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イオン:中国強化に本腰、大型SCで世界大手に対抗-09年出店加速へ

総合スーパー国内最大手イオンは、成長の柱 と位置づける中国事業で、5年後に展開する出店数のほぼ半分を大型ショッピン グセンター(SC)として出店する。2009年以降は出店ペースも加速させ、攻勢 に出る方針だ。お家芸のモール型SCを武器に、出店数で先行する現地企業や仏 カルフールなど世界の小売大手に対抗する。

イオンが中国事業の先駆けとして香港に初出店してから7月で20年を迎える が、近年は中国本土に事業を広げている。08年オープン予定の北京市内1号店を 皮切りに、出店エリアをこれまでの華南から華北にまで拡大する。12年までに中 国全体で現在の約3倍に相当する100店舗の出店を計画、田中秋人中国総代表は 「半分を大型SCにする」としている。中国事業の特徴は、その巨大な人口と広 大な土地。同社はモール型SCでその長所をフルに活用する戦略だ。

イオンの世界中のスーパーの中でもっとも高い利益率を誇るのは、中国・青 島イオンの1号店。石井和正中国副代表は「中国は投資回収が3-4年と日本に 比べて早い」といい、消費が伸び悩む「日本に代わって、いずれは中国が収益の けん引役になるだろう」として、中国事業の重要性を強調した。

野村証券金融経済研究所の正田雅史アナリストは「これまでのイオンは香港 をキャッシュカウ(金のなる木)としてきたが、今度は中国本土の華南、華北も 取り込んでいこうとしている」といい、「イオンの中国戦略が抜本的に変わりつ つある」と指摘した。

日本の3倍で行け

「中国は日本の標準の3倍(くらいの勢い)で行け」と石井中国副代表は、 岡田卓也名誉会長からハッパをかけられた。中国でのSCは、売り場面積で最低 9-10万平方メートル、駐車場の収容は4000-5000台で、日本の大型SC並みを 標準サイズとする。北京1号店も約9万平方メートル、駐車場はさらに上をいく 約8000台だ。設備投資には約20億円を投じる。

08年の北京五輪後いったん伸びは鈍化するものの、田中中国総代表は「右肩 上がりのトレンドは変わらない」とみる。グループのSC開発会社、イオンモー ルも本格的な開発に乗り出すことから、「出店スピードがあがってくるのは09、 10年。かなり大型の店ができてくる」という。

ただ、ライバルに比べ、イオンは中国での出店数で遅れをとっている。06年 末時点で世界小売最大手のウォルマート・ストアーズが70店舗以上。07年には100 店に迫る勢いだ。世界小売2位のカルフールもすでに100店近くある。欧米勢は大 都市だけでなく、地方都市にも続々進出し始めている。一方、イオンは香港、台 湾も含めてようやく30を超えたにすぎない。

中国系大手チェーンも売上高上位を占めており、店舗数も比較にならない。 中国小売最大手の上海百聯集団の店舗は7000以上。現地企業は地方の独立店や中 小チェーンのM&A(企業の合併・買収)にも積極的だ。田中氏も「国策で合従 連衡が進んでおり、今後いい流通グループがどんどん生まれるだろう」とみる。 常盤敏時前イオンストアーズ香港会長は、「売り上げで競争しても意味がない。 利益率で勝負する」という。

3つの成功条件

イオンの岡田元也社長は「専門店を持つSCは米ウォルマートもカルフール も持っていない」と自信を示す。イオンがこれほどまでモール型SCに勝算を得 ているのは、マレーシアでの成功体験があるため。マレーシアには1984年に進出。 現在は18店舗を展開し、現地の小売大手のなかで営業利益、営業利益率ともにト ップを維持する。田中氏は「マレーシアの成功体験が生きる。中国のほうがマレ ーシアよりも人口密度が高い」としてマレーシア以上の成功を見込んでいる。

だが、現在のイオンは売上高、営業利益の9割近くを日本で占めており、中 国などアジア事業の業績貢献は小さい。07年2月期実績で、伸びは売上高が16%、 営業利益は30%と大きいが、構成比でみると売上高が5.6%。営業利益は8.6%に すぎない。野村金融経済研究所の正田氏は「中国事業が業績に貢献できるように なるには、しばらく時間がかかるだろう」とみる。

中国での成功条件として、正田氏は次の3点を挙げる。1つは土地、人件費、 商品のローコストに抑える。2つめは、現地ではすでに低価格業態での競争が厳 しすぎるため、高付加価値型のポジションをとる。3つめは接客サービスや商品 開発力など日本での競争力に磨きをかけ、それを中国に移植する。イオンの戦略 は今のところ、このシナリオに沿っていると正田氏はみている。

中国商務部によると、1978年から2004年までの中国の消費財小売総額の年平 均伸び率は15%近く。06年は14%増の約8兆元(1元=15円で計算、120兆円)。 10年には10兆円(150兆円)を超え、伸び率はやや鈍化するものの11%以上と高成 長が見込まれている。

高品質商品で高所得者層を開拓

「とても便利。少し値段は高いけど、高品質だから安心感がある」――。イ オンが07年2月に開業した「順徳SC」(広東省佛山市順徳区)へ1週間に2、 3回は来るというアップル・ローさんはこう話す。 以前は順徳SCから3.2キロ 離れた香港資本のスーパー「百佳」に通っていたが、品揃えが悪く、順徳SCが オープンしてからは行かなくなった。手にしていた豚肉は地元の店よりも10%ほ ど高めというが、「品質がよければ値段はそれほど気にならない」と語る。

順徳SCはイオンとして中国初のモール型SCで、売り場面積は4万4000平 方メートル。ローさんは、車で15分ほどかけて訪れ、1回の買い物で使う金額は 100-200元(1500-3000円)。順徳区は10人に3人が自家用車を保有し、高所得 者層の住むエリア。客の世帯月収は3000-6000元を想定していたが、実際は「か なり上の収入の方がこられている」(伊勢秀人イオン・チャイナ営業本部長)と いう。ローさんの夫は技術者で平均月収は1万元(15万円)、ローさんも秘書と して働いている。

年商目標は核店舗のジャスコが1億7000万元(25億5000万円)、93の専門店 全体では1億7500万元(26億2500万円)。低価格業態の競合に対し、健康志向や 品質への関心が急速に高まっている顧客のニーズをとらえた品揃えを強化してい る。ただ、ライバルも購買力の強いこのエリアに目を付け、08年初には近所にウ ォルマートが出店する。売り場面積は2万平方メートル。順徳SCから徒歩10分、 わずか700メートルの場所だ。

ジャスコも価格は意識している。カルフールが200メートル先にある「ジャス コココパーク店」(広東省深セン市福田区)では「毎月200 の『戦闘アイテム』 を用意し、カルフールと同じかそれ以下の価格にしている」(西方治樹・深セン イオン営業本部副部長)。ライバルとの価格でのつばぜり合いは続くが、石井中 国副代表は「これからは安全、品質にお金を払う人が必ず増える」との信念で戦 略を貫く考え。

イオンの株価終値(21日)は前日比15円(0.7%)高の2290円。

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