「重要提案」が保有目的の詳細開示が相次ぐ-大量報告の改正を受けて

欧米を中心とした投資ファンドが保有株式 に関して、重要提案行為等の保有目的で大量保有報告書を相次いで財務省へ報 告している。この背景には、2006年12月施行の証券取引法施行令の改正で、 株主議決権の行使などを経営陣に強く要求する場合に重要提案行為等と定め、 開示が義務付けられるようになったからだ。増配や社外取締役の指名など株主 提案にも活用できるとみられる。

米系資産運用会社セーフ・ハーバー・インベストメントは3月8日、シン ニッタン株の保有目的について、経営陣への助言、株主提案権の行使、取締役 の指名など「重要提案行為を行なうこと」の文言を加えて大量保有報告書を提 出した。その後、セーフ・ハーバーはシンニッタンに、会社側の配当案1株10 円に対して1株70円への増配を提案、社外取締役2人の選任も株主提案して いることを明らかにした。セーフ・ハーバー広報担当の辰巳達氏は「株主さま のご判断を直接仰ぐべく、株主総会で株主提案を行なうことにした」という。

電源開発の筆頭株主である英ヘッジファンドのザ・チルドレンズ・インベ ストメント・ファンド(TCI)も3月7日に提出した大量保有報告書の中で、 一部を入れ替えて取締役その他の役員または株主総会に対して「重要提案行為 を行なうこと」へ保有目的を変更した。ザ・チルドレンズは議決権を行使し、 会社側の07年3月期末の配当案1株30円に対して、同100円(年間配当130 円)を要求した。

電源開発の中垣喜彦社長は2日の記者会見で、ザ・チルドレンズの増配要 求に対して「今後のさらなる利益の拡充を待ってから」としたうえで、「増配 の要求に応じるつもりはない。今のところ特に予定はないが、当社の安定配当 の考え方に再考の余地はないかについてお話をする場合もありえる」と述べた。

透明感が増し、戦略的にも活用

大和総研制度調査部の横山淳統括次長は重要提案について、「株主権利で 当然の行為」と強調したうえで、「最初は戸惑うだろうが、はじめに手の内を 出してくれたほうが対応しやすいのではないか」と述べ、透明性が高まると指 摘する。横山氏は重要提案行為について、経営陣・株主総会に対して、代表取 締役の選解任、配当政策に関する重要な変更などを要求する場合が該当すると いう。

M&A(企業合併・買収)に詳しい、みらいコンサルティングの新木啓之 M&A担当ディレクターは、大量保有報告書の記載事項に重要提案行為が追加 されたことについて「ファンドの投資はあくまでもリターンがすべてだ」と強 調する。そのうえで、「新制度に改正後、ファンドなどが重要提案行為などの 目的で取得することで、投資目的の透明性をアピールし、投資リターンの最大 化を狙うべく株主提案を行うからではないか」と語る。

新木氏は「いかに投資を成功させるか、そのための取りうる手段として、 重要提案行為などを目的に取得し、対象企業にプレッシャーを与えることだ」 という。

資産運用会社も重要提案を保有目的に

欧米投資ファンドのみならず、国内の運用会社も保有目的の変更を詳細に 開示している。スパークス・グループは3月27日、傘下の資産運用会社が提 出する大量保有報告書の開示方針を発表し、東洋ゴム工業やペンタックスなど 8銘柄の保有目的に、投資戦略や経営陣に具体的提案を行う可能性があるとす る重要提案行為などの項目を加えた。

豊証券の菊池由文取締役株式部長は、スパークスの開示に関して「良いア ドバイスがあれば取り入れれば良い。スパークスは運用会社として出資者に対 して運用努力をしていると誇示するために、開示したのではないか」との見方 を示した。重要提案の開示はファンドの出資者にも透明性が高まるようだ。

報告書の記載内容が拡充

新制度には重要提案行為等の報告のほかにも重要な点がある。優先株式な ど無議決権株式の中で将来、権利行使により普通株に転換可能な株式などが報 告対象有価証券として、今回の改正で明確化されほか、不動産投資信託(RE IT)の投資口も報告対象になった。

外国人機関投資家に議決権行使を促すICJ(Investor Communications Japan)のクリス・ニクソン営業部マネージャーは、「無議決権株式の報告は 市場の透明性につながるかもしれないが、開示項目を注意して読まないと混乱 する。開示情報の簡略化も必要」と指摘する。

重要提案行為等の詳細も定められ、優先株など無議決権株式の保有も報告 対象として明確化された。EDINETを通じた大量保有報告書の電子提出の 義務化も4月に施行した。今後もさまざまな大量保有報告書の提出が予想され るが、「開示事項は看過しないよう」(大和総研の横山氏)にする必要があり、 情報の注釈はますます大切になりそうだ。

【主な重要提案保有目的の提出例】
財務省・大量保有報告書から
  投資ファンド、投資顧問名
  スティールパートナーズ:        日清食品、江崎グリコなど28件
  セーフ・ハーバー:              シンニッタン、学研など
  ザ・チルドレンズ                電源開発
  タイヨウ・ファンド:            リンテックなど
  シルチェスター:                リョーサン、三洋信販など
  サウスイースタン:              日本興亜損害保険など
  いちごアセットマネジメント:    東京鋼鐵
  シンプレクスアセット:          平河ヒューテック、日本レヂボンなど
  スパークス                      東洋ゴム工業、ペンタックスなど8件
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