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東京高裁判断で「スティール銘柄」含み15%急減-日本業務に支障も(4)

買収提案先のブルドックソースの防衛策発 動の差し止めに失敗し司法から「濫用的買収者」と認定されたスティール・パー トナーズの保有株式含み益が急減。東京地裁に続く高裁判断も受け「スティール 銘柄」含み益は15%減の1210億円まで低下したことが分かった。大株主に躍り 出て株主還元などを迫り投資家人気を煽ってきた手法にも支障が出そうだ。

スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(SPJ SF)の投資先(株式数増加などが不確定なブルドックを除く)30社の大量保 有報告書を基にブルームバーグ・ニュースが算出した。全体の株式購入コストは 総額3430億円。東京地裁の判断直前の6月28日終値で1430億円だった含み益 は7月10日終値ベースで1210億円と220億円減った。

東京高裁「濫用的買収者」と認定

ブルドックの防衛策はスティール(新株予約権の現金買取)を除く株主に新 株を発行する内容で、スティールは「株主平等の原則に反する」(ウォーレン・ リヒテンシュタイン共同創設者)などと差し止めを求めていたが、地裁は6月 28日に不公正な方法ではないと退けた。さらに7月9日の東京高裁は地裁を支 持、増配要求などで株価が上昇した時点で売却益を確保した過去の事例も踏まえ、 短中期的に転売を目指す「濫用的買収者」と認めた。

スティールはこれまで保有資産や自己資本に対して株価が割安な企業などを 狙い撃ちする形で投資し経営者に株主還元などを要求してきた。株式市場ではス ティールの投資行動自体が買い材料としてはやされ、これが内部投資収益率(I RR)の維持にもつながってきた。司法の相次ぐ判断は、こうした手法を使いに くくさせ、今後のスティールの日本での業務に打撃を与える可能性がある。

司法判断後にスティール銘柄の含み益が減少していることについて、スティ ール広報担当の松岡雅子氏は、「スティールは日々の株価の動きを追っていな い」とし、含み益や投資先企業の株価下落についてのコメントは差し控えるとし た。そのうえで「日本でのスティールの投資方針に変更はない」と述べた。

スティール「出口戦略」検討の必要性

野村証券金融経済研究所の西山賢吾ストラテジストは、高裁の判断を受けス ティールは「今後、日本での投資活動の見直しが迫られる」とみている。また、 TOB(株式公開買付)を仕掛けて株高を呼び、転売などで利益を得るような 「今までの手法が使えず利益が出せないならば、ファンドへの投資家の判断にも 考慮して、保有株式の売却を考える必要性も出てくる」と指摘した。

一方、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹投信グループ長は司法 判断について「個人的にがっかりした。スティールをグリーンメーラーと認定し たことでTOBをしにくい国などとして日本への投資が減る可能性がある」と指 摘。ファンドによる投資の活発化を背景にした日本の経営者意識の高まりで、こ れまで広がってきた積極的な情報開示などが停滞する可能性も危惧している。

スティールは抗告

スティールは10日夕、最高裁に抗告すると発表した。高裁の判断を不服と した許可抗告と憲法解釈の誤りを問う特別抗告で、ブルドックの新株予約権発行 は会社法の解釈に重大な誤りがあるなどと主張していく。リヒテンシュタイン氏 は発表文の中で「最高裁に不服申し立てする以外の選択肢はない」とし、濫用的 買収者と認定されたことも「その定義について断固争いたい」と述べた。

スティールは日本の著名企業の株を主に5%超取得して増配などを提案して きた。株式市場では株主還元策への期待などから大量保有報告書にスティールの 名前が登場するたびに株価が上昇し、含み益の拡大につながっていた。キッコー マンの株価はスティールが5.1%を保有する筆頭株主になったと公表した2005 年10月27日以降、最大で56%も上昇。しかし6月28日以降で約11%下げた。

ブルドック以外のスティール投資先企業では、江崎グリコやアデランスなど も、株主総会で増配や買収防衛策の廃止などスティールの提案を相次いで否決し ている。

<スティールの投資先企業> サッポロホールディングス、日清食品、モスフードサービス、ユシロ化学工業、 ノーリツ、ハイレックスコーポレーション、石原薬品、みらかホールディングス、 日阪製作所、日本特殊塗料、シチズンホールディングス、三精輸送機、中北製作 所、TTK、高田機工、松風、中央倉庫、ブラザー工業、ハウス食品、アデラン ス、因幡電機、フクダ電子、新コスモス電機、金下建設、江崎グリコ、キッコー マン、電気興業、丸一鋼管、日清紡績、天龍製鋸、ブルドックソース(順不同) (出所:財務局の大量保有報告書)

--共同取材:鈴木偉知郎、山崎朝子、平野 和 Editor: Hirano(tue)

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