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【銘柄探訪】大和ハウス:共創理念で多角化推進中、目指すは脱住宅株

リチウムイオン電池、ロボットスーツ、 風力発電による売電、クレジットカード――。この1年あまり、国内住宅メー カー2位の大和ハウス工業が新たに取り組んできた事業の数々だ。住宅部門の 売上高は今期(2008年3月期)初めて1兆円に到達する見通しであるなど、本 業が好調に推移する中での積極的は多角化姿勢に、同社のテレビコマーシャル 同様、「なんで、ダイワハウスなんだ」と感じた投資家は少なくなさそうだ。

「『人・街・暮らしの価値共創グループ』として、新たな価値を創り、活 かし、高め、心豊かに生きる暮らしと社会を目指す」――。村上健治社長は6 月に株主に対して発した第68期事業報告で、こう述べている。

20日現在の大和ハウス株の年初来騰落率はマイナス19%に達し、今年の 安値圏にある。時価総額は1兆121億円で、競合する住宅首位の積水ハウスは それぞれマイナス11%、1兆1001億円。過去5年の時価総額の成長率(単純 平均)は、大和ハウスが約24%と積水ハウスの約9%を大きく上回るが、足元 の株価下落率の大きさはこれまでの調整的側面のほかに、今後の方向性を見極 めたいとする市場参加者の姿勢を表しているようにも映る。

住宅メーカーにあらず

大和ハウスの住宅部門の売上高はこの5年間で26%伸び、積水ハウスと激 しいトップ争いを繰り広げている。しかし大和ハウスの武田英一取締役・常務 執行役員によると、「2年前に人口がピークアウトし、世帯数も大きく伸びな い。住宅市場全体が縮小しており、厳しい状態」とし、住宅市場の先行きに対 する危機感が経営多角化のバイタリティの源という。

人口減少という構造的な問題に直面するため、収益がじり貧となる可能性 のある住宅メーカーは、いくら現状の業績が良好でも、株式投資上の評価余地 という点では限定的にならざるを得ない。ただアナリストらの間では、戸建住 宅やマンション、商業施設、ホテルなど幅広く手掛ける大和ハウスについて、 「住宅メーカーというより、もはや公共事業のないゼネコン」(野村証券金融 経済研究所・福島大輔シニアアナリスト)との評価が定着しつつあるようだ。

新光証券の竹内和弥アナリストは、「ほかのメーカーと比べて収益力があ り、非住宅にも強みがある」と分析。大和ハウス自身も、「私たちは不動産 だ」(武田氏)と、住宅メーカーという従来型の区分けに強く反発する。

東証1部の不動産業指数を構成する54銘柄の今期の予想平均PERは27 倍、これに対し建設業指数を構成する104銘柄の平均PERは19倍と、不動 産会社の方が投資家から高く評価されている。現在の大和ハウスのPERは、 競合する積水ハウスと同じ16倍台。ただ、大和ハウスがゼネコンとすればそ こに評価余地は生まれ、不動産株となればさらにその幅は大きくなる。

住友不や藤和不を抜く

マンション販売において、大和ハウスの存在感は高まっている。不動産経 済研究所によると、2006年の全国マンション発売戸数ランキングで大和ハウス は4位。戸数は4638戸で、不動産大手の一角を占める住友不動産の3924戸や、 藤和不動産の3812戸を上回った。この分野での強さを示す象徴的な例が、お 膝元の大阪にある。

大阪市の中心部である梅田、大和ハウス本社から程近い場所に同社が開発 する46階建ての超高層マンションのプロジェクトが進行中だ。総事業費は160 億円、高さ153メートル、自社開発のマンションとしては最高層となる。この 「D'グランフォート大阪N.Y.タワー HIGOBASHI」は、昨年5月に 着工し、08年12月に完成予定。すでに販売総戸数329戸の3分の2に相当す る230戸ほどが売り出され、ほぼ完売した。駅直結のアクセスの良さ、VIP 用ゲストルームやパーティー用など非居住部分を充実させたことで、「富裕層 を中心に人気が高い。残り100戸もこれから売り出し、今年中に入居者がすべ て決まりそうな勢い」(本店マンション事業部・長岡義人第1営業所長)だ。

