日本の経営スタイル欧米型に、株式価値や安定上昇-斉藤再生機構社長

来年春解散のメドがたった産業再生機構の 斉藤惇社長は、ブルームバーグ・