トウモロコシ下落は好機:ゴールドマンやヘッジファンドの投資熱加速

トウモロコシが2年ぶりの弱気相場とな っていることを好機とみて投資家や投機筋の投資熱が高まっている。

米ゴールドマン・サックス・グループは、アイオワ州が収穫期に入る10 月には相場が回復し、1000万ドル(約11億9000万円)の投資が1815万ドル にまで増えると予想している。英商品ヘッジファンドのクロム・リバー・パー トナーズと英資源ファンドのマザー・アース・インベストメントも相場回復は 間近とみて現在の下落局面でトウモロコシを買っている。

クロム・リバーのクリス・ブローディー氏は「エタノール需要に対応する ためにはできる限りトウモロコシの作付けを増やす必要がある」と指摘する。 シカゴ商品取引所(CBOT)のトウモロコシ相場が2営業日連続で、暴落を 回避するため設定されている値幅制限いっぱいの下落となった2日、同氏はト ウモロコシに買いを入れた。ブローディー氏は商品取引で20年の経験を持つ。

エタノールや食料、飼料向け需要が拡大するなか、トウモロコシの収穫高 が過去最高水準に達するかどうかを賭けて、CBOTで取引するブローカーや トレーダーらは、先物やオプションに約600億ドルを投資している。昨年の米 国産トウモロコシの販売総額は338億ドルと、過去最高となった。

世界の先物取引所のトウモロコシ相場が過去半年間に34%以上上昇したた め、米国や中国などトウモロコシ生産国の農家の収益は増加している。トウモ ロコシ相場の急騰により、メキシコではトルティーヤの価格に上限が設定され、 中国政府はインフレ抑制のためエタノール生産を制限した。

米農務省(USDA)が3月30日に発表した今春の米農家のトウモロコ シの作付け意向面積は約9050万エーカーと、昨年の7830万エーカーから拡大 した。この発表を受け、CBOTのトウモロコシ相場5月限は3営業日で12% 下落し、3日終値は1ブッシェル当たり3.4625ドルとなった。

相場上昇は、1851年からトウモロコシ取引を行っているCBOTの価値 をも引き上げている。シカゴ商業取引所(CME)とインターコンチネンタ ル・エクスチェンジ (ICE)はCBOTをめぐり、約100億ドル規模の買 収合戦を繰り広げている。

トウモロコシが5ドル台に

米ブッシュ政権は、エタノール燃料の普及とガソリン向け供給の拡大を目 指し、補助金や輸入関税の導入や連邦レベルの大気汚染防止策を推進している。 このため、エタノール生産の増加が過去最大のトウモロコシ相場の上昇につな がっている。米国は世界最大のトウモロコシ供給国。

昨年28%上昇した1億ドル規模のファンド、マザー・アース・インベスト メントのローランド・ジャンセン最高経営責任者(CEO)は「トウモロコシ の強気相場は終わっていない」と指摘。「エタノール需要は非常に旺盛なため、 年内は相場上昇が続くだろう」との見方を示す。同氏はトウモロコシ相場がこ とし、1ブッシェル当たり5ドル台に乗せると予想している。過去最高値は 1996年5月21日に付けた5.135ドルだった。

ゴールドマンの世界商品調査部門責任者、ジェフリー・カリー氏(ロンド ン在勤)は3月30日、トウモロコシ相場が半年以内に4.15ドルまで上昇する との見方を示した。4月5日の終値は3.66ドル。先物取引ではレバレッジ取 引が可能なため、1350ドルの証拠金を取引所に納めることにより1万8300ド ル相当のトウモロコシの取引を行うことができる。このため、アイオワ州が収 穫期に入るまでに181%のリターン(投資収益率)を生み出す可能性がある。

供給の縮小

USDAは、世界のトウモロコシ消費はことし、過去最高の7億3000万 トンに達し、過去7年で6回目の供給不足になると予想している。また、世界 の在庫は8800万トンと、78年以来の低水準となるとみている。

一方、米国のことしのトウモロコシの作付け意向面積は第2次世界大戦後 の最高水準となった。ミシシッピ州の綿花農地やノースダコタ州の小麦農地な ど秋の初めの霜害がトウモロコシの生育のリスク要因となる地域でもトウモロ コシ栽培への移行準備が進んでいる。

また、中国国家穀物・油糧情報センターは4日、中国のトウモロコシの作 付面積がことし2.5%増加し、過去最高の6820万エーカーになるとの見通しを 発表した。このため、生産高は前年比でほぼ2%増加し、過去最高の1億4700 万トンになると予想している。

下落予想と上昇予想

作付けの拡大がトウモロコシ相場の下落につながっているものの、農産物 専門家の多くは、相場下落により農家の生産増が止まることはないとみている。 トウモロコシ相場は、10年ぶりの高値に達した2月26日以降、先週までに最 大24%下げた。通常、相場が20%下落すれば、弱気相場とされる。

米商品ブローカーのフィマットと仏銀3位のソシエテ・ジェネラルは、ト ウモロコシ相場が引き続き下落すると予想している。フィマットの穀物市場ア ナリスト、ダン・セカンダー氏(シカゴ在勤)は、米国のトウモロコシの生育 が計画通り進めば、相場は1ブッシェル当たり3ドルに向かうとみている。

一方、ゴールドマンは、エタノール需要の急増により、今回のトウモロコ シの上昇相場は過去に例を見ないものになるとみている。需要が非常に力強い ため、肥料や機器の費用、人件費などの生産コストが上昇し、米国の作付面積 は実際には8790万エーカーにとどまり、USDAの予想をほぼ3%下回ると 予想している。

カリー氏は電子メールで「(肥料などの農業原料や労働力など)生産手段 の確保をめぐる競争が激しくなり、農家は困難な状況に直面する可能性があ る」と指摘。「わが社は現在のトウモロコシ相場の下落は一時的な調整である とみている」と述べた。

需要拡大

ブッシュ米大統領は、ガソリン消費を削減するため穀物を原料とする燃料 の消費を、ことしの年間47億ガロンから2017年までに同350億ガロンとする 目標を掲げた。

マン・フィナンシャルのトウモロコシ・穀物ブローカーで、トウモロコシ 取引で30年の経験を持つギョン・リー氏は「エタノール需要の急拡大によっ て市場の高揚感が高まり、市場関係者は皆、トウモロコシの買いポジションを 大量に保有している。トウモロコシに対する投機筋の関心は非常に高い」との 見方を示した。

米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)で122 億ドル規模の商品ファンドを運用するブレント・ハリス氏は「ある商品に全く 新しい需要が出現するのは非常に珍しい。だからこそトウモロコシ相場をめぐ るドラマは壮大だ。このような状況は今後も長年にわたって続くだろう」との 見通しを示した。

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