【米経済コラム】利下げ予想派が肝に銘じるべきこと-J・ベリー

米金融当局が年内に利下げに踏み切るとみ る投資家やアナリストらは、当局の経済見通しが外れていると確信している。 ただ、これまでのところ、当局の予測は当たらずといえども遠からずのようだ。

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は3月28日の上下両院合 同経済委員会での証言で、金融当局の見方を要約している。同議長は「今後数 四半期、景気は緩やかなペースで拡大を続けるようだ」と述べ、「新築住宅の売 れ残り在庫がはければ、住宅投資による影響度は下がる。個人消費は堅調なも ようで、企業投資は緩やかに拡大しそうだ」と語った。

今月6日に発表された3月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前 月比で18万人増加し、失業率は4.4%へ低下した。気候の影響で建設関連の雇 用に上振れが生じたことから同統計内容が実態以上に強く見えた面はあったも のの、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が現行の5.25%から引き下 げられるほどの景気の弱さは明らかに示されなかった。

年内の利下げを予想するゴールドマン・サックス・グループなどは雇用統 計に反応し、政策金利の引き下げが始まる時期の見通しを6月から9月へ遅ら せた。それでも、予測する利下げ幅は変えないという。

ゴールドマンのエコノミストらは6日付の発表文で、住宅着工や米供給管 理協会(ISM)の製造業景況指数は「われわれの予想通りにかなり弱くなっ たが、最も重要な2つの統計である雇用と物価は逆の方向に向かった」と指摘。 「その結果、米利下げは6月ではなく9月に始まると予想する。ただ、年末ま での75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げは依然として予 想している」と述べた。

景気が減速し利下げにつながるというこうした見方は、ゴールドマンによ れば「住宅セクターの急速な縮小」から派生する。同部門の弱さについては、 バーナンキFRB議長も議会証言で景気の足を引っ張ると認めている。

景気の底堅さ

ただ、問題は住宅部門の弱さが経済のほかの分野、特に個人消費にまで及 ぶのかということだ。これについて、金融当局者はこれまでのところ、そうし た広がりはないとみているし、一部の景気予測機関も同調する。例えば、セン トルイスのマクロエコノミック・アドバイザーズは米経済が短期的に潜在成長 率を下回った後、今年7-12月(下期)には上向くとしているが、これはまさ しく当局者の予想と一致する。

マクロエコノミック・アドバイザーズによれば、米成長率は今年1-3月 期に前期比年率1.7%に低下した後、4-6月期には2.2%へ上昇する。同社 は6日付のリポートで「成長ペースは短期的に低迷するものの、景気の足を引 っ張る材料が消えれば、今年下期には潜在成長率付近に回復すると依然、予想 する」とコメントした。ここでの材料とはもちろん、住宅市場の問題だ。

3月の雇用統計が利下げの公算を小さくしたのは、景気の底堅さを再確認 させたためだけではない。コアインフレ率の潜在的な問題も浮き彫りにした。

マクロエコノミック・アドバイザーズのリポートは「雇用統計の内容は、 高水準の資源利用から発生するインフレの上振れリスクに関する当局の懸念を 高め、連邦公開市場委員会(FOMC)は主要な懸念材料としてインフレに注 目し続けるだろう」と続けている。同社はFF金利の誘導目標について、年内 の据え置き継続見通しを変えていない。

コアインフレ率

金融当局の経済見通しでは、コアインフレ率は今年と来年にかけて緩やか に低下する。ただ、バーナンキFRB議長は議会証言で同見通しには上振れリ スクがあり、そのリスクの1つに「雇用市場のひっ迫」を挙げている。

利下げを予想する投資家やアナリストらは、当局のコアインフレ率懸念を 甘くみているようだ。同インフレ率は明らかに、当局が望んでいる水準を上回 っている。懸念する主要な理由は長期のインフレ期待の抑制だと、バーナンキ 議長はじめ金融当局者の多くが繰り返している。

FRBのミシュキン理事は3月23日の講演で、「より良い金融政策がイン フレ期待をしっかりと落ち着かせた」とし、インフレの「根強さは減った」と の認識を示した。これは景気を圧迫せずに物価上昇率を低下させられる状況に あるとの意味だという。

ミシュキン理事は「インフレ期待の安定が経済の健全性に与える重要性を われわれは認識している。だからこそ、連邦準備制度の当局者は最大限の持続 可能な雇用と物価安定に対する責務を継続して強調している」とも述べた。

この2重の目的は連邦準備制度の法的責任のみならず、お互いが絡み合っ ている。景気の現状では、コアインフレ率の低下とインフレ期待の抑制を目的 に、金融政策は経済成長を短期的に犠牲にする方向となっている。ただ、リセ ッション(景気後退)を引き起こす行動が必要なほどにはコアインフレ率は高 くはない。そうではあるが、利下げを決定するにはかなり困難であるほどに高 いことも間違いない。

利下げを見込む者たちは、以上を肝に銘じる必要がある。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。この コラムの内容は同氏自身の見解です)

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