【経済コラム】007年を占うヒントはボンドカーと農業-M・リン

前途多難な1年に備えて、投資家はシー トベルトをしっかりと締めておくべきだ。株価は暴落し、不動産市場は崩壊。 金をただ同然で売ることもできなくなる。そんななかで唯一の安息の地が債券 市場だろう。そう、007年はボンド(債券)の年だ。

さあ、今年最悪のジョークを出したところで、今度は2007年に起こりう るいくつかの出来事を以下に列挙してみたい。

1番目は、農業経営が裕福になるための素晴らしい方法になることだ。原 油高騰で、エタノールなどの代替エネルギーに対する関心が急速に高まってい る。ただ、トウモロコシなどの穀物からの燃料生産には、広大な畑を掘り起こ す必要がある。JPモルガン・チェースはすでに、トウモロコシを07年の最 高の投資先の一つに挙げている。ヘッジファンドの運用担当者が、ウクライナ で100万エーカー(約405アール)の土地をどうやって素早く買い上げたのか を自慢するのをバーで耳にするかもしれない。

2つ目は、フランス大統領選挙でセゴレーヌ・ロワイヤル元環境相が勝利 することだ。深刻な経済危機でもない限り、大方の選挙は、希望や楽観が勝利 を決めるものだ。軽量級の野党社会党候補、ロワイヤル氏は接戦を制して、フ ランス初の女性大統領となるだろう。

問題は、経験が浅く独自の政策のないロワイヤル氏が、周辺にいる熱烈な 社会主義者たちによって左寄りに傾斜することだ。経済的には大打撃が予想さ れる。危機に陥れば、フランスは必要とされる抜本的改革の受け入れを余儀な くされよう。また、ロワイヤル氏は難局を避けるためイタリアと組んでユーロ から離脱する方が容易だと考えるかもしれない。

ユーロ売り

3つ目は、欧州中央銀行(ECB)によるユーロ売りだ。ECBはユーロ 高をさほど懸念していないと言い続けているが、誰がそれを信じるだろうか。 行き過ぎたユーロ高は、フランスやイタリアの輸出業者に打撃を与え、ユーロ 圏諸国内にあつれきを生じさせる。1ユーロ=1.40ドルに達すれば、ECB はユーロ売りに踏み切るだろう。金融市場には懐疑論があるものの、こうした 行動は驚くほど成功する。そのころまでには、ドルが過小評価されていること を誰もが認識し、そしてドルの緩やかな復活に向けた転換点になるだろう。

4つ目は、ニューヨークの復調だ。ロンドンはこの1年で世界の金融セン ターとしてニューヨークに追いついただけでなく、ニューヨークを追い越した ことを見せ付けた。「しまった、英国人にしてやられた」と米国人は言うかも しれないが、実際はそうではない。ニューヨークは世界で最も競争の激しい国 にある最も競争の激しい場所だ。何かがおかしいと気づけば、すぐに直される。 サーベンス・オクスレー法(米企業改革法)は外国企業に米市場上場を思いと どまらせると批判されているが、大規模な規制見直しの中で緩和措置が講じら れると予想される。世界の富を引き付ける税制上のインセンティブが出てきて も驚きではない。ロンドンは、ナンバーワンの地位にしがみつきたいなら、懸 命な努力が必要だろう。

5つ目は、英製薬大手アストラゼネカが買収案を受け入れることだ。製薬 業界に対する風当たりはかつてないほど強い。新薬開発に苦戦する資金の潤沢 な大企業にとって、買収ほど手っ取り早い問題解決策はない。製薬業界ではア ストラゼネカは、十分な買収効果が得られ、消化吸収できないほど大きくはな いちょうどいい規模の企業だ。アストラゼネカ自身の製品開発にも問題がある だけに、同業大手が攻撃を仕掛けるには完璧なタイミングだ。それに、アスト ラゼネカの株主は気前のいい買収案なら拒否しない雰囲気だ。

ボンドカー

6つ目は、ヘッジファンドによるアストンマーティン買収だ。米フォー ド・モーターはすでに世界一の高級車アストンマーティン部門を売りに出して いる。有り余る資金を抱えるヘッジファンドは興味深い企業を相次ぎ買収して いる。ロンドンのRABキャピタルは、自動車レースのA1グランプリの事業 の経営権を取得した。ロンドンの裕福なヘッジファンド関係者は、ピカピカの アストンの新車でドライブするのが大好きだ。それを製造する会社を所有すれ ば、ほかでそれよりもいいシナジー効果を探すことはできないはずだ。

7つ目は、ブラウン英財務相が首相に就任して指導力の危機に直面するこ とだ。07年にブラウン氏が首相職を引き継ぐと予測するのは容易過ぎる。ブ レア英首相はすでに、来年の引退を表明しており、ブラウン氏は後継候補のな かでダントツだ。ただ、魅力に乏しく不器用なブラウン氏が就任すれば災難だ ろう。ブラウン氏は年末までには、失速して多額の債務を抱えた英経済や、イ ラクとアフガニスタンでの戦争のかじ取りを強いられる。地元のスコットラン ドでは英国からの独立論議が高まるだろう。議会後方席に座るブレア首相のク ローンのような議員たちは、反抗的になる。ブラウン氏が労働党を確実に敗北 に導くとの見方が浮上し、ブラウン氏に対抗して指導者を狙う動きが出てくる。

8つ目は、ロンドン証券取引所(LSE)が生き延びて戦うことだ。L SEは大切な資産であり、引き続き買収提案を受けるだろう。ただ、米店頭株 式市場運営のナスダック・ストック・マーケット(NSM)による27億ポン ド(約6278億円)の買収案が棚上げされているのとまさに同じ理由から、買 収提案は失敗し続けるだろう。株主はビジネスの価値を見いだし、自分の手元 に保持した方がよさそうだと判断するはずだ。来年のクリスマスにロンドンの トラファルガー広場に雪が降る確率の方が、LSEが売却されている確率より も高いのではないだろうか。(マシュー・リン)

(マシュー・リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。この コラムの内容は同氏自身の見解です)

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