世界の中銀:相場乱高下でも利下げ期待すべきではない-市場にくぎ

先週の金融市場の混乱で損失を被った投資家 に対する世界の中央銀行当局者からのメッセージは次の通りだ。「当局が金融緩 和で救済することを期待してはいけない」。

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長と欧州中央銀行(ECB) 政策委員会メンバーのウェーバー独連銀総裁、日本銀行の水野温氏審議委員は そろって、世界的株価下落のそれぞれの経済への影響は深刻ではないとの姿勢 を示すとともに、依然としてインフレリスクをより重視していることを示唆し た。

国際通貨基金(IMF)のリプスキー副専務理事は2日のインタビューで、 「世界経済は引き続き非常に堅調で、インフレ率は比較的低い」とした上で、 世界の中央銀行の「政策は順調に進んでいる」とみられると語った。

これはつまり、ECBと日銀は引き締めを続け、米連邦準備制度は2007年 いっぱい据え置きを続けるということだ。市場の混乱が中銀に政策変更を迫る ことを期待する投資家にとっては残念な展開となる。中国株急落に端を発した 先週の株安を受けて、市場参加者は年央までの米国の利下げの観測を強め、E CBと日銀の利上げ観測を後退させた。

ダウ工業株30種平均は2月27日、一時546ドル安と、米同時テロ事件後 の初取引日以来の大幅下落を演じた。モルガン・スタンレー・キャピタル・イ ンターナショナル(MSCI)のワールド指数は先週、4%余り下落と8カ月 で最大の下げで取引を終えた。

エコノミストの間には、政策を変えない中銀の姿勢は、世界経済が直面し ているリスクを軽視し過ぎているとの見方もある。

ルービニ・グローバル・エコノミクス会長でニューヨーク大学教授のヌリ エル・ルービニ氏は、「相場急落が米経済にとって意味するものは、リセッショ ン(景気後退)入りだ」として、「米金融当局は遅かれ早かれ利下げを迫られる だろうが、リセッションを防げないだろう」と語った。

先物金利の動向が示す7月までの米利下げの確率は3月2日に70%と、2週 間前の14%から急上昇した。欧州では先週、一部トレーダーがECBの利上げ 予想を撤回した。

一方で、中銀当局者らは、世界経済には先週の株価変動の影響を乗り切れ る十分な強さがあるとみている。プール米セントルイス連銀総裁は2日のイン タビューで、「リセッションを予想してはいない」として、「現時点で、当局が 差し迫って行動する必要性はないというのが私の判断だ」と語った。

ユーロ圏では、3月8日の3.75%への利上げがほぼ確実視されている。独 連銀のウェーバー総裁はさらなる利上げを支持する考えを示している。同総裁 は2月28日のインタビューで、「金融政策をより大きく正常な状況に近づける ことが必要だ」と述べた。

日銀の水野委員は同日、株価下落は「緩やかな」利上げの方針を揺るがさ ないと発言した。榊原英資元財務官は2日、日銀が5月にも追加利上げを実施 する可能性があるとの見方を示した。

もちろん、株価が下げ止まらず金融システムの安定が脅かされれば、中銀 は早急に市場に流動性を供給するだろう。米連邦準備制度は1987年10月の株 価急落の後も2001年の米同時テロ事件の後もそうした。しかし今回は、そのよ うなシステミックリスクの兆候はない。バーナンキ議長は2月28日の議会証言 で、「市場を注意深く見守っている」とした上で、「正常に機能しているように みられる」との認識を示した。

歓迎すべき警鐘

中銀当局者らは今回の相場変動を世界経済の悪化の先触れとは見ず、むし ろリスクに無頓着になり過ぎた投資家への歓迎すべき警鐘と受け取ったようだ。

元イングランド銀行金融政策委員会(MPC)メンバーでロンドン・スク ール・オブ・エコノミクス(LSE)教授のウィレム・ブイター氏は「起こる べくして起こったアクシデントだ」として、「中銀当局者は注意深く市場を見守 るだろうが、大きな懸念を抱くとは思われない」と述べた。

当局者は以前から、投資家の過剰なリスクテイクについて警告していた。 トリシェECB総裁は1月27日、「リスクは再び高まる」公算が高いとして、 市場はこれに備える必要があると指摘していた。

成長の力強さを考慮すれば金利はまだ低過ぎ、市場がいったん落ち着けば、 投資家はリスクの高い取引を再開するとの見方もある。日本の低金利は円で調 達し高利回り通貨で運用するキャリートレードの温床となっている。先週は、 株安を受けた投資家のリスク回避行動で円は週ベースで1年2カ月ぶりの大幅 上昇を演じたものの、日本の政策金利が米国を4.75ポイント下回ることに変わ りはない。

ドイツ銀行のロンドン在勤の欧州担当チーフエコノミスト、トマス・マイ ヤー氏は、「金利環境が市場にとって比較的良好な状態は続くだろう」と話した。

先週の下落後も、MSCIワールド指数はまだ1年前に比ベ12%高い。市 場はこの間に、2006年5、6月の株安を乗り切っている。低金利がこの30年で 最長の景気拡大を支えるなかで、中銀は投資家に自己責任を迫る。ウェーバー 総裁は「リスクを読み違えたとしても、流動性供給による助けを中銀に求める のはやめてほしい」とくぎを差した。

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