【経済コラム】上海銀行間金利、慎重ながら重要な前進-W・ペセック

中国が経済開放に真剣に取り組んでいる状 況を確認したいポールソン米財務長官にとって、先週の上海銀行間取引金利(S hibor)の導入は朗報だったことだろう。

Shiborはいわば、国際的に普及しているロンドン銀行間取引金利(L ibor)の中国版。派手さはないが、市場関係者の間で行き交う「Shib or」という言葉は、ポールソン長官の耳にも心地よく響いているはずだ。

ポールソン長官は、人民元の対ドル相場をまず上昇させた上で変動相場制 に移行させるよう求めている。こうした要請に対し中国は、主要輸出産業への 痛手を恐れて慎重な姿勢を示しているが、Shiborの導入が同国の国際的 な金融システムの構築に向けた重要なステップであることに変わりはない。

スタンダード・チャータード銀行(上海)のエコノミスト、スティーブン・ グリーン氏は「市場主導型の参考金利の採用は、中国の短期金融市場を改善さ せる上で重要なステップだ」と指摘。Shiborの導入は「慎重ながら重要 な前進」の新たな例だと語る。

Shiborはやがて、デリバティブ(金融派生商品)取引を促し、新た な金融商品を誕生させることになる。中国人民銀行が政策方針を伝達する能力 が高まる効果も期待できそうだ。

重要なのは後者だろう。アナリストの間には、中国の景気が昨年鈍化しな かった理由として、人民銀の説得力の欠如を挙げる声が多い。実際のところ、 さらに欠如していたのは政策運営能力だった。

本格的な資本市場

米国や欧州では、景気が過熱気味になると、中央銀行が短期金利の高め誘 導に動く。このため中銀がその後、様子見姿勢をとったとしても、債券トレー ダーたちが金融引き締めの役割を果たしてくれることになるわけだ。成熟した 債券市場がない中国では、こうした現象は見られない。Shiborのような 短期基準金利は今後、流動性に関する有効な情報を提供することだろう。

そうなれば人民銀の政策の効果は拡大する。これまでより積極的な利上げ が必要になるかもしれない今年なら、その傾向はより強まるだろう。厚みのあ る債券流通市場の礎が築かれることになる。中国政府の経済運営や企業の資金 調達にとって欠かせない環境だ。

長い道のり

それでも今後の道のりは長い。Shiborは市中銀行16行が提示した金 利を基にした平均値にすぎない。期間は翌日物から1年物までだ。直ちにLi borに取って代わるような存在にはならないだろう。

しかし専門家が指摘するように、中国経済がやがて米国や日本、欧州と肩 を並べるようになれば、中国市場の注目度や影響力は一段と高まる。Shib orが中国のほかの市場指標と並んで国際的な役割を果たす日が訪れても不思 議はない。

ただそれがそのまま、社会主義色の濃い銀行システムや、国際標準に比べ 高リスクな株式市場といった中国の課題の解消につながることは決してない。

小さなステップ

中国政府はほかにも、貧困や環境、情報検閲の問題に直面している。これ に北朝鮮や台湾との地政学的問題が加えれば、同国が抱える課題の多さを十分 に認識できることだろう。

とはいえ真の前進は、小さなステップの積み重ねになることが多い。中国 が長期的な安定を脅かすことなく経済開放を加速する動きは、どんなものでも 歓迎すべきだ。これは、ポールソン長官にとっても、ヘッジファンドの運用責 任者にとっても、中国の急成長の恩恵を受けたいと考えている一般的な中国の 労働者にとっても同じだ。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニスト です。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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