U2のボノ:慈善事業家の本当の姿は最たる資本家か、節税もばっちり

アイルランドのロックバンド、U2が昨年 12月9日に行った世界ツアーのホノルル最終コンサート。リードシンガーのボ ノが失恋の曲「ワン」を4万7000人の聴衆に向けて歌い、合図するとファンの 一部が携帯電話をかざしメール送信を始めた。貧困撲滅に向け米政府に連邦予 算の1%を追加寄付するよう訴える米団体「ワン」を支持するとのメールだ。

同団体「ワン」によると、こうしたファンによる支援メールは約50万件に 達した。欧米とアジアで460万人の聴衆を集め、05年3月に始まった「バーテ ィゴ」ツアーで行った131回のコンサートのほとんどで、ボノはこうしたキャ ンペーンを行った。

米誌ビルボードによれば、「バーティゴ」ツアーの興行収入は3億8900万 ドル(約472億円)と、英ロックバンド、ローリング・ストーンズに次いでロ ック界始まって以来の2位。U2は同ツアー収入を主としてアイルランドに登 録している法人を通じて集め、税額を少なくする仕組みを取っている。

1980年代と90年代にアイルランドでのU2コンサート開催も手掛けた音楽 プロモーターのジム・アイケン氏は「U2は資本家の最たる存在なのに、そう は見えない」と語る。

「バーティゴ」ツアー関連のアルバム「ハウ・トゥ・ディスマントル・ア ン・アトミック・ボム」は約900万枚売れ、1枚30ドルのTシャツなど関連グ ッズ販売も好調だった。

アフリカ支援と投資活動

サングラスにカウボーイハットがトレードマークのボノは、アフリカ支援 をブッシュ米大統領はじめ各国首脳に訴えることに関しては音楽活動と同じぐ らい有名。欧米のマスコミではノーベル平和賞候補と目されたほか、昨年12月 には英国から名誉ナイトの爵位が授与された。26日には、スイスのダボスで開 催の世界経済フォーラム年次総会でブレア英首相や南アフリカのムベキ大統領 に混じってアフリカ支援に関するパネル討論会に参加する。

ダブリンに生まれ現在46歳のボノ(本名:ポール・ヒューソン)は投資活 動も行っている。同氏はこの記事に関してインタビューには応じなかった。ボ ノはインタビュー本「Bono on Bono(邦題ボノ・インタビューズ)」で、理想 を現実化するために事業を始めることについて触れている。最近の事例には慈 善事業「RED」があり、同マークの付いた衣類や携帯電話などの販売利益の 4割をアフリカのエイズウイルス(HIV)感染者への治療薬購入に充ててい る。

ただ、国際的なロビー集団タックス・ジャスティス・ネットワークの顧問、 リチャード・マーフィー氏は、ボノが実際にやっていることは同氏が求めてい る利他的な理想に必ずしも沿っていないと指摘し、06年6月にU2が音楽出版 会社の拠点をアイルランドからオランダへ節税目的で移転したことを挙げた。 その半年後、アイルランドはミュージシャンの印税収入に対する免税を廃止し た。オランダでは概ね税金はかからない。

マーフィー氏は「法外な金持ちが税負担を他人に移しながら、世界各国の 政府には自分が望むようなやり方で税金を使ってほしいと頼んでいる」と話す。

オランダで芸術家や音楽家に法務コンサルティングを行っているオール・ アーツ・タックス・アドバイザーズのシニアパートナー、ディック・モレナー 氏も同国への移転は誤りだと指摘、「誰でも自国政府に対して公正な額の税金 を支払う必要がある。それで道路や教育などすべてがまかなわれる」と語る。

U2のマネジャー、ポール・マクギネス氏は「われわれは世界中でかなり の税金を支払っており、アイルランドでは必要以上の支払いは行わない。どん なビジネスでもそうだろう」と述べた。ボノもインタビュー本でU2は抜け目 なく事業を行っているとし、「一日中、世界平和を考えてぼんやりしているわ けではない」と語っている。

かくして、ボノの事業は不動産、未公開株投資、ホテル、レストランなど 多岐にわたっている。妻と4人の子供を家族に抱える同氏は3軒の自宅も所有。 1件は南仏ニースにあり、もう1件はニューヨークのセントラルパークを見晴 らすマンションで米アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO) から購入。ダブリン近郊の自宅からは海が見渡せる。