高まりでFF金利が誘導目標よりも高くなる恐れがあるため、これを抑える ために十分な資金を供給するということだ。

ニューヨーク連銀は9日に240億ドル(約2兆8300億円)、10日に380億 ドルを供給した。金額だけに言及すれば、その重要性が過大視されてしまう。 例えば、当局は8月2日に170億ドルを供給したが、誰も気に留めなかった。 しかも、供給された流動性は本質的に13日夜までにすべて引き揚げられている。

ニューヨーク連銀はプライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー) とのレポ取引を通じて市場に資金を供給する。連銀はディーラーから米国債や 連邦機関債などを買い上げることで資金を出す。資金はこうして、銀行システ ムに流れ込む。ディーラーは一定期間後に証券を買い戻すが、この期間はほん の1日のことも多い。

木曜日

ニューヨーク連銀は通常木曜に、期間14日間で大量の資金を供給する。9 日の木曜のオペの半分はこの活動の一環だった。残りの120億ドルは翌日には 市場から引き揚げられた。つまり、連銀は10日には証券を売却し、資金を吸収 したわけだ。

平時でも、必要な資金額を見定めるのは難しい。10日は特にそうだった。F F金利はゼロから6%のレンジで乱高下し、連銀は適切な水準を見つけるまで に3回のオペを実施しなければならなかった。このとき供給した380億ドルは すべて、13日には吸収された。市場への圧力が少なくなり、13日の供給額は通 常よりも少ない20億ドルで済んだ。

つまり、オペによる資金供給はほんの一時的で、市場を落ち着かせること を目的としていた。しかし、FF金利の誘導目標の引き下げは、はるかに重大 で長期にわたる影響をもたらす。

1週間前

米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利を据え置き、成長減速より もインフレの高止まりを懸念していると繰り返したのはほんの1週間前のこと だ。FOMCは7日、緩やかな成長が続くとの予想をあらためて示した。10日 の市場が閉まった後にマクロエコノミック・アドバイザーズが示した景気予想 も、FOMCの予想に非常に近いものだった。

サブプライム住宅ローン関連の損失が引き金となったリスク資産を売り急 ぐ動きは終わったわけではない。当局は事態を見守り、市場の無秩序な動きに は公開市場操作を主な手段として対応するだろう。

しかし、窮状にあるヘッジファンドの救済や株式相場の下支えは、当局の 課題リストには含まれていない。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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