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【経済コラム】参院選で自民党大敗、真の敗者は投資家-W・ペセック

昔から言われているように、人の評価は、 その人を批判している人の資質を尺度にするのが一番だ。森喜朗元首相(70) から苦言を呈された安倍晋三首相(52)は、それを強く実感しているかもしれ ない。

安倍首相率いる自民党は29日の参院選で大敗した。そのニュースはもちろ ん新聞各紙をにぎわせたが、大敗自体に驚きはなかった。驚きだったのは、安 倍首相誕生に道筋をつけた森氏が、首相を見放したように見えることだ。森氏 は週末、安倍首相は経験不足だとの考えを示唆。自民党の党首には、より長い キャリアの裏付けが必要だと指摘した。

森氏のコメントは永田町を驚かせた。理由は2つだ。1つは、森派内部の 安倍首相支持が弱まっている事実。もう1つは、政治的な評価の低い森氏まで が首相を批判したことだ。

森氏は2000年4月から01年4月まで約1年間、首相を務めた。デフレが 加速し、銀行業界の危機に見舞われるなど、日本にとって決して誇れる1年間 ではなかった。そんななか、森氏は数々の失態を演じた。

首相時代、ゴルフ場にいた森氏は、日本の高校の漁業実習船「えひめ丸」 が米潜水艦に衝突して沈没し、計9人の学生と教師が死亡した事故の第一報が 入った後もゴルフのプレーを続けた。出生率低下の原因に女性の高学歴を挙げ、 物議をかもしたこともあった。さらに「日本は天皇を中心とした神の国」と発 言した時には、アジア諸国の反感を買った。

続投する安倍首相

首相在任中の評価が低かった森氏が、安倍首相の指導力に疑問を持ってい るのとすれば、それはそれで意味があることかもしれない。それでも安倍首相 は続投を表明し、盟友のブッシュ米大統領を思い起こさせるような頑固さを示 した。安倍首相は退陣すべきだろう。一部の世論調査では、安倍首相の日本で の人気は、ブッシュ大統領の米国での人気を下回っている。

安倍首相は、自らの改革を実現させるため、さらなる時間が必要だと主張 する。ただ改革の具体的な内容は不透明だ。

投資家が望んでいるのは、安倍首相が小泉純一郎前首相の改革路線を加速 させること。日本に必要なのは、産業の規制緩和や生産性の向上、高齢化社会 への対応、超低金利や巨額債務に依存した成長路線からの脱却である。

優先順位

問題は安倍首相の優先順位だ。首相が力を入れているのは、憲法改正や若 年層に愛国心を植え付ける取り組み。その必要性はもちろん否定しないが、景 気が回復したとはいえ、日本経済は引き続きデフレとの戦いを強いられている。 小泉政権の改革路線は道半ばであり、安倍政権は景気動向に満足し過ぎている と言えよう。

自民党大敗の原因は、消えた年金問題や、閣僚の自殺や相次ぐ辞任だった との見方が一般的だ。しかしもっと大きな問題は、安倍政権の改革ペースが落 ちてきたことだろう。

安倍政権の発足以来、日本の産業界は目覚ましい回復をとげた。株式持ち 合いやポイズンピル(毒薬条項)などのM&A(合併・買収)対抗策は、小泉 政権の退陣当時よりも一般的な経営手法になった。

小泉政権を高く評価し過ぎるべきではない。靖国神社への参拝は中国や韓 国の反感を買った。経済政策も後継者が具体化することを前提にした大まかな 青写真の域を出ていない。

板ばさみ

日本の政策は、依然として政治家と投資家の板ばさみになっている。政治 家の間には、2.5%程度の成長が続けば、個人消費はいずれ上向くとの見方が強 い。一方で投資家は、消費押し上げには政策面の対応が必要だと指摘する。

これは日本の政策が大きく変わる可能性が低いことを意味する。超低金利 や円安政策、公的債務を抑制する手ぬるい取り組みなどに変化が見られること はないだろう。低コスト環境下にあるアジアでは、高い生活水準を維持するた めに大胆な措置を取る必要もない。

29日の参院選の敗者は安倍首相であるように見える。しかし最終的には日 本の消費者や投資家が真の敗者になるかもしれない。

-- Editor: McDonald

--* 参考画面: 翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先: 東京 柴田 広基 Hiroki Shibata +81-3-3201-8867 hshibata@bloomberg.net Editor: Toshi 記事に関する記者への問い合わせ先: William Pesek in Tokyo at +81-3-3201-7570 or wpesek@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: James Greiff at +1-212-617-5801 or jgreiff@bloomberg.net

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