鉄鋼四半期決算:高炉と電炉、原料コストで格差鮮明-株価も二極化

2日までにほぼ出揃った鉄鋼の四半期決算 では、高級鋼材に注力する高炉の業績がおおむね順調だったのに対し、電炉は 原料高を吸収できずに低迷するなど、格差が鮮明になった。高炉間でも収益面 に差が出始めており、アナリストは、株価を含めてこうした格差状態が当面続 くとみている。

高炉では、最大手新日本製鉄の好調ぶりが目立った。今期の高炉各社は、 原材料の在庫評価益がなくなったことが大きな減益要因となっている。新日鉄 の10-12月期では鉄鋼事業だけでなく、エンジニアリング事業も伸びたこと から、高炉大手4社で唯一、純利益が前年同期比プラスに転じた。

これに対し、電炉の東京製鉄は不振。鉄スクラップ高が直撃し、減産を 余儀なくされたため、通期利益見通しを引き下げた。特殊鋼では日立金属が新 日鉄と並んで増益を確保したものの、原料高に需給緩和が加わった結果、その 他は底ばい状態だった。ステンレス大手の日新製鋼は、高炉補修などの特別損 失が縮小したため、大幅増益。

高炉-鋼材二極化には対応も、規模の格差

中国の増産をきっかけに、高炉各社は高級鋼材の堅調さと汎用鋼材の軟 化という「鋼材の二極化」に対処するため、高級化路線を推進。自動車やエネ ルギーといった「狙った高級分野の鋼材需要は好調」(住友金属工業の本部文 雄副社長)といい、アジア市況が悪化しなければ、住金は07年度の日本粗鋼 生産が1.18億トン(06年度見通し1.17億トン)になると予想している。住金 の今期純利益は、半導体材料のSUMCO株売却益がないことの反動で、減益 幅が大きくなった。

市場関係者は決算について「おおむね予想の範囲内。新日鉄中心に最高 益更新の可能性を残している」(第一投資顧問の今井一夫・調査部長)と評価 しているが、そうしたなかでも業績格差は出始めている。JFEホールディン グスはエンジの赤字、半導体事業の減速が足を引っ張り、「新日鉄との比較で は、やや迫力不足」(日興シティグループ証券の城野俊之アナリスト)。住金 はニッケル高、神戸製鋼は電子材料関連の低迷などで、上位2社と比べると 「業績の伸びは相対的にさえなかった」(メリル・リンチ日本証券の榎本尚志 アナリスト)との見方が出ている。

実際、生産量の多い新日鉄とJFEの10-12月期営業利益は、輸出価格 の堅調さなどを受けて、プラスに転換。国内各社は、生産規模の拡大に慎重な 戦略を取っているものの、新日鉄やJFEの高収益に関しては「生産量が伸び、 スケールメリットが出ていることも影響している」(みずほインベスターズ証 券の鈴木博行アナリスト)という。

電炉-原料次第、特殊鋼は値上げも焦点に

電炉各社の収益は、鉄スクラップとニッケルなどの原料高の行方が引き 続きカギ。特殊鋼メーカーは、ニッケル製品の一部に地金連動型の値決めを採 用しているが、製品値上げには少なくとも1-2カ月のずれが発生するため、 大同特殊鋼を中心に「1-3月期に収益を圧迫する」(ドイツ証券の原田一裕 アナリスト)。

鉄鉱石や原料炭が急騰した05年度時、高炉は鋼材需要の増加を背景に 製品価格を引き上げることで、コスト高を乗り切って最高益を達成した。06年 度に続き、07年度の高炉の主要原料コストはほぼ横ばいの見通し。その一方、 鋼材需要の好調が続けば、鉄スクラップは下げにくくなる。UBS証券の山口 敦アナリストは29日付リポートで、鉄スクラップの高止まりが続けば特殊鋼 のマージン拡大は期待しにくいと指摘、07年度収益では「自動車向け鋼材の値 上げができるか」がポイントになるとみている。

株価も格差広がる

業績などを反映する形で、株価にも差が出ている。新日鉄とJFEは昨 年12月から急騰して現在も昨年来高値圏に位置しているのに対し、他の高炉 株の動きは鈍い。電炉株では、ニッケルの在庫評価益が発生しているステンレ ス関連や米国の持ち分利益が好調だった大和工業など一部を除き、06年高値か らは大きく下げたまま。みずほインベスターズ証券の鈴木氏は、鉄スクラップ 価格が下落すれば、次第に電炉株価は立ち直るとみているものの、早急な株価 回復には否定的。また高炉間でも業界再編、および株主還元への期待感から新 日鉄とJFEは買われやすい地合いになっており、こうした格差が「当面は続 く可能性がある」とみている。

*T    10-12(前年比)   通期予想 新日鉄  993億(33%増)   3100億円(据え置き) JFE  746億(9%減)   2900億円(据え置き) 住友金  562億(31%減)   2000億円(100億円増) 神戸鋼  244億(7%減)   1000億円(据え置き) 日新鋼  112億(2倍)     280億円(据え置き) 大同特   42億(17%減)    203億円(据え置き) 日立金   66億(19%増)    220億円(据え置き) 東製鉄   52億(37%減)    210億円(40億円減) *T

新日本製鉄の株価終値は前日比1円(0.1%)安の723円、JFEホール ディングスは同60円(0.9%)高の6950円、住友金属工業は同2円(0.4%) 高の526 円、神戸製鋼は同4円(0.9%)安の442円、日新製鋼は同1円 (0.2%)安の464円。

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