買収ファンドへの風当たり強まる-米ローンスターは韓国で投資継続へ

韓国外換銀行のクレジットカード部門KEB クレジット・サービスで従業員ストが始まってから2カ月。ソウルにある本社 の地下駐車場では、約200人の従業員がテントや寝袋を持ち込み、ほぼ1週間 前にわたり抗議行動を続けていた。

そして2004年2月27日の午前3時20分。スト従業員の携帯電話が一斉に 鳴り、1通の電子メールが到着した。従業員は眠い目をこすりながら、携帯電 話の画面をのぞき込み、その多くが号泣したという。メールの発信元はKEB クレジット。内容は「当社は残念ながらあなたが解雇されたことをお知らせし ます」。解雇は翌日付だった。

外換銀を所有しているのは米プライベートエクイティ(PE、未公開株) 投資会社、ローンスター・ファンズだ。ストに参加していた労組リーダーのジ ャン・ファシク氏(44)は「わたしはその時、全力でローンスターに仕返しす る決意を固めた。真夜中の電子メール1本で従業員を解雇することは普通しな い」と当時を振り返った。

ジャン氏は仕返しに成功した。現在、米国や英国でもPE投資会社に反発 する動きは勢いを増している。

ローンスターは、韓国で数多くの法的問題に直面した。金融監督委員会は、 2003年の外換銀買収について、ソウルの裁判所の判決が出次第、買収の取り消 しを命じるかどうかの判断を下す考えだ。

「違法」?

韓国の検察当局は、ローンスターによる買収は「違法」だと主張し、同社 が外換銀の経営状態を実態よりも悪く見せるため、韓国の官僚らと共謀したと 断じている。

このほかにも検察当局は、KEBクレジットを安く買収するために同社の 株価を操作した罪で、外換銀、ローンスター、ローンスター韓国部門のポール・ ユー社長の責任を追及している(3者は不正の事実を否定)。ローンスターはま た、韓国で税金に関連した2件の調査を受けている。

問題の全容が徐々に明らかになるなかで、ローンスターのパートナーの1 人だった外換銀のベテラン従業員が退社した。同社の内部監査により、この従 業員が数百万ドルを横領した事実が発覚した。

ローンスターは当局の捜査対象となったことで、外換銀の売却先だった韓 国銀行最大手、国民銀行との交渉をまとめることができなかった。こうして外 換銀を70億ドル(約8320億円)で売却し、40億ドル以上の利益を上げる計画 は撤回を余儀なくされた。

「世論の変化」

ローンスターの創業者ジョン・グレイケン氏は、昨年11月のインタビュー で「世論がこれほど変わるとは思わなかった」と語り、「われわれは世界中どこ でも投資先の国の法律に従っている。間違ったことは何もしていない」と強調 した。

ローンスターを取り巻く一連の出来事は、アジアへの投資を検討している 西側の買収ファンドに警鐘を鳴らしている。コンサルティング会社プライスウ ォーターハウスクーパーズのPE・取引サービスのグローバル責任者コリン・ マッケイ氏は「経済成長シナリオが描けるアジアは非常に魅力が高いが、投資 家は政治的リスクがあることも認識しなければならない」と指摘する。

ローンスターが韓国で苦境に立たされていることと、巨額の利益を稼ぐ買 収ファンドに対する反感が世界的に強まっていることとは決して無縁ではない。 マッケイ氏によると、買収ファンドが新規投資のために今年調達する資金は 4500億-5000億ドルと、過去最高を記録するとみられている。

マッケイ氏は「PE業界は全般に広報不足の問題を抱えている」と指摘。「劇 的な投資利益の一部は、一般市民からだまし取ったものと受け止められている」 と語った。米国や英国の議会では現在、労組の要求を受け、買収ファンドに対 する課税強化が検討されている。

評判に傷

「外国資本を歓迎する国」という韓国の評判に傷が付いたと話すのはプラ イスウォーターハウスクーパーズのシニアアドバイザー、デービッド・エルド ン氏だ。同氏は「3年前に投資家が銀行を買収するのを認めた場合、急に規則 を変えて、売却を禁止することは許されない」と指摘する。

韓国に対する外国からの直接投資額は2004年に前年比94%増加したものの、 05、06年にはそれぞれ同9.4%、同3%減少した。

マーケット・フォース(ソウル)のジェームズ・ルーニー最高経営責任者 (CEO)は「最終的には全員が敗者になる」との見方を示し、「ローンスター は市場から退出する自由を失った。国民銀行は合併の機会を失った。そして韓 国は国のイメージを失った」と語った。

最後に笑う人物は、ローンスター創業者のグレイケン氏になるかもしれな い。同氏は6月下旬、外換銀の株式の13.6%を機関投資家に1兆1900億ウォン (約1530億円)で売却した。同売却額は、外換銀が2月に支払った4166億ウ ォンの配当と合計すると、ローンスターが外換銀の経営権取得に投じた資金(1 兆3800億ウォン)をすでに回収したことを意味する。

グレイケン氏は引き続き、ローンスターが保有する外換銀の株式(全体の 51%)の買い手探しを進めている。

グレイケン氏は、韓国への投資を継続する考えだ。同氏は「状況は好転す るだろう。われわれは韓国にとどまり、もっとうまくビジネスを伸ばしたい」 と語った。

-- Editor: Colby (ecw)

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