米FRB議長も財務長官も間違った-サブプライム問題は感染力強い

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB) 議長は間違っていた。ポールソン米財務長官も、証券会社メリルリンチのスタ ンレー・オニール最高経営責任者(CEO)も間違っていた。

彼らは皆、サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン市場の問題 は広がらないとの考えを示していた。実際には、問題の感染力は強いことが分 かった。

ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)などの政府支援機関(GSE)が保証 するもの以外の住宅ローン市場は、機能停止状態に陥った。2兆ドル(約236 兆円)規模のこの市場の停滞は、まだ始まりにすぎない。こうしたローンを組 み込んだ商品を投資家に売った企業や銀行も苦しんでいる。波紋は欧州やアジ アにも拡大し、中央銀行は信用収縮のなかで資金を提供した。住宅ローンの崩 壊と住宅市場の低迷を業績不振の理由にする企業もある。

アトランタ連銀のウィリアム・フォード元総裁は、リセッション(景気後 退)入りの確率が高まったとみている。ノーザン・トラストのチーフエコノミ スト、ポール・カスリエル氏は「住宅は多くの付随的な経済活動や雇用を生み 出す」が、住宅市場が落ち込んだ「今は逆のプロセスが進んでいる」と語る。

欧州中央銀行(ECB)は9日、市中銀行からの即座の現金需要に対応す るため、金融ひっ迫の緩和に向けた緊急措置として、オペで948億ユーロ(約 15兆3000億円)を市場に供給した。フランスの銀行最大手、BNPパリバが資 産を「公正に」評価することができなくなったことを理由に、資産担保証券(A BS)関連のファンド3本を凍結すると発表したことがきっかけだった。10日 には日本銀行も同様の措置を講じた。

波及

グローバル・インサイトのチーフエコノミスト、ナリマン・ベーラベシュ 氏は「サブプライム危機は今や銀行に波及しつつある」と述べ、「欧州をはじめ とする各国の国際銀行は、米国のサブプライムローンなど債務担保証券(CD O)市場に多くの投資を行った。そのために苦しんでいる」と話す。

バーナンキ議長は3月28日の議会証言で、サブプライムのデフォルト問題 は「広がらない公算が大きい」と述べていた。しかし7月18日の議会証言では、 住宅ローンの延滞と担保物件差し押さえ増がもたらす痛みを認め、「問題は改善 する前に一段と悪化する可能性が高い」と論調を変えた。

ポールソン財務長官は6月20日に、サブプライム問題は「米経済全体には 影響を与えない」との考えを表明した。しかし米経済専門局CNBCとの8日 のインタビューでは、サブプライム問題が市場を動揺させた主因だったと認め、 「住宅分野のこの一角は大幅な調整に見舞われた」として、「そこから発生した 波風が経済の中を通り過ぎるまでには、しばらく時間がかかるだろう」と語っ た。

メリルリンチのオニールCEOは6月27日に、サブプライムデフォルトの 影響は「十分に抑制されている」と発言した。メリルの広報担当者、ジェシカ・ オッペンハイム氏は今週、同CEOの発言は当時の市場の状況を正確に反映し ていたと述べた。オニールCEOはコメントを控えた。

これら3人と同様の見解を示した人物には、バンク・オブ・アメリカ(B OA)のケネス・ルイスCEOらがいる。

最も厳しい

先週、アメリカン・ホーム・モーゲージ・インベストメントが破産申請し たことで、サブプライムよりも信用力の高い借り手を対象とした住宅ローン「A LT-A」にも火の手が回った。ALT-Aのローンでもデフォルトが増える なかでローン債権の買い取り手がなくなり、同社は破たんに追い込まれた。

ホールセール・アクセス・モーゲージ・リサーチ・アンド・コンサルティ ングのプレジデント、デービッド・オルソン氏は「これは始まりにすぎない。 ALT-Aローンを手掛ける住宅金融会社も皆倒れるだろう」として、「現在の 住宅ローン市場の環境は、私が経験したこれまでの40年で最も厳しい」と述べ た。

インサイド・モーゲージ・ファイナンスによると、サブプライムとALT -Aは合わせて、米住宅ローン市場の3分の1を占める。この2種類のローン は、急速に姿を消しつつある。

投資調査会社グレアム・フィッシャーのマネジングディレクター、ジョシ ュ・ロスナー氏は、バーナンキ議長らの当初の誤った見解については大目に見 ている。「今の住宅市場と住宅ローン産業に何が起きているのかを教えてくれる モデルは全くない。バーナンキ議長にはチャンスを与えてやるべきだ。彼は分 別のある、伝統的な中央銀行家だ。無分別な動きへの対処方法は知っている」 と語った。