【経済コラム】金融界の巨額ボーナス、英国で議論呼ぶ-M・リン

クリスマスから新年にかけて、ロンドンの金 融街シティーでは、気前のよいボーナスの話題で持ちきりだった。米ゴールド マン・サックス・グループやスイスのUBSなどの金融機関が投資銀行部門の 社員にいくら支払うのか、どうやってボーナスを使うのかが話題の中心だが、 より興味深い会話も交わされ始めた。こうした巨額の報酬は正当化できるのか、 シティーからあふれ出る富は、ほかの社会にどういう影響を及ぼすのかという ことだ。

シティー地区の市長、いわゆるロード・メーヤー、ジョン・スタッタード 氏は電話取材に対し、「巨額のボーナスに納得し難いという人々もいる」と話す。 ピーター・セルビー・ウースター大司教は英BBC放送とのインタビューで、 シティーの金融界が支払うボーナスが「屈辱的」で、「不公平」だと表現した。

英労働組合会議(TUC)のブレンダン・バーバー書記長は、「シティー地 区のボーナスを英国の労働者で均等に分けることができれば、誰もが350ポン ド(約8万1500円)強のクリスマスの一時金を受け取ることができるだろう」 と述べる。同書記長ら金融界の巨額報酬に批判的な向きは、「道徳面での問題も ある。他の社会とかけ離れた金持ち族の増大を懸念すべきではないだろうか」 との認識だ。

金融業界が徐々にほかの社会と異なる惑星に移り住み始めているようだと いう感触には誰も異論はない。ゴールドマンのロイド・ブランクフェイン最高 経営責任者(CEO)へは現金や株式などでボーナスとして5340万ドル(約63 億7700万円)が支払われた。

米5大証券会社

ゴールドマンとモルガン・スタンレー、メリルリンチ、リーマン・ブラザ ーズ、ベアー・スターンズの米5大証券会社が昨年支払ったボーナスは総額で 360億ドル前後に達する。その大半は世界の金融の2大中心地、ロンドンとニュ ーヨークでのものだ。英センター・フォー・エコノミクス・アンド・ビジネス・ リサーチによれば、ロンドンの銀行員が06年に受け取ったボーナスは過去最高 の88億ポンドとなった。

ロード・メーヤーのスタッタード氏は、「一部の人にとっては、この金額が 信じられないことかもしれないし、それについては理解している。だが、サッ カー選手やポップ歌手への報酬も、最低賃金ラインにいる人々にとっては信じ られないものだろう」と語った上で、「ロンドンは世界市場の中でその営みを続 けており、多くの人々はニューヨークや香港にも容易に移れる。こうした人々 を抱えることは英国にとって非常に大きな利点だ」と説明する。

ウースター大司教ほどの辛らつさは多くの人には見受けられないが、それ が金融界の巨額ボーナスへの反感が全くないことを意味するわけではない。ロ ンドン経済にとっての金融界の重要さを強調すれば、一般的な人々が貧しくな ったように感じてしまうのも事実だ。

開かれた雇用市場

ただ、金融界のボーナスにとって幾つか指摘すべきこともある。シティー は、世界で最も開かれた雇用市場であり、マフィアもいない。聡明であり、懸 命に働くことをいとわなければ、誰もが巨額のボーナスを手にすることが可能 だ。誰にでも開かれている報酬制度を不道徳と断定することは難しい。

次に留意すべきは、シティーでの巨額報酬の支払いは誰にも強要されたも のではないということだ。世界の資本を呼び込むやり方をいかに見いだすか次 第で富が増えたり減ったりし、投資家がロンドンで投資や資金調達をやめれば、 こうした巨額ボーナスはすぐに消え失せてしまうだろう。

最後に言及すべきは、金融界の巨額報酬は不動産などのさまざまな市場を 通じ、異なった経路を通過しているということだ。イングランド南東部は、シ ティーに流れ込む津波のような資金で浮かんでいる。シティーの投資銀行家の 1人として巨額のボーナスを獲得した場合でも、その多くを税金として英政府 に収めることを回避するのは難しい。

シティーの巨額ボーナスを屈辱的と見なすことは間違いだ。とは言うもの の、金融界は他の世界とどう付き合っていくか考える必要がある。ロンドンの 銀行の生き残りを必要としている国の一角にシティーがあることを心にとどめ ておかなければならない。いずれかの時点でシティーは、その報酬を調整する ことになるかもしれない。さもなければ、より大きな反発に直面する恐れもあ る。(マシュー・リン)

(マシュー・リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。この コラムの内容は同氏自身の見解です)

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