銀行界:日銀の追加利上げ、利ざや改善に期待広がる-効果は来期(5)

日本銀行が21日、昨年7月に政策金利を ゼロから引き上げて以来、初めての追加利上げに踏み切った。銀行界では、底 は打ったがまだ低水準にある利ざや拡大への期待が膨らむ。ただ、銀行は預金 金利の引き上げを先行するほか、企業貸出などへの反映には一定の時間もかか るため、収益への寄与が鮮明になるのは2008年3月期以降になりそうだ。

マッコーリー証券の古木謙太郎アナリストは「貸出金の利回り改定が終る のは3-6カ月かかる。07年3月期は調達コスト(預金金利)が上昇すること で若干ネガティブだが来期以降は利ざや改善が着実に進み収益にはポジティブ に効いてくる」との見方を示す。

大手銀行など、まず預金金利を引き上げ

三菱東京UFJ銀行の畔柳信雄頭取(全国銀行協会会長)は日銀の政策決 定会合1日目の20日の記者会見で、日銀の追加利上げの是非について「預金者 にとっては利上げが望ましい。一方、貸出先は低金利の継続を望んでおり、両 者間の資金仲介を行う銀行として意見を申し上げるのは難しい」と銀行の立場 を説明した。

ただ、政策金利上昇が銀行収益にプラスに働くのは確かだ。三菱東京UF J銀の場合、貸出金利のうち全体の4分の3が市場連動型。それ以外の貸出金 利も市場に連動する傾向が強く預金金利など調達コストとの差が広がれば利ざ やは拡大する。昨年7月のゼロ金利解除以降、すでに同12月末の同行の預貸金 利ざやは1.34%と9月末から0.01ポイント改善、みずほフィナンシャルグル ープも1.35%と0.04ポイント改善した。

一方、三菱東京UFJ、三井住友、みずほ、りそなの大手行などは日銀の 利上げを受け21日夕、普通預金の金利を0.1%引き上げて年0.2%とし26日か ら適用すると発表した。住友信託銀行は0.2%を0.25%にする。新生銀行も預 金残高に応じて23日から引き上げる。大手行は昨年のゼロ金利解除後、約6年 半ぶりに引き上げ0.001%から0.1%としていた。

企業の資金需要の回復カギに

野村証券の守山啓輔アナリストは昨年7月の大手行の預金金利の上げ幅は 「比較的高かった」と指摘する。今回の追加利上げ後の預金金利の引き上げ幅 も、調達金利と運用金利の差である利ざやを左右するため、過去の例に多かっ た0.025%-0.05%の引き上げにとどまるのか、それとも昨年7月のように 1%前後の大幅引き上げになるのかに注目が集まっていた。

また、銀行間の企業向け貸し出しの競争が激化するなかで「貸出需要は弱 く簡単には貸出金利を上げられない」(クレディ・スイス証券の伊奈伸一アナ リスト)と慎重な見方もある。景気拡大が企業の貸出需要の拡大にはっきりと 表れず、預金金利だけが上昇する傾向が続けば利ざやは改善ばかりか縮小する 可能性もあるという。

地銀、今後の慎重な対応に期待

利上げについて全銀協の畔柳会長は「経済情勢などを総合的に踏まえ、日 銀が判断したものと認識している。物価安定と持続的な経済成長に向け引き続 き適切な金融政策運営をお願いしたい」とコメント。一方、全国地方銀行協会 の瀬谷俊雄会長(東邦銀行頭取)は「金利水準適正化へのワンステップ」と評 価しながらも「地域経済は依然として景気回復の実感に乏しく今後とも十分に 配慮した金融政策を期待したい」との声明を発表した。

一方、長期資金を国債などで運用する生保業界では、生命保険協会の斎藤 勝利会長(第一生命保険社長)が「このところの経済・物価情勢や景気リスク を見極めて決断であり、日本銀行の判断を尊重したい」などとコメントを発表。 日本生命では「今後の長期金利は物価動向を睨みながらも、政策金利と歩調を 合わせて形成されていくと考えている。生命保険会社の運用にとって中・長期 的な金利上昇は望ましく歓迎したい」(西田誠一広報室長)としている。

--共同取材:日向 貴彦、 河元 伸吾、 伊藤 小巻 Editor: Hirano

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