【銘柄探訪】インテリジ:激流労働市場へ攻勢、M&Aで「DODA」

労働市場の流動化が進み、人材サービス企 業の事業環境は良好だ。有効求人倍率は2005年12月におよそ13年ぶりに1倍 を回復、その後も1倍を上回る水準での推移が続く。景気回復、少子化、団塊 世代の大量退職といった追い風も吹き上げ、人手不足感から多くの企業で新卒、 中途を問わず人材の採用意欲は強い。業界に構造的変化の波が押し寄せる中、 インテリジェンスは旧学生援護会とのM&A(企業の合併・買収)や転職サイ ト「DODA」の開始などで、攻勢をかけ始めた。

賃金上昇の起点、正社員ビジネスの余力

「2007年は賃金デフレが収束し、本格的な賃金上昇の起点となろう」――、 大和総研の石原太郎アナリストは、2月5日付の「賃金上昇と労働ビッグバン」 と題する100ページを超すリポートの中でこう述べた。

理由として挙げたのは、少子化の進展に団塊世代の大量退職が重なること による労働市場のひっ迫、非正社員の正社員化、新卒社員の初任給上昇、非正 社員の労働組合加入促進など。賃金上昇は、労働者の将来不安を軽減し、好条 件労働の増加を生むため、正社員を中心とした労働市場に流動化をもたらす。 終身雇用制度が崩れる中、転職に対する労働者の抵抗感が薄れてきていること もあり、インテリジェンスが注力する人材紹介や転職求人広告といった「正社 員関連ビジネスには構造的な追い風が吹いている」(大和総研の石原氏)。

日本では、人材紹介会社を経由した転職比率が5%程度で、米国(20%) と比較すると依然低く、「今後この比率が上がることでも市場は成長する」と いうのが石原氏の見方だ。

ジャスダック市場上場のインテリジは、上場する人材紹介会社としては国 内最大手で、派遣や求人メディアなども手掛ける総合人材サービス企業。人材 紹介と転職サイトの運営を行う「キャリア事業」、事務派遣やIT関連・製造 派遣を行う「派遣・アウトソーシング事業」、アルバイト・パート情報サイト を運営する「メディア事業」の3部門から成る。

2006年9月期の売上高585億円のうち、派遣・アウトソーシング事業が353 億円(構成比60%)と過半を占め、キャリア事業は135億円(同23%)、メデ ィア事業が97億円(同17%)だった。一方、営業利益の構成ではキャリア事業 が61%、メディア事業は21%と、利益ベースでのけん引役はキャリア事業で、 会社側は収益性の高い同事業に注力していく姿勢を示している。

学生援護会と合併でシナジー期待

インテリジは昨年7月1日付で、求人誌などの出版を手掛けていた学生援 護会と合併した。インテリジは人材紹介でのマッチング事業を強みとする半面、 求人広告の機能が弱点だったことから、「両社の合併による相互補完効果は高 く、多様化する求人ニーズに応える体制が整った」(東海東京調査センターの 鈴木明アナリスト)として、評価する声が多い。

鈴木アナリストは、中期的な成長力を占う上で、合併により「アルバイト 求人部門が大幅に強化されたことや、手薄だった中小企業や地方の営業網を手 に入れたこと、人材紹介と転職求人分野が複合的に統合されたことの効果は大 きい」と見ている。

インテリジの鎌田和彦社長は、学生援護会との合併によるシナジー効果に ついて「統合してからまだ半年ほどに過ぎないが、組織の改革と融和は今のと ころ非常にうまく進んでいる」と現状分析。ただ、本当の効能が出てくるのは これからで、「後々じわじわと効いてくる」(鎌田社長)と期待を寄せる。

