米スティール:サッポロ買収に負担、「防衛策」で-経産省調整とも(3)

サッポロホールディングスに買収を提案した米 系スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(SPJSF) は、買収に重荷を負うことになった。サッポロ株主総会が新買収防衛策を承認した ことで煩雑な手続きに従う義務が課された。当事者に手詰まり感が出るなか、防衛 策指針を作成した経済産業省が調整に乗り出すとの見方さえ出ている。

29日のサッポロ株主総会では、会社提案の買収防衛策を株主の賛成多数で可決 した。買収者に属性や資金の裏づけ、経営方針といった詳細な情報を株式取得前に 開示させる事前警告型防衛策。2月15日に友好的TOB(株式公開買い付け)を提 案したスティールには旧防衛策が適用されるが、実質的に大きな差はない。

防衛策承認についてSPJSFを率いるウォーレン・リヒテンシュタイン氏は 「誠に遺憾」と語った。反対株主の委任状を相当確保したことは「喜ばしい」と述 べた。防衛策は「買収者手続きが極めて大きな負担」と反対と強調していた。この 大きな負担をSPJSFは負うことになった。

買収防衛策については自民党(企業統治委員会)や経産省の企業価値研究会が ガイドラインを作成している。このため米投資顧問ダルトン・インベストメンツの 佐野順一郎社長は「スティールとサッポロの案件には甘利明大臣を含めて経済産業 省が目配りしており、2社が動く前に経産省が水面下で落としどころを探る調整に 動く可能性はある」と指摘した。

甘利経産相は自民企業統治委の委員長として防衛策を作成、経産省の北畑隆 生・事務次官は企業価値研究会が経済産業政策局長の私的研究会として発足したと きの局長だった。甘利経産相や北畑次官は記者会見で、スティールを「グリーンメ ーラー的な動きをした会社」と批判しており、必ずしも評価はしていない。

実は企業価値研究会の発足はスティールが一因になっている。SPJSFは 2003年12月にユシロ化学工業とソトーに敵対的TOBを仕掛けた。その後の攻防を 契機に買収防衛策の必要性についての機運が高まり、企業価値研究会が2004年9月 に発足した。

サッポロは買収防衛への助言を求めるため、みずほ証券に加えて日興シティグ ループ証券を財務アドバイザー(FA)に起用した。防衛策が総会で承認されたサ ッポロはスティールとの交渉の時間を確保した形になり、FAを含めた協議が激し くなりそうだ。

スティールは投資回収時期との見方

企業の合併・買収(M&A)に詳しい日本バイアウト研究所の杉浦慶一・代表 取締役はスティールについて「サッポロ株購入開始から数年が経過して投資回収を したい時期で、最終的には保有全株売却を狙っている」と指摘した。スティールの サッポロ株取得開始は2004年半ば。TOB提案は、20%弱に達した保有株の買い手 を引き出すのが実際の目的との見方だ。

杉浦氏は、サッポロにとって友好的な第三者(ホワイトナイト)が登場してサ ッポロを買収したり、サッポロがホワイトナイトと組んでMBO(経営陣による企 業買収)をして、スティールのシナリオが実現する可能性を示した。スティールと サッポロの落としどころの候補にはなりそうだ。

SPJSFには、日本の窓口として投資顧問スティール・パートナーズ・ジャ パン(東京都千代田区、西裕介代表取締役)があり、SPJSFのファンド・マネ ジャーに運用助言をしている。

SPJSFは米スティール・パートナーズ共同設立者リヒテンシュタイン氏、 西氏とリバティ・スクエア・アセットマネジメントの合弁で、運用資産は5000億円 を超えている。米スティールは、スティール・パートナーズⅡというファンドで日 本以外の国にも投資をしている。

サッポロ以外にSPJSFは日清食品10.3%、丸一鋼管13.2%、シチズン時計

10.5%、ブラザー工業9.2%、アデランス24.7%、江崎グリコ14.4%(グループを 含む)などの株式を保有している(ブルームバーグ・データによる)。

このうちアデランスについては28日、導入済みの買収防衛策を廃止するよう同 社の株主総会(5月24日予定)に議題を提案したと発表している。

サッポロ株の終値は前日比3円(0.4%)安の828円。スティールが2月15日 に提案したTOBの仮条件は825円程度。サッポロ株は提案直後に他の買い手がよ り高値で株式を取得するといった思惑からいったん960円まで急騰した。その後は 話題性が後退するに従って下落しており、TOB価格を割り込む場面もある。

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