バーナンキ議長とトリシェ総裁、原油安がインフレ高めるリスクに直面

【記者:Matthew Benjamin、Simon Kennedy 】

1月29日(ブルームバーグ):原油価格の下落はバーナンキ米連邦準備制 度理事会(FRB)議長やトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁ら中央銀行当 局者から、インフレを懸念する理由の1つを取り除いてくれた。その一方で、 別の懸念材料をもたらした。

エネルギー価格低下はインフレの源の1つを絶つ一方で、既に堅調な世界 経済の拡大を加速させることにつながる。これにより、欧州では一段の利上げ が必要になり、米国では利下げの障害となる公算がある。

ローレンス・マイヤー元FRB理事は「とびきりの難題だ」として、「イ ンフレ低下で利下げを迫られる一方で、成長加速は引き締めを迫る。さて、ど うするかだ」と話した。

バーナンキFRB議長と米金融当局者らの当面の答えは「何もしないこと」 だ。米連邦公開市場委員会(FOMC)は30、31日の会合で、政策金利を5.25% に据え置く見通しだ。

メリルリンチの北米担当チーフエコノミスト、デービッド・A・ローゼン バーグ氏は、原油下落は「3回の利下げに相当する」として、「この環境では 金融当局は出番なしだ」と話した。

金利先物の動向は1-6月(上期)の利下げ確率が4%にすぎないことを 示唆する水準。1カ月前には72%の確率が示唆されていた。住宅市場の回復や 賃金上昇、ガソリン価格下落を追い風に米景気が勢いを増しつつある兆候を受 けて、利下げ観測は後退している。ロイター・ミシンガン大学の消費者マイン ド指数は1月、3年で最高となった。

ローゼンバーグ氏は、米国民の「暖房費負担は2年で最低」だと指摘。こ れが今年1-3月(第1四半期)の個人消費を0.4%押し上げると概算している。 1月26日の暖房油価格は1ガロン=1.59ドルと、2006年8月の2.14ドルから 下落。原油先物2月限は1月18日に、05年5月以来の安値となる1バレル=

49.90ドルを付けた。ガソリンは先週、平均で1ガロン=約2.15ドルとなり、 年初の2.32ドルや06年8月初めの3ドルに比べ下落した。

イエレン・サンフランシスコ連銀総裁は1月22日の講演で、「エネルギー 価格自体が今年の成長の原動力となり得る」と述べた。

ECBも同様の景気見通しに基づき、追加利上げを示唆している。ECB は05年末以来6回の利上げで政策金利を3.5%とした。ビーニ・スマギECB 理事は18日ロンドンで記者団に語り、「原油下落によりユーロ圏経済は勢いを 増している。景気が予想よりも強いとき、われわれはそれを考慮しなければな らない」と述べた。

ECBの当局者らはまた、06年の原油高はまだ財やサービスの価格に行き 渡っておらず、今後の賃金上昇圧力を引き起こす可能性があるとしている。E CB政策委員会メンバーのウェーバー独連銀総裁は22日のインタビューで、「過 去の原油高が、われわれが考えているよりも大きく波及するリスクがある」と 述べた。

UBSのロンドン在勤、欧州担当チーフエコノミスト、ステファン・デオ 氏は、ECBが今年さらに3回の利上げで政策金利を4.25%まで引き上げると 予想。「原油安が欧州の消費を押し上げること」が一因と説明した。

バンク・オブ・アメリカのチーフエコノミスト、ミッキー・レビー氏は、 エネルギーコストの低下は個人の消費余力を高めるとともに、企業の事業コス トを低下させると指摘。中銀を困らせるものではないとの見方を示している。

一方、キャピタル・エコノミクスの世界エコノミスト、サイモン・ヘイリ ー氏によれば、このプラス効果は米欧経済にとって行き過ぎの可能性がある。 同氏は、昨年の原油高は前回の価格高騰に比べ影響は「明らかに小さかった」 として、その結果、世界経済が既に堅調に成長しているところに、原油下落に よる景気刺激が加わることになると指摘した。

英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)の調査によると、 今回の原油高の悪影響が抑えられたのは上昇のペースが緩やかだったことが理 由。RBSの欧州チーフエコノミスト、ジャック・カイユ氏は、従って最近の 急激な原油下落は、インフレ低下よりも成長加速をもたらす可能性が高いとみ る。

マイヤー元FRB理事は、米経済が減速していた06年半ばならば原油安の プラス効果はありがたかっただろうが、「今は成長に粘りがあり、失業率は低 く、雇用市場の力強さを増している。エネルギー価格がさらに10ドル下落すれ ば、インフレ高進リスクが出てくるのは当然だ」と話した。