日銀の清水氏:ヘッジファンド、一斉巻き戻しはリスク-今は自律調整

日本銀行金融市場局の清水季子(ときこ)企 画役はブルームバーグ・ニュースとの単独インタビューに応じ、金融市場で存在 感を高めるヘッジファンドについて、特定の市場に巨額の資金が集中したり、値 動きの相関性が低いはずの複数の市場で多くのヘッジファンドが似通ったポジシ ョン(持ち高)をとった場合、何らかのきっかけで巻き戻しが起きると「値動き が大きくなるリスク」や「予期せぬマーケットが同じように下落する」リスクが あるとの認識を示した。

運用資産額が約1兆4000億ドルにも上るヘッジファンドは「中央銀行が金 融政策を運営していくうえで、プレーヤーとして注目せざるを得ない」(清水 氏)存在になっている。ドイツでは監視・規制を求める意見がある一方、米国で は市場の流動性向上といったヘッジファンドがもたらすプラス面を評価する声が 聞かれる。

インタビューは6日午後に実施した。清水氏は、外国為替平衡操作担当総括。 政府・日銀が外国為替の市場介入を行う際には日銀側で執行にあたる立場だが、 日ごろは金融市場の動向を調査・分析している。介入は2004年4月以降、実施 されていない。

最近の世界的な株価下落や円安修正に関して、清水氏は「必ずしも、ヘッジ ファンドによるものとは認識していない」とする一方、「例えば1つの通貨で偏 ったポジションがとられていた場合には、何らかの価格変動を起こす可能性は否 定できないと思う」とも述べた。「まだまだ渦中なので判断はつきかねる」とし ながらも、「市場が自律的に行き過ぎた部分を調整するというメカニズムと受け 止めている」と語った。

世界同時安

今回の調整局面と昨年5月に発生した世界的な資産価格の下落との類似点と して、清水氏は「世界中で、色々な金融商品で同時に価格下落が起こった」こと を挙げた。資金の集中度合いや金利動向などを「もう少し時間をかけて調べない と分からない」とも述べた。

投資残高が急増している新興国の株式市場などは、日米市場などとは違って 流動性がなお低いため、「かなり巨大なポジションが構築されている場合には、 いつかの時点で一斉にクローズ(手仕舞い)されると価格変動が大きくなるリス クがあるのではないか」と指摘した。

清水氏は、ヘッジファンドが「どこかの市場に集中してポジションをとるリ スク」や「同時に色々な場所でポジションを閉じようとしてしまうリスク」を 「集中と伝播(でんぱ)」と呼び、「市場全体という意味でのリスクに注目して いきたい」と語った。

一方、ヘッジファンドのリスク管理能力の向上や、流動性の提供を通じた市 場機能強化への貢献といった点を前向きに評価。「ミドルリスク・ミドルリター ンで、リスクをコントロールしながら適正にリターンを上げていく主体に変わっ てきている」として、高いリスクをとった巨大ファンドが破たんした1990年代 後半のような「システミック・リスク」は想定しにくいとの見方を示した。

円キャリー、対象幅広く

円キャリートレードについて、清水氏は「あえて言えば、金利差に着目して、 そこから収益を得ようという取引と理解している」と述べ、相対的に金利が低い 円をショート(売り持ち)にし、金利が高い通貨をロング(買い持ち)にする取 引を代表例に挙げた。

ただ、最近では円売りの対象が「必ずしも通貨ではなく、株式や商品も含め て、あらゆる物との間でサヤを抜く、かなり幅広い定義を持つトレンド」になっ ていると強調。「正確な、誰もが納得する定義はない」と述べた。

投機的な通貨売買の目安とされるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME) の通貨先物取引(IMM)に関しては「円キャリーのなかで、ほんの一部。必ず しも、それだけではない」と指摘。国内の個人投資家による外貨建て投資信託の 急増にも言及した。

自律調整

清水氏は、市場が内包するリスクに対して市場参加者が「自分でコントロー ルしていく機能が非常に強まっている。必ずしも中央銀行が何かをするというこ とではなく、むしろマーケットの参加者たちが自分のポジションの危うさに早め に気づくような情報共有が重要なのではないか」と語った。

相場が荒れる局面では「どういうプレーヤーが、例えばロスカットしている のか、底値でそれを買っているのか、といった情報を日ごろ以上に細かく収集す る」と述べ、「最終的にマーケットがどう動くのかを理解していくのがわれわれ の仕事だ」と話した。

11月の論文が警告

日銀は昨年11月に「ヘッジファンドの投資行動変化と金融市場への影響- ポジションの集中および投資対象拡大と市場流動性リスク-」と題する論文を公 表。清水氏は執筆者の一人だった。

この論文は、ヘッジファンドの投資先やポジションに近年偏りが強まり、異 なる投資戦略をとるファンド間の運用成績が近年似通ってきている点などに言及。 何らかのきっかけでポジションの巻き戻しが起きた場合、価格変動が増幅され、 金融市場全体に影響が及ぶリスクもあると指摘した。

中央銀行が果たすべき役割としては、市場との情報交換につとめ、ショック 時にも流動性の安定的な確保をサポートすることを挙げている。

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