香西税調会長:米中経済の変調は問題、ドイツ税改革参考へ―単独会見

政府税制調査会(首相の諮問機関)の香西泰 会長はブルームバーグ・ニュースとの単独会見に応じ、現在の日本経済は1990 年代と比べて民間主導のリストラ努力が実を結び、「足腰はかなり強い状況にな っている」との認識を示す一方で、問題点として今後の中国経済や米国経済の 変調の可能性やアジア諸国経済の追い上げがあることを挙げた。インタビュー は2月28日に行った。

香西氏は内閣府経済社会総合研究所の所長を務め、官庁出身のエコノミス トとして知られている。今年1月に政府税調会長に就任した。香西氏は、日本 企業の国際競争力強化の観点から、法人税の実効税率の引き下げを含む税制の 抜本改正を予定しているドイツが日本にとっても「参考になる」との認識を示 し、今後、法人税引き下げの是非を検証する姿勢を示した。

香西氏は日本経済を取り巻く外部環境について、「2つぐらい問題があり、 1つは今の世界経済をリードしている米国や中国に変調が起きないかどうかは、 かなり大きな問題だと思う」と述べ、「今回の株安は、一過性のもので済むなら ばそれはそれでよいが、今までのところ堅調に進んできた中国経済が今後も続 くか、ということは1つの問題点だ」と語った。

日本は踏みとどまった状態

また、別の問題点としてアジア近隣諸国の追い上げや、日本の成長率が先 進国の中で依然として低いことを指摘。「21世紀初めに起きたことは、非常に多 くの日本の優良企業がリストラに迫られた。従来からみると、大胆に迅速に行 われた」と評価しながらも、「その間、中国や台湾、香港なの周辺諸国(地域) は、もっとある意味で強くなった。半導体でも、台湾や韓国などは同じように 不況になったが外資をどんどん導入し、非常に規模が拡大し、液晶なども非常 にキャッチアップした」と語った。

そのうえで「日本はリストラに成功して、踏みとどまったことは事実だっ たが、近隣諸国との差は縮小した。こちらは工場閉鎖している間、あちらは工 場を拡大した。ある意味でキャッチアップがさらに進んだ」と述べ、「近隣諸国 の工業化の進展に比べれば、日本はまだ態勢が整っていない」と指摘。「先進国 としての高い成長率である2.5%くらいから見ると、やや低いし、ギャップがあ る」と分析した。

一方、2月に日本銀行が実施した追加利上げついては、「経済が正常化し ていけば金利も正常化していく」と述べ、日銀の利上げに理解を示した。香西 氏は「確かに財団法人などをみると、金利収入が減っていることもある」とし、 「いつまでもゼロだ、ゼロだ、と言っているわけにもいかないところがある。 その辺は日本銀行の独立性を認めていくことで良いのではないかと、個人的に 思う」と述べた。

ドイツ税制改正を検証

香西氏は、秋以降の税制の抜本改革の議論に向け、9日に予定している会 合で「調査分析部会」を設置することを正式に決め、基礎的な調査分析を進め ていく考えを示した。同部会は①少子化・高齢化、グローバル化の進展な ど経済社会の構造変化が税制に与える影響②税制が経済・財政、経済活性化な どに与える影響③租税原則-の3分野について検証を進める方針だ。

3月中に税調委員をドイツに派遣して税制改革を調査する背景について、 「ドイツは2000年ごろに議論されたことを実行に移す段階に入っている。ドイ ツは法人税率を下げる、付加価値税率を上げる。所得税の最高税率も上げる。 非常に微妙な玉を投げている」と説明した。

さらに、「ドイツはマーストリヒト条約(欧州連合条約)で決めた財政規約 が守られていない。赤字が増えている。欧州連合の中で投資が国境を越えて盛 んに行われている。そうなると法人税率が低い国へ会社を移されてしまうこと もあり、複雑な形の税制改正になっている。それを調べてきてもらいたい」と 語った。

そのうえでドイツの税制改革は日本にも「参考になるだろうと思う」と述 べ、「2005年ぐらいまでドイツの実質成長率は日本以下だった。そういう低い成 長率の中で法人税率を下げないと、立地競争になる。工場をどこに建てようか という時には税金の安いところに建てた方が、利益が上がる。そういうことが あって法人税率を下げるのだろう」と説明した。

一方、「日本の場合は、そこまでいっていないのではないかと言えばそうか もしれないが、グローバリゼーションからして、どう対応するかという時の1 つの例としては、向こうの事情を違うなら違う。どこが違うか、どこまでまね られるか。まねる必要があるか、これからの議論で明らかにする」と語った。

地方税などを含めた法人実効税率は日本39.54%(東京は40.69%)、米国

40.75%、ドイツ38.36%、フランス33.3%、英国30%、韓国27.5%などだ。 ドイツのメルケル政権は、企業の社会保険料負担を軽減するため、同実効税率 を2008年1月から30%以下に引き下げることを目指している。その一方で付加 価値税を今年1月から16%から19%に引き上げた。

財政再建の一里塚として政府が目指す2011年度の基礎的財政収支(プライ マリーバランス)の黒字化については、「プライマリーバランスぐらいは、税で なく支出の方で調整してもいらいたい」と述べ、歳出削減で対応すべきだと考 えを示した。また、2009年度までに基礎年金の国庫負担を2分の1へ引き上げ ることについては、「税金の負担を増やしていくことが言われている。そのため の財源は必要だ」と述べた。

香西氏はまた、増加が見込まれる社会保障費について年金や医療に加え、 「介護も子育てなどもこれから高齢化が進む中、財政上の負担になる可能性が あるものとして一番大きな項目」と指摘。そのうえで、財政健全化について、「プ ライマリーバランスにとどまらないで少しずつ基礎的財政収支を黒字化し、国 債残高が非常に大きい状態を解消していく。それをやらないと金利の上げ下げ が財政に影響し、財政に影響することがまた経済への大きな反動を呼びかねな い」と警鐘を鳴らした。

共同取材―藤岡 徹、萩原ゆき--Editor:Ozawa

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