楽観論が圧倒したダボス会議、中銀総裁からは円キャリー取引に警告も

スイスのダボスで先週開催された世界経済 フォーラム年次総会(通称:ダボス会議)には過去最高の利益や報酬を手にし た銀行家、投資家、企業経営者らが集まった。その自己満足ぶりに一部当局者 らは警笛を鳴らしたが、5日間の会議を終えた出席者らの気持ちは変わらなか った。

インド最大の携帯電話サービス会社、ブハルティ・エアテルのスニル・ミ タル会長は「ムードは完全に上向きだった」とし、「こんな雰囲気は今まで見 たことがない」と語った。

欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁らが発した警告は、米シティグル ープのグローバル・バンキング部門のマイケル・クライン高経営責任者(CE O)や米投資会社カーライル・グループの共同創業者デービッド・ルーベンス タイン氏らには相手にされなかった。そうした企業幹部らは、ここ30年で最高 の世界景気の減速は避けられなくても、それに対応できるとの自信に満ちあふ れていたためだ。

モルガン・スタンレーのチーフエコノミスト、スティーブン・ローチ氏は 「ダボス会議では好景気がもう1年続くということでみんなの考え方が一致し た」と語る。

中国やインドを筆頭に新興市場国は世界景気をけん引しており、企業の借 り入れも勢いが衰えない。欧州では買収目的で発行された債券が昨年7-9月 期には過去最高を更新した。クレジット・デリバティブ市場では、欧州の社債 保有リスクは先週、過去最低となった。ニューヨーク証券取引所を運営する米 NYSEグループのジョン・セインCEOによれば「ビジネス社会も金融市場 も世界経済もどれも非常に良好だ。」

リスクは存在する

ただ、参加者はリスクに目をつぶっているわけではない。シティグループ のグローバル・バンキング部門のクラインCEOはパネル討論会で、米10年国 債に連動したモデルに金融市場が依存している現状を指摘。「長期金利が大き く動けばシステム全体に波及する劇的な影響」が起きるリスクがあると述べた。

同じ討論会でヘッジファンド、シタデル・キャピタル・インベストメント・ グループのケネス・グリフィンCEOは、政策や過剰な規制が十分な流動性を 背景に上昇してきた相場を反転させる可能性に懸念を示した。同CEOは「市 場規制あるいはそのほかの変化で再び流動性のコストが押し上げられるのを目 にするようになれば悲痛だ。なぜなら世界経済、特に東南アジアや中南米、イ ンドの資本形成において、流動性が大きく貢献していたからだ」と述べた。

ダボス会議開催中、投資家らは物事がうまくいかなくなる可能性を突きつ けられた。米国の昨年12月の中古住宅販売件数が減り、エネルギーや医薬品関 連企業の決算が思わしくなく、ダウ工業株30種平均は25日、2カ月で最大の 下げを演じた。

日本の利上げがリスク

ウェーバー独連銀総裁ら中銀関係者は歯に衣(きぬ)着せない警告を発し た。同総裁は、日本での追加利上げは過去4年にわたる相場上昇に寄与した世 界の流動性を吸い上げる結果になると指摘。「金融市場はより適切なリスク評 価に立ち返るべきときだ」と述べ、投資家が長期間にわたり何も対策を取らな ければ「『取引からの脱出ラッシュ』が起きる危険性」があると語った。

また、国際決済銀行(BIS)のマルコム・ナイト総支配人もゼロに近い 低金利の円を借りて高金利資産に投資する円のキャリートレードの拡大に対す る懸念を示した。

ただ、国際通貨基金(IMF)のリプスキー筆頭副専務理事は異論を唱え、 金融市場に織り込まれたリスクは適切との判断を示した。同氏は「世界経済は 予想よりもかなり良い展開となったので、リスクの尺度が良い方向に向くのは 驚くべきことではない」と述べた。

ドイツ銀行で債券や株式の販売・取引を担当する責任者アンシュ・ジャイ ン氏はインタビューで、「私が抱える最大の懸念は、われわれが十分な懸念を 抱いていないことだ」と語った。