リスクを甘く見るな-ダボス会議でサマーズ元米財務長官らが警告へ

ローレンス・サマーズ元米財務長官は今週 スイスのダボスで開催される「世界経済フォーラム」(通称「ダボス会議」)で ここ1年のリターン(投資収益率)向上や過去最高のボーナスに沸く投資家ら に対しメッセージがある--「1914年の夏の初め、市場は非常に活気に包まれて いたことを覚えておいて損はない。」

サマーズ元財務長官は再び世界大戦が起きると予想しているのではないが、 同氏も欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁も37回目となる今回のダボス会 議では貿易不均衡からテロに至るさまざまなリスクを甘く見ているとして、 2200人以上の参加者に警告を発する見通しだ。

低金利やこの30年で最高となる世界経済成長率を背景に、銀行や未公開株 投資企業、ヘッジファンドはこの好ましい時代が続くことを見込んでいる。

デリバティブ(金融派生商品)の危険性について講演を予定するチリ中央 銀行のコルボ総裁は「話がうまく行き過ぎている。明日には雰囲気が変わるか もしれない。それに備える必要がある」と語る。

ダボス会議にはブレア英首相や08年米大統領選候補でもあるジョン・マケ イン上院議員(共和、アリゾナ州)、シティグループのチャールズ・プリンス最 高経営責任者(CEO)らが参加する公算だが、自己満足に対する警告は1年 前にも聞かれた。当時はサマーズ元長官のほか、投資家ジョージ・ソロス氏や ウェーバー独連銀総裁が貿易不均衡、財政赤字やそのころに急騰していた原油 相場がもたらす結末の可能性について語っていた。

警告後もリターン改善

以来、投資リターンは一層良くなった。ロンドンの最高級住宅の価格は昨 年29%も上昇、5大米投資会社のボーナスは30%増の360億ドルとなり、ダウ 工業株30種平均は過去最高値を更新した。

ドイツ銀行のヨセフ・アッカーマン最高経営責任者(CEO)は16日、イ ンタビューに応じ、「すべてに冷や水を浴びせるべきではない」と語った。「国 際的に投資銀行業務を展開するわれわれ8社か9社には非常に良い未来が広が っている」と述べた。

金融機関は十分な流動性を利用しており、投資家のリスクを取る意欲もか つてないほどに高まっている。JPモルガン・チェースによれば、投資家が求 める新興市場債と米国債の利回り格差は17日に過去最低に縮小した。株式市場 のボラティリティ(変動性)を測るシカゴオプション取引所のVIX指数は株 価が下落するとの懸念が13年ぶり低水準にあることを示している。

ECBのトリシェ総裁は11日の会見で、「われわれは引き続き、リスクに 対する理解が低いとみており、この状況に無秩序な巻き戻しが起きればわれわ れが十分に認識する必要のあるリスクにつながる」と述べている。

リスクとしては原油価格が再び急騰することが挙げられる。著名投資家、 ジム・ロジャーズ氏は原油相場が1バレル当たり100ドルを突破する公算が高 いとみており、これは現水準のほぼ倍だ。また、利上げが熱狂的な相場を崩す 恐れもある。イングランド銀行は今月、市場予想に反して政策金利を0.25ポイ ント引き上げ、ECBは利上げ局面にある。

歴史は繰り返すのか

一部の投資家は既に痛い目に遭っている。ベネズエラのカラカス証券取引 所の指数は過去3週間で時価総額が25%以上吹き飛んだ。チャベス大統領が産 業の国営化を公約したためだ。また、米国の景気減速で需要が減るとの懸念な どから銅やそのほかの商品価格もかなり下げた。

サマーズ元米財務長官は英紙フィナンシャル・タイムズへの寄稿などで、 「金融の歴史では大きな流動性の問題は常に多大な自信の期間の後にやってく る」と語り、オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子フランツ・フェルディナ ントがサラエボで暗殺された半年後にダウ工業株30種平均の時価総額が3分の 1失われたことを指摘する。同元長官によれば、「自己満足は自己否定の予言に なり得るものだ」という。