「DODA」効果で2倍、SHINJO人気も

旧学生援護会の経営資源を取り込んだ新サービスとして、人材紹介と求人 情報を一括提供する転職サイト「DODA」を今年1月から始めた。転職サイ トをDODAブランドに変更してからは、サイトのアクセス件数や応募数、新 規紹介登録者数は、すべて変更前との比較で2倍以上に増えた。また、CMデ ータバンクによる1月度後期のCM好感度調査では、オンエアされた2550本の テレビCMの中で、新庄剛志氏を起用したDODAは第3位と、サービス業と しては異例の高順位を記録した。

同サービス開始を前に顧客が出稿を控えた影響で、転職サイトの売り上げ は昨年11月から12月にかけてやや伸び悩んだが、新庄氏出演のテレビCMを 年初から全国で流すなど積極的なプロモーションが奏功。1月の同事業の売上 高は前年同月比5.3倍と急伸、「DODA」は順調なスタートを切った。ただ 会社側は、「滑り出しとしてはまずまずだが、長い歩みの中の第一歩を踏み出 したところに過ぎず、楽観も悲観もしていない」と、鎌田社長は手綱を締める。

第1四半期は大幅な増収増益

2月22日に発表した06年10-12月期(決算変更に伴い2007年2月期に おける第1四半期)の連結業績は、売上高が前年同期比80%増の216億5600万 円、経常利益は同3.1倍の18億3300万円となった。学生援護会との経営統合 により、売り上げが大幅増。キャリアコンサルタントの増員がスムーズに進み、 利益率の高い人材紹介事業が会社計画以上に伸びたことや、技術者派遣請負の 請求単価が上昇したことなども寄与した。

ドイツ証券の北見雅昭アナリストは、すでに2月7日に07年2月期通期業 績予想の上方修正が発表されていたため、「第1四半期の業績内容自体にサプ ライズはない」とする一方、コア事業中心に「ファンダメンタルズが強固なこ とを確認できた点はポジティブ」との認識を示した。「需要拡大に加え、転職 コンサルタントの拡充などサービスインフラの整備や業界内でのプレゼンス向 上が売上高の順調な拡大につながっている」(北見氏)という。

2月7日の増額修正内容は、07年2月期(5カ月の変則決算)の売上高は 360億円、経常利益は22億6000万円というものだった。前期決算発表は、4月 19日を予定している。

USENグループ入りには不透明さも

有線放送国内最大手で、インターネット関連事業なども手掛けるUSEN が昨年7月27日、インテリジの発行済株式数の40%超を取得した。ファンダメ ンタルズ面で順風満帆に見える同社も、USENの連結子会社となったことに 対して市場の評価は芳しくない。

今後インテリジでは、USENが展開する無料のブロードバンド放送「G yaO」などとの連携を強める方針。ただ、エイチ・エス証券の落合冨太郎市場 調査室担当取締役は、「業態のまったく異なるUSENの傘下企業となったこ とによるインテリジェンス側の事業面でのメリットは小さい」と受け止める。 また、“親子上場企業”のケースには子会社の株式に投資しないといった社内 規定を持つ機関投資家もいるため、USENによる子会社化は「株価面でネガ ティブに働く」(東海東京の鈴木アナリスト)との見方もある。

上昇トレンド崩れるも割安感浮上

インテリジ株は、06年9月27日に付けた昨年来安値19万8000円を底にじ りじりと持ち直し、先月19日には38万6000円まで上昇、約7カ月ぶりの高値 水準を回復した。しかし直近では、世界同時株安の影響を免れずに大きく落ち 込み、3月8日の終値は30万2000円に位置している。

エイチ・エス証の落合取締役は、2月末の株価急落で昨秋から続いていた 上昇トレンドが崩れたとして、「本格的な戻りには時間がかかる」との基本観。 ただ、DODAの収益寄与などで08年2月期には高成長が見込めることを勘案 すると、「足元の株価は売られすぎの水準にあり、バリュエーション面で割安 感が強まっている」(同氏)という。

ブルームバーグ・プロフェッショナルによると、アナリスト7人による08 年2月期の予想連結EPS(1株当たり純利益)は1万3035円で、足元の株価 から計算した予想PER(株価収益率)は23倍程度になる。

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