米FRB議長やECB総裁に信用市場が迫る180度の方向転換

【記者:Simon Kennedy 、 John Fraher 】

8月13日(ブルームバーグ):信用市場は世界の中央銀行に行動を迫って いる。市場が求めているのは、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長 やトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁が考えていたのとは異なる行動だ。

インフレ重視の政策姿勢を再確認した数日後に、中央銀行は政策転換を迫 られる可能性が出てきた。欧州と日本の差し迫った利上げへの観測は後退し、 米国については緊急利下げの可能性までが取り沙汰され始めた。

金利に関する見通しのこのような変化の背景には、信用収縮を受けた中銀 の対応がまだ不十分な場合への懸念がある。各国中銀は8月9、10日の両日に、 銀行システムに資金を供給した。その数日前にバーナンキ議長とトリシェ総裁 は、金融市場の不安定化よりもインフレがより大きなリスクだとの考えを示し ていた。

ベアー・スターンズのロンドン在勤、欧州担当チーフエコノミスト、デー ビッド・ブラウン氏は、「世界の中銀の多くが劇的な行動を取った。金融政策に 関して、われわれは今、全く新しい局面に入った可能性がある」と話した。

先週の市場混乱の直前に、トリシェ総裁は9月の追加利上げを示唆し、バ ーナンキ議長は利下げの考えがないことを示唆していた。さらにイングランド 銀行のキング総裁は8日に、「国際的な金融危機」は見られないとして、投資家 は単にリスク評価を見直しているだけだとの認識を示した。

しかし、米国のサブプライム住宅ローン問題が拡大し、仏銀最大手のBN Pパリバが投資ファンド3本の解約を停止したことを受け、中銀の確信は揺ら いだ。米連邦準備制度とECB、その他各国の中銀は合わせて、9日に1540 億ドル(約18兆2400億円)、10日に1357億ドルの資金を銀行システムに供 給した。このような大規模な行動は2001年の米同時テロ事件直後以来だった。

先行きは不透明

中銀が供給した追加流動性によって、週明けの金融市場がスムーズに機能 するかどうかはまだ分からない。金利上昇は続き、景気を脅かすかもしれない。 その場合、中銀は政策を考え直す必要に迫られるだろう。

ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)の経済・ 金利ストラテジー責任者、ケビン・ゲーナー氏は「欧州と日本の金利据え置き、 米国の利下げに、一歩近づいた」として、「短期市場でのこのような状態が続く ことは不可能だ」と話した。

欧州ではユーロ圏と英国の利上げ観測が後退した。先週末の市場はECB の9月利上げの確率を70%とする予想を示唆し、確率は8日の90%から低下し ていた。イングランド銀行の年内利上げ回数が1回となる確率も80%とみられ ている。8日には2回利上げの予想が大勢だった。

対応が最初に明らかになる中銀は政策決定会合を来週開く日銀かもしれな い。クレディ・スイス・グループの計算によると、同会合での利上げ確率は10 日に25%と、前日の75%から後退した。

フェデラルファンド(FF)金利先物は9月18日の米連邦公開市場委員会 (FOMC)会合での0.25ポイント利下げ予想を示唆している。ゴールドマ ン・サックスの米国担当チーフエコノミスト、ジャン・ハッチウス氏は「市場 の状態の悪化が続けば、数日内の利下げすら、あり得ないことではない」とみ ている。

2年物米国債の動向も利下げ予想を反映している。2年債(表面利率4 5/8%、2009年7月償還)の利回りは10日、4.46%と米政策金利(5.25%) を0.79ポイント下回って終了した。

金利逆転の幅がこれほど大きくなったのは2001年以来。同年に米金融当局 は11回の利下げを実施した。同年は米金融当局が通常のFOMC会合以外で利 下げを決めた最後の年でもある。01年には同時テロ事件後の9月を含め、3回 の緊急利下げがあった。

米ブランダイス大学のスティーブン・チェケッティ教授は、バーナンキ議 長は就任以来まだ、2001年のような難局に直面したことはないが、「危機に直 面した場合に同議長とFOMCが、動きが取れないと感じる心配はないだろう」 と述べた。

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