デリバティブ王、ICAPのスペンサーCEO:証取との競争に挑む

ICAPのマイケル・スペンサー最高経営 責任者(CEO)は、これまでの人生で経験した賭けの中では、20年前に5万 ポンド(約1190万円)で同社を設立したときの話をするのが好きだ。設立以来、 同CEOは同社をインターバンク(銀行間)のディーラー業務で世界一に育て 上げた。

ICAPをロンドンで設立したときのことを振り返りながら、スペンサー CEOは成功の確率は五分五分で、「生き残るのに短期的な希望しかなかった」 と述べる。だが、今や彼はロンドンとフランス南部に住宅を持つロンドンの金 融街シティーでも屈指の富豪となった。同CEOはイングランド銀行から歩い て10分ほどの本社で、29日までにインタビューに応じた。

スペンサーCEOはICAP株の20%を保有しており、その評価額は6億 5960万ポンドとなる。ICAPの株価は26日までの1年間で16%上昇し、英 FTオールシェア指数の11%高を上回る伸びとなっている。

ICAPはここ20年間で最もホットな市場、デリバティブ(金融派生商品) の中心地だ。ICAPが扱う取引は1日当たり平均で1兆2000億ドル(約146 兆円)相当と、2003年の3000億ドルから大きく拡大。ICAPは、米国債市 場向けの最大のブローカーにもなっている。

スペンサーCEOはブローカー業界の革命を主導した1人となった。業界 での取り次ぎは電話がまだ主流だが、ますます電子取引への移行が進んでいる。 現在、ICAPでの取引の50%以上がコンピューターを通じ行われており、そ の比率は急激に高まっている。

電子取引

ブリッジウェル・セキュリティーズ(ロンドン)のアナリスト、ジェフ・ ミラー氏は、「電子取引へ重心が移るのは不可抗力だ」と話す。伝統的な取引所 とICAPのようなインターディーラーブローカーの境界線はあいまいになり つつある。

昨年11月にシカゴ商品取引所(CBOT)を85億ドルで買収することで 合意したシカゴ商業取引所(CME)は、英ロイター・グループと今年、合弁 会社を通じ電子為替取引を拡大する。この合弁、FXマーケットスペースは、 ICAPと真正面から競合することになる。

米ニューヨーク証券取引所を運営するNYSEグループによる欧州2位の 証取、ユーロネクスト買収が完了すれば、統合後は取引量で世界4位の先物市 場、ユーロネクスト・ライフの経営を担う。今度はICAPが証取の分野に乗 り込む番だ。昨年遅くから、ICAPは、投資家が取引所を経由せずに金利先 物を取引できるシステムの実験を行っている。

スペンサーCEOは、「われわれは皆、確実に同じ領域に向かっており、あ る種の衝突は避けられない。証取はいつも他人のランチをどうやって平らげる かを話し合っている。われわれはこれら証取と潜在的に競合するポジションに ある」と話す。

スペンサーCEOは昨年夏、ロンドン証券取引所(LSE)のクララ・フ ァースCEOとともに合併の可能性について協議したが、米店頭株式市場運営 のナスダック・ストック・マーケットによる敵対的買収案を受けたLSEの株 価が高騰したことで、合併は難しくなったという。

「いずれかの段階で世界的な株式市場が出現するのは不可避だ」と言うス ペンサーCEOは、「われわれの技術とLSEの統合は、その達成を十分可能と するだろうが、こうした取引の経済的側面は簡単ではない」と語った。