米財務長官とECB総裁、G7前にドル安に沈黙-双方の経済に利益

ポールソン米財務長官とトリシェ欧州中央 銀行(ECB)総裁にとって、ドルの下落は都合が良いようだ。

ドル安は米国の輸出競争力を高めて米経済を支え、住宅や設備投資の落ち 込みを補う。トリシェ総裁にとっては、1月末以来2.5%上昇したユーロ高はイ ンフレ抑制に役立ちECBの金融政策を補強する。

ユーロ圏経済は前回のユーロ高局面に比べ堅調で、通貨高の輸出への影響 を吸収する余裕がある。前回のユーロ高の際には、ユーロ圏諸国の中央銀行や 政府当局者から抗議の声が出た。ポールソン長官とトリシェ総裁の沈黙は、今 週ワシントンで開催される7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議がドル相 場へのコメントを避ける可能性があることを示唆している。

ピーターソン国際経済研究所(PIIE、ワシントン)の上級研究員で元 米財務省幹部のウィリアム・クライン氏は「米当局者にとっては望ましい展開 であり、ユーロ圏当局者にとっても比較的安心できる範囲だ」と話す。ドルは 5日、ユーロに対して2年ぶりの安値となる1ユーロ=1.3442ドルを付けた。 2004年12月30日に付けた過去最低の1.3666ドルから2%以内に迫った。

ポールソン長官は「強いドル」を支持する米政府の姿勢を踏襲しているも のの、為替相場を決めるのは政府ではなく市場だとの見解も繰り返している。

この論理によって、ポールソン長官はドル安を見過ごすことができる。輸 出を助け景気回復に役立つドル安は歓迎だ。過去3四半期の米成長率は2.4%に 落ち込んでいる。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの為替ストラテジー責任者マーク・チャ ンドラー氏は「米当局者はユーロに対するドル下落が秩序立っている限り、気 にも留めないだろう」と述べた。

ユーロ圏では、景気の堅調がユーロ高への懸念を後退させた。失業率は2 月に過去最低水準に低下し、企業景況感と消費者信頼感は3月に6年ぶり高水 準となった。トリシェ総裁が04年当時ほどユーロ高に警鐘を鳴らさないのはこ のためだろう。

バンク・オブ・アメリカ(BOA)の欧州担当チーフエコノミスト、ホル ガー・シュミーディング氏は、「景気が予想よりもはるかに好調だ」として、 通貨高を「それほど懸念しなくても済む」と指摘した。

通常はユーロ高とECBを批判する欧州財務相の多くも、沈黙を守ってい る。ただ、フランス大統領選の候補、サルコジ内相は2日、ユーロについてE CBと真剣な対話がしたいとして「弱いユーロと過大評価されたユーロの中間 点を見つけることができるはずだ」との考えを示した。

このような発言は、ドル安の影響をユーロばかりが被っているとの不満を 反映しているとみられる。過去4カ月のドルに対する円の上昇はユーロの3分 の1にとどまり、管理変動相場制を採用する中国の人民元の上昇率は0.5%にす ぎない。人民元はユーロに対しては3.2%下落している。

このような状況から、欧州当局者は中国に一段の人民元上昇を求めること でポールソン長官に歩調を合わせる公算が大きい。2月のG7は中国など貿易 黒字を抱える国々に、貿易相手国通貨に対する自国通貨の「変動」を容認する よう呼び掛けた。また、円に対する「一方通行」の予想を戒めた2月の警告も、 繰り返される可能性がある。

いずれにしても、ドル安の効果は既に表れ、06年10-12月(第4四半期) の米成長には純輸出が10年で最大の貢献をした。モルガン・スタンレーの為替 ストラテジスト、ソフィア・ドロッソス氏は、「米国がドル安に歯止めをかけ る理由は何もない」と話している。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE