日銀会合:賛成6、反対3で利上げ見送り-揺らぐ日銀の信認(2)

(第2段落に反対3票について、最終段落以降に会合の予定等を追加します)

【記者:日高正裕】

1月18日(ブルームバーグ):日本銀行は18日午後、同日開いた金融政策 決定会合で、無担保コール翌日物金利の誘導目標を「0.25%前後で推移するよ う促す」とした金融調節方針を6対3の賛成多数で決定した。政治圧力で利上げ を見送ったとの見方も強く、市場の日銀に対する信頼が揺らいでいる。今後の金 融政策運営を見極めるうえでも、福井俊彦総裁の会見に注目が集まっている。

日銀は無担保コール翌日物金利の誘導目標の現状維持とともに、補完貸付 金利は「0.4%」、長期国債の買入額は「月1兆2000億円」に据え置いた。同 日午後3時に金融経済月報を公表し、3時半に福井総裁が会見を行う。反対が3 票出たのは、昨年7月にゼロ金利を解除した際、補完貸付金利の0.4%への引き 上げに対し、須田美矢子、水野温氏、野田忠男の各審議委員が「引き上げ幅が小 さすぎる」として反対して以来。

日銀は金融経済月報で、昨年10月の経済・物価情勢の展望(展望リポー ト)の中間評価を明らかにする。日銀の早川英男調査統計局長は10日の討論会 で「世界経済が成長を続ける中、輸出が増え、生産が増え、企業収益が増え、雇 用、賃金を通じて緩やかに家計部門に波及していくメカニズムに変化はない」と 述べており、中間評価でもこうした見方が反映される可能性が高い。

コアCPIが最大の障害に

それにもかかわらず、日銀が利上げに踏み切れなかった最大の理由は、消 費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の低迷だ。昨年11月のコアCPI 前年比上昇率はプラス0.2%と、10月(プラス0.1%)から小幅だが伸び率を 高めた。しかし、原油相場次第では今後、「一時的にせよゼロ、ないしマイナス になる可能性も否定できない」(大和総研の田谷禎三特別理事)。

もう一月待てば、12月のコアCPIと10-12月国内総生産(GDP)が 公表される。岩田一政副総裁らが注目する石油製品を除く「実力のコアCPI」 は、マイナス0.1%と水面まであとわずか。12月分は水面に浮上する可能性も あり、そうなれば2月の利上げを後押しする。一方、12月のコアCPIはプラ ス0.1%に逆戻りするリスクもあり、そうなると利上げはまた遠のく。

10-12月のGDPベースの個人消費は、大きく落ち込んだ7-9月の反動 もあり「結構大きな増加になる可能性が高い」(早川局長)。このため「GDP を待って利上げを考えるのではないか」(大和総研の田谷氏)という声もある。 一方、バークレイズ・キャピタル証券の小林益久チーフ債券ストラテジストは 「GDPは1カ月後に発表される2次速報値で数字が振れる場合もある。GDP を金融政策の決め手にすると、利上げ時期がどんどん後ずれする」と指摘する。

政治圧力に屈したとの声も

日銀が利上げを見送った理由として、政治圧力の存在を指摘する声も多い。 日銀は公式、非公式を問わず、決定会合の2営業日前から金融政策について対外 的な情報発信を控えるブラックアウト期間を設けている。ブラックアウトに入る 直前の前週末にかけて、通信社や新聞社の「利上げ公算」報道が相次ぎ、週明け 15日時点では、ブルームバーグ・ニュースがエコノミストを対象に行った調査 で6割強が1月の利上げを予想していた。

クレディ・スイス・グループが公表する市場の利上げ織り込み度合いも16 日には80%に達していた。それが同日夜から17日にかけて行われた一連の「利 上げ見送り公算」報道で、利上げ織り込み度合いは一気に30%まで低下した。 既にブラックアウト期間中に入っていたこともあり、「政府サイドからの情報」 (ドイツ証券の森田長太郎チーフ債券ストラテジスト)とみられている。

「その間に起こった唯一の主要『イベント』は、われわれの目に映る限り 『政府・自民党からの激しいけん制』しかない」(野村証券の松沢中チーフスト ラテジスト)だけに、「政治的な圧力に屈したというイメージはぬぐえず、(今 後)政治も含めた誰もが認める景気、物価環境というハードルができる」(リー マン・ブラザーズ証券の山下周チーフJGBストラテジスト)との声もある。

福井総裁のレームダック化も

山下氏は「福井総裁がレームダック化しているのではという懸念」も示す。 「これまで、政府や市場に対して先手を打ってきた福井総裁が、日銀内で意見集 約ができなくなっているという印象はぬぐえない」という。UBS証券の道家映 二チーフストラテジストも「日銀内では来年3月の『ポスト福井』をにらんだ動 きが始まっているとみられ、福井総裁の『レームダック』が進む可能性がある」 と指摘する。

ドイツ証券の森田氏は「日銀の独立性についての疑念は、市場において長 期間にわたって払しょくされることはないだろう」と指摘する。森田氏はそのう えで、「福井総裁が(同日の会見で)2月の利上げをよほど強く示唆しない限り、 市場は『利上げは選挙後の7月以降にずれ込む』との思惑を徐々に強める可能性 もある」としている。

今後の金融政策決定会合の予定

決定会合の開催時間は17日が午後2時-午後4時1分、18日が午前9時 -午後1時1分。出席者は日銀政策委員9人と、17日が勝栄二郎財務省大臣官 房総括審議官、浜野潤内閣府審議官、18日が田中和徳財務副大臣、浜野潤内閣 府審議官。議事要旨は2月26日に公表される。

次回以降の金融政策決定会合、総裁会見などの日程は以下の通り。

会合開催 総裁会見 金融経済月報(基本的見解) 議事要旨公表 2月20、21日 2月21日 同左 3月26日 3月19、20日 3月20日 同左 5月7日 4月9、10日 4月10日 同左 5月22日 4月27日 4月27日 ― 6月20日 5月16、17日 5月17日 同左 6月20日 6月14、15日 6月15日 同左 未定