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ECB総裁のインフレへの「強い警戒」宣言消滅も-利上げ休止近いか

中央銀行が使う文言の記録史があるとすれば、 「強い警戒」という言葉は「慎重なペース」と同じ運命を歩むことになりそうだ。

欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁がインフレの加速兆候に常に注意す るとの意味で使用する「強い警戒」の言葉に慣れ親しんだ投資家やエコノミスト は、同総裁の口からこの決まり文句が消える事態に直面する可能性が高い。

その理由は、ECBの利上げが休止に近づいているためだ。2005年12月以 降の8回の利上げは、ユーロ圏経済に影響を与え始めた。トリシェ総裁にとって 次の動きを予告するのは難しくなっている。米経済が昨年よく似た局面を迎えた とき、米金融当局は「慎重なペース」での利上げに言及するのをやめた。

ロンドンのヘッジファンド、ECUグループのチーフエコノミスト、ニー ル・マキノン氏は「ECBのエスカレーター式利上げの過程は終わりつつある」 と指摘。「市場とECBはこれまで歩調を合わせていたが、先行きが不透明にな る状況は避けられない」と話した。

マキノン氏は、米金融当局が昨年に脚本を変更した後に起きたような市場変 動に備える必要が出てきたと指摘した。当時、それまで2年間は予測可能だった

0.25ポイントずつのフェデラルファンド(FF)金利誘導目標引き上げの休止 を当局が示唆しているのかどうかをめぐって混乱が発生し、金利相場などが乱高 下した。

金利ピークで見方分かれる

投資家は現在、ECBの意図をめぐって同様に不透明な状況に直面しつつあ る。エコノミストらは、同中銀が5日に開催する定例政策委員会で政策金利を 4%で据え置くだろうとし、その後少なくとも1回の追加利上げも大半が予想し ている。ただ、それ以降の動きは予測困難だとしている。

ドイツ銀行は同金利が4.25%でピークを付けると予想。一方、ABNアム ロ・ホールディングは来年半ばまでに5%に達するとみている。

BNPパリバ(ロンドン)のチーフエコノミスト、ポール・モーティマーリ ー氏は「ECBは利上げが当然とは受け止められない地点に近づいている」と指 摘。同氏は景気を刺激も抑制もしない中立的な金利水準を3.75-4.25%と算出 している。

金利見通しに差が出るのは、ユーロ圏経済の先行きをめぐって、各種経済指 標が一方向を示していないためだ。成長の強さを示す指標としては、過去最低の

7.1%に低下した失業率や、24年ぶり高水準に近いマネーサプライの伸びが挙げ られる。

一方、インフレ率はECBが目安とする2%「付近でそれを下回る」水準に 下がり、住宅価格の伸びは一段と鈍化、ドイツの投資家や企業の景況感は先月、 低下している。

こうした環境下で、ECBには柔軟性向上が求められている。政策金利を 05年12月から0.25ポイントずつ引き上げるに当たって、トリシェ総裁はそう した動きを数週間前から一定の方式に従って示唆してきた。まず経済動向を「注 視する」と約束、それからインフレへの「強い警戒」を維持すると述べ、最後に 利上げを実施するというやり方だ。

バークレイズ・キャピタル(ロンドン)の欧州担当チーフエコノミスト、ジ ュリアン・キャロー氏は、このやり方は現在の経済状況下では機能しないと話す。 同氏は「ECBが市場からの信認を維持したければ、これらの決まり文句から離 れる必要がある」と指摘した。

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