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ウォール街、ベアーSヘッジファンドの救済拒否-LTCM時のお返し

米証券会社ベアー・スターンズは、ヘッジ ファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が事実上破 たんした際に、ウォール街による救済劇に加わらなかった。同社は今、その報 いを受けている。

同社は先週、破たんの危機に瀕(ひん)したヘッジファンド2本の救済に 向け、同業他社の協力を求めた。LTCM救済に加わった14社の多くは、支援 を拒否した。

LTCM救済に3億ドル(現在のレートで約370億円)を拠出したメリル リンチは協力を拒み、ファンドへの融資の担保となっていた8億5000万ドル相 当の証券を差し押さえた。リーマン・ブラザーズ・ホールディングスとJPモ ルガン・チェース、キャンター・フィツジェラルドも支援を断り、ベアー・ス ターンズはサブプライム住宅ローン担保証券(MBS)や債務担保証券(CD O)投資に失敗したファンドの後始末を単独で背負わなければならなかった。

ドイツ銀行の元MBS調査ディレクター、アンソニー・サンダース氏は「L TCMとの共通点は多い」と語る。また、「投資がうまく行っていると考えてい る間は皆、ベアー・スターンズと『仲良し』だったが、市場が反転したとたん にベアー・スターンズは孤独になった」と論評した。

同業者の協力が得られなかったベアー・スターンズのジェームズ・ケイン 最高経営責任者(CEO)は、2つのファンドのうちまだ健全な一方を、自社 資金32億ドルをリスクにさらして救済するしかなかった。資金注入の規模はL TCM以来で最大。投資家の資金引き揚げで運用資産が6億ドルから2億ドル 未満にまで減少したもう1本のファンドについては、解散することになりそう だ。

リスクの結果

サンフォード・C・バーンスティーンのアナリスト、ブラッド・ヒンツ氏 は、ヘッジファンドの損失とMBS市場で取ったリスクの結果、ベアー・スタ ーンズの今年度の利益は7.2%減少し、株価下落で時価総額15億ドル余りが失 われる可能性があると試算している。ベアー・スターンズ株は1月に付けた最 高値から16%下落している。

ヒンツ氏は21日付のリポートで、「サブプライム住宅ローン問題の最終的 な影響は、延滞とデフォルト(債務不履行)増によるダメージが年末までかけ て徐々に表面化するプロセスが終わるまでは分からない」と述べ、「債券に強く MBS引き受けで上位の証券会社として、ベアー・スターンズは困難な時期に ある。同社の業績は下振れリスクが上振れの可能性よりも大きい」としている。

事態は先月、ベアー・スターンズ・アセット・マネジメント部門が「ベア ー・スターンズ・ハイグレード・ストラクチャード・クレジット・エンハンス ト・レバレッジド・ファンド」の償還を停止したときから急速に悪化した。ベ アー・スターンズ・アセット・マネジメントは2006年末時点で、290億ドル余 りの「仕組み信用資産」を保有していた。

ヘッジファンドが償還を停止するのは通常、破たんの最初の兆候だ。ベア ー・スターンズのエンハンスト・レバレッジド・ファンドと、よりレバレッジ の低い「ハイグレード・ストラクチャード・クレジット・ファンド」はいずれ も、ジャンク級(投機的格付け)の社債やMBS、高リスク高利回り融資債権、 デリバティブ(金融派生商品)や他のCDOを含むCDOに大きく投資してい た。

モルガン・スタンレーによると、CDOの販売は2006年に5030億ドルと 急増した。ベアー・スターンズの2つのファンドを運用していたラルフ・シオ フィ氏は、サブプライム住宅ローンを裏付けとしたCDOの最大の買い手の1 人だった。

裏目に出た賭け

一部のCDOは、基になっている資産よりも高い格付けを得るように設計 されている。しかし、その価値評価は難しく、価格は急激に下落する場合があ る。今年初めにサブプライム住宅ローンのデフォルトが増えたときに、まさに これが起こった。

シオフィ氏はさらに、サブプライムMBSに基づいたクレジット・デフォル トスワップ(CDS)の指数であるABX指数を使ってサブプライム市場の下 落をヘッジしようとしたが、この賭けも裏目に出て、4月末にはエンハンスト・ レバレッジド・ファンドは年初から20%の資産を失っていた。

ベアー・スターンズは2つのファンドに約20億ドルを投資家から集め、100 億ドル超を借り入れて運用していた。ファンドに融資した銀行が担保の追加差 し出しを求めた6月半ばに、シオフィ氏は約40億ドルの資産売却に追い込まれ た。事態は改善せず、メリルは担保を差し押さえ、19日から競売を開始した。

株主は

LTCM危機の際には当時のマクドナー・ニューヨーク連銀総裁が救済策 を取りまとめた。ベアー・スターンズによる自社のファンド救済はLTCM救 済以来で最大規模だが、今回のケースはまだ金融システムの危機には至ってい ない。格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスとスタンダード・ アンド・プアーズ(S&P)は22日、ファンド救済によってベアー・スターン ズの信用力が脅かされることはないとの見解を示した。

ただ、ベアー・スターンズの株主は安泰ではないかもしれない。同社が損失 を被らないとしても、32億ドルの資金が数カ月にわたり固定されることは、自 己勘定トレーディングによる収益機会の縮小を意味する。ジョンソン・アセッ ト・マネジメントで運用に携わるウィリアム・フィッツパトリック氏は、「ファ ンドを閉鎖して間違いを認め、先へ進んでくれた方が、こんな社内救済劇より も良かった」と話している。

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