大凶作に見舞われるウォール街-LBO「凍結」で恵みの水が途絶える

レバレッジド・バイアウト(LBO)の活況 で1-6月(上期)に過去最高の84億ドル(約9870億円)を関連手数料とし て得ていたウォール街だが、下期はこの豊かな恵みの流れが途絶え、大凶作に 襲われることになりそうだ。

ニューヨークの投資会社クアドラングル・グループの共同創業者スティー ブン・ラトナー氏は「ウォール街にとって厳しい時期が来るという結論を否定 することは不可能だ」として、「収入と利益に影響があるだろう」と話した。

聖書にある7年間の大凶作を予想するわけではないが、企業買収のペース は6月以来、3分の2以下になった(ブルームバーグ調べ)。米国のサブプライ ム住宅ローン関連で傷を負った投資家は、リスク回避志向を強め、買収先の資 産を担保とするLBO資金調達のための社債や融資への投資を手控え始めてい る。この傾向が続けば、投資銀行は7-12月(下期)に少なくとも13億ドルの 手数料を失うことになる。

上期にLBO向け高リスク融資関連の収入が最も多かったJPモルガン・ チェースが、最も大きな打撃を受けそうだ。フリーマンとトムソン・ファイナ ンシャルのデータによれば、同社は上期にクレディ・スイス・グループとドイ ツ銀行とともに融資関連で計9億1900万ドルを稼いだ。これら3社はLBO会 社へのアドバイスで4億2600万ドル、社債発行関連でも1億9000万ドルを得 た。

信用力の低いサブプライム住宅ローンのデフォルト(債務不履行)増は、 6月に米証券会社ベアー・スターンズのヘッジファンドを苦境に陥れ、社債相 場の下落を引き起こした。JPモルガンやドイツ銀行などは、最大3000億ドル のLBOファイナンスを約束している。

エンジン停止も

UBSのロンドン在勤アナリスト、ダニエル・スティリット氏は「投資家 が以前のようなペースで債券や融資債権を買ってくれないため消化不良になっ ている。銀行は新たに大規模な引き受けを約束するのには慎重になっている」 と話す。「LBOを推進していたエンジンが止まってしまう本格的なリスクがあ る」と同氏は解説した。

ドイツ銀行のアナリスト、マット・スピック氏は7月26日付のリポートで、 買収関連などの「高リスクファイナンス」に絡む収入が半減し他の投資銀行事 業の収入が10%減少した場合、クレディ・スイスの利益は19%押し下げられる との試算を示した。

投資会社は上期に過去最高の6160億ドル相当の買収計画を発表した。買 収が成功するには、債券や融資債権を購入する投資家を銀行が見つけることが 必要になる。LBO会社は通常、買収価格の3分の2を借り入れによって賄う。 融資引き受けで銀行が得る手数料は2%前後。

米シティグループのゲーリー・クリッテンデン最高財務責任者(CFO) は7月27日の電話会議で、「プライベートエクイティ(未公開株、PE)投資 は当社および業界全体の成長の原動力だった」とした上で、「LBO向け高リス ク融資について過去4-6週間に起こったことや、それがPE投資業界全体に 及ぼし得る影響について、われわれが予測し事業計画に織り込んでいたと言え ば、それは真実とは異なるだろう」と認めた。

環境の変化

最近まで、高利回り資産への需要は高くLBO会社は有利な条件で資金調 達が可能だった。しかし環境は変わった。自動車大手のクライスラーとドラッ グストア・チェーン、アライアンス・ブーツのLBO向け資金調達は難航し、 銀行は融資債権を自社で抱えることになった。

ドレクセル・バーナム・ランベールの元最高経営責任者(CEO)でモー ガン・ジョゼフのマネジングディレクター、フレデリック・ジョゼフ氏は、高 利回り市場の投資家が「『この条件では金を出せない』と言い始めた」結果、「証 券会社は債権を自社で抱え込んだ。これを消化するにはしばらくかかるだろう」 と述べた。

メリルリンチのデータによると、投資適格級の社債のスプレッド(米国債 との利回り格差)は先週、20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大 し128bpとなった。ジャンク(高リスク・高利回り)債は91bp拡大の428 bpと05年5月以来で最大。

クアドラングルのラトナー氏は「融資市場へのアクセスが非常に限られる 時期に入りつつあることは明らかだ」と述べている。

買収ペース鈍化に伴って、銀行は引受手数料ばかりでなく助言手数料も失 うと、格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のアナリスト、 リチャード・バーンズ氏は指摘する。「投資銀行の業績がある時点で弱含むこと は避けられない。第3四半期の数字に表れるのではないか」と同氏は述べた。