ヘッジファンドの積極参入で天候デリバティブ市場急拡大-2兆円超

クレディ・スイス・グループのトレーダー、 パトリック・アヤシュ氏は、企業の業績予想の記事をほとんど読まない。イン フレについてのニュースも斜め読みするだけだ。そして、天気予報には欠かさ ず目を通す。

同氏は190億ドル(約2兆2600億円)規模の天候デリバティブ市場に群が る数学者、天才運用者、プログラマーの1人だ。

天候デリバティブ市場はかつて、一部の公益企業が天然ガスや電力需要の 乱高下をヘッジするために使うものだった。しかし、ヘッジファンドが市場平 均を上回るリターンを上げる方法に血眼になっている今、天候デリバティブは むしろギャンブルに近い。チューダー・インベストメントやDEショーなどの ヘッジファンドは、若い統計学者を駆使して天候の変化から利益を上げる新た な方法を見つけ出そうと躍起になっている。

天候デリバティブは10年前に、米エネルギー取引会社エンロンが初めて販 売した。同社の破たんを受けて市場は停滞したが、現在は急拡大している。天 候デリバティブの取引は過去4年で100倍に増えた。

ブローカーによれば、拡大の原動力はヘッジファンドだ。地球温暖化など 天候異変への懸念も後押しし、電力会社からスキーリゾートまでさまざまな買 い手が、天候によるリスクをデリバティブを使って他人に移転しようとしてい る。

決算や金利の代わりに、ここでは気温や雨量、風速までもが相場を動かす。 専属の気象学者を年10万ドル(約1200万円)以上の給料で雇うところもある。

思い上がり

自然の裏をかこうなどという考えは思い上がりだとの見方もある。しかし、 ボラティリティ(変動性)が問題だというならば、金融市場ほどそのリスクを 測りこれを分散することに長けているものはない。デービッド・ライカー氏に 言わせれば「天候をヘッジしないことこそギャンブル」だ。同氏は4月に、天 候デリバティブの売買を仲介するストーム・エクスチェンジ(ニューヨーク) を設立した。

天候デリバティブでは例えば、1人のトレーダーが未来の気温についての オプションをもう1人のトレーダーから購入し、保証料を支払う。気温が一定 期間内にあらかじめ合意された水準を超えればオプションの売り手は約束の額 を支払う。超えなければ、保証料は売り手の懐に入り契約は消滅する。天候デ リバティブの大半はシカゴ商業取引所(CME)で売買される。

トレーダーらはオプションの有効期間を通して売買を続け、価格は天気予 報に基づいて乱高下する。有力予報会社は大きく相場を動かすことがある。先 物仲介のエボリューション・マーケッツのブローカー、ニック・アーンスト氏 は「天気予報が無かったら、この市場は面白くない」と話す。

CMEによると、天候デリバティブ取引の参加者は昨年以来20%増えた。 ヘッジファンドが全体の取引の40%を占めているという。リターンをめぐるヘ ッジファンド間の競争は激しく、投資の対象は二酸化炭素排出権や海運運賃な どにまで広がっている。

クレディ・スイスのアヤシュ氏は「多くのヘッジファンドがここ数シーズ ン、良い成績を上げたようだ。このため、取引規模や資金の点でトレーダーの 自由度は高まっている」と語った。

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