コナカやユニクロの戦略に欠かせず

紳士服チェーン店のコナカ、カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開する ファーストリテイリングの成長に、大和ハウスは貢献してきた。青山商事もそ の1つ。同社では店舗の新設や移転の際、独自で情報収集を行ってきたが、さ らに「大和ハウスの情報は必要不可欠。数あるルートの中でも太いパイプを持 っている」(総合企画部)と明かす。ユニクロでも、日本全国に出店ができた のは大和ハウスとのパートナーシップがあったことが要因とした。

全国にある支店網を生かしたロードサイド情報は、出店希望企業に開発部 隊を持たなくて良いというコスト削減余地を与え、それが大和ハウスにも信頼 力となって返ってきている。最近では、地方でのコンビニエンスストアの出店 が盛んだ。ATMや郵便ポストを設置するコンビニは、地方で重要な位置付け となりつつあり、「コンビニの需要は今後5年間、全く減らない。もうからな い店舗が退出しても、次が出店する」(大和ハウスの武田氏)という。また、 狂牛病(牛海綿状脳症・BSE)騒ぎの際には、「焼肉屋からすし屋に変わっ たこともある」(同氏)そうだが、時代とともに移り変わるテナントの要望に 対応できる不動産開発会社としての顔を、大和ハウスは持つ。

種まき

アナリストの間では、「今後は住宅部門とそれ以外の部分の売上高が逆転 しても、何の不思議もない」(野村証の福島氏)との声も出始めた。今期連結 売上高予想のうち、住宅部門は6割を占める。一方、資本参加や共同企業の設 立を通じてこの1年あまり、あらゆる新規事業に取り組んできた。

現段階では業績予想に反映しにくいとの見方が多いものの、目を出しつつ ある代表例がロボットスーツ事業。住宅内での高齢者・障害者の自立支援を目 的に、2月に開発会社のサイバーダインと業務提携。「お年寄り同士、助け合 えることが出来るようになれば」(大和ハウスの武田氏)との思いからだ。サ イバーダインは、人間が装着するロボットスーツ「HAL(ハル)」を08年 度に400-500体生産し、同時に実用化に向けた実証実験を進める方針。

武田氏によると、「住宅は大きく伸ばせないため、次のものの種をまいて いる。一気に大きくなるとは思えず、育たないこともあるが、種まきを進めて いる」という。これに対し市場の印象も、「リチウムイオン電池など環境を意 識し、裾野を広げようとしている」(新光証の竹内氏)と、悪くはないようだ。

2400円が視野

同社は、08年3月期の連結営業利益を前期比17%増の1000億円と計画。 これに対し、ブルームバーグ・データに登録されているアナリスト全員が会社 予想以上の業績を見込む。予想平均値は1016億円、最も高い予想は1050億円。 アナリスト10人のうち、投資判断「買い」を推奨するのは8人で、「ホール ド(中立)」は2人、圧倒的に株価が上昇に向かうとの見方が強い。

株価推移を見ると、今年2月26日に記録した2260円をピークに下落が続 く。他の住宅メーカーも受注が低迷しており、全体が下落傾向。昨年7月に日 本銀行がゼロ金利政策を解除したものの、金利の先高観は限定的で、伸び悩む 住宅着工件数を受けて、関連企業の業績も悲観視されている。

ただ市場では、今秋以降にも消費税引き上げ議論が活発となれば、駆け込 み需要が発生し、受注増加の起爆剤につながると予想もある。野村金融研の福 島氏は、このタイミングに合わせて大和ハウス株も上昇局面を迎えると予想。 5年から10年の業績を踏まえたDCF(ディスカウントキャッシュフロー) モデルで試算し、2400円程度までの上昇が可能との見解だ。また、金利上昇や 消費税引き上げが仮に決定した場合、駆け込み需要の一巡が受注の反動減につ ながると見られるものの、大和ハウスは経営の多角化を進めており、影響は 「ほかの住宅メーカーと比べ、軽微になる」と、福島氏は分析する。

SMBCフレンド証券の中西文行ストラテジストは、「利益率で見ると大 手ゼネコンを上回り、1人勝ちの状況。今が買いだ」と指摘。経営の多角化戦 略は、大和ハウス株を従来の住宅株から脱皮させ、ゼネコン株、不動産株とし ての評価余地とともに、新たな可能性を投資家に考えさせることになった。

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