CAT債は巨大市場に成長の可能性、高利回りでPIMCOなどが注目

債券ファンド大手パシフィック・インベス トメント・マネジメント(PIMCO)で500億ドル(約6兆400億円)相当 の運用に携わるジョン・ブリンジョルフソン氏は、自然災害に凝っている。同 氏は、ディスカバリー・チャンネルで天変地異や大嵐のドキュメンタリーを見 るのが好きだ。

同氏は先週のインタビューで、「人類に起こり得る最悪の事態、例えば隕 石(いんせき)の地球衝突や伝染病のまん延、地球温暖化、大津波など」が「お 気に入り」だと話した。なぜなら、同氏はハリケーンや地震、伝染病などの災 害に備える保険契約に基づくカタストロフィー(CAT)債券の世界最大の買 い手だからだ。CAT債の利回りは指標となる金利を最大10ポイント上回り、 最も利回りの高い債券の1種だ。

地震など天災のリスクに加え、生命保険加入者の死亡率が保険会社の予定 死亡率を上回るリスクに備えるトリプルX債、鳥インフルエンザのリスクを転 嫁する鳥インフル債など、保険に基づいたさまざまな債券が発行されている。 再保険最大手のスイス再保険は、これらの「保険債券」の発行額が今後10年で 3500億ドルに達すると予想する。発行高は過去5年で4倍余りに増え、270億 ドルとなった。引受手数料をにらみ、投資銀行各社はこのような商品に専門の チームを拡充している。

PIMCOでCAT債10億ドル相当を保有するブリンジョルフソン氏は 「これに並ぶ利回りの商品はない」として、「投資家が請け負うリスクに十分 見合うか、それよりも高いぐらいの利回りだ。発行を増やすように、発行体や 投資銀行に強く働き掛けている」と話した。

ブリンジョルフソン氏のような運用者のおかげで、証券化の分野で保険が 脚光を浴びるようになった。ウォール街は住宅ローンからクレジットカードロ ーン、自動車ローンなどを証券化し、これらの債権を裏付けとした債券を組成 してきた。投資家は株式市場や通常の債券市場に連動しない高利回り商品を求 めている。証券化は、ハリケーン「カトリーナ」での高額支払いの経験や自己 資本強化を求める規制当局からの圧力により自社で抱えるリスクの低減を志向 するようになった保険会社のニーズにも一致した。

06年にスイス再保険の金融サービス責任者に就任した前米連邦準備制度理 事会(FRB)副議長のロジャー・ファーガソン氏は06年12月に、保険関連 証券の市場は住宅ローン担保証券(MBS)と同様の成長可能性があると語っ た。1970年代末には存在しないに等しかったMBS市場は現在、6兆ドル超の 規模に成長している。

さらに、このような証券の引受手数料はMBSよりも高率だ。スイス再保 険のCAT債主任トレーダー、ダン・オジズマー氏によると、CAT債の引受 手数料率は1-1.5%だという。ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)などのMB Sの場合、手数料率は0.12%。

保険債の仕組みは再保険と同じだが、リスクが1社の再保険会社によって 引き受けられるのではなく、多数の投資家の間で分散されるところが異なる。 保険会社はカトリーナのような大災害の際の保険金支払いに備えてCAT債を 発行する。

台風や伝染病などで保険会社が高額の支払いを迫られれば、CAT債は元 本までが失われる可能性もある。ハリケーン・カトリーナの襲来後の05年10 月、格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)はスイス再保険 が05年7月に発行したCAT債の格付けをデフォルト(債務不履行)まであと 2段階の「CC」に引き下げた。PIMCOの2カ月前の届け出によると、同 社が保有する額面500万ドルの同銘柄の簿価は3000ドルまで低下している。こ の銘柄は今年12月14日に償還される。

米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスでCAT債を売買するブレッ ト・ホートン氏は「CAT債の値付けを求められたときは、同じ地域で過去に 起こったハリケーンや地震の情報を参考にする」という。リーマンには保険関 連商品を専門に手掛けるトレーダーが20人いる。ホートン氏の取引相手は、ヘ ッジファンドや機関投資家だ。その1人、ジェンワース・ファイナンシャルの 運用者、ニラジ・パテル氏は「保険がトレーディングの対象になると思われて いなかったが、様子は変わった」と話す。

クレディ・スイス・グループは1990年代の半ばにCAT債の市場を創ろう としたが果たせず、撤退した。05年8月のカトリーナで環境が変わり、同社は 再び保険債に参入。現在では4人のチームでこれを手掛けている。

ゴールドマン・サックスによると、06年のCAT債発行高は約90億ドル。 カトリーナなどハリケーンがメキシコ湾岸を襲う前の1年間は20億ドルに満た なかった。ゴールドマンの保険債引き受けグループ責任者マイケル・ミレット 氏は「保険会社は10年以上前からときどき、リスクへの備えを資本市場から購 入してきたが、現在の活動は性格が全く違う」として、「場合によっては、リ スクへのこのような備えが保険会社のリスクヘッジの中心として組織的に組み 込まれている」と説明した。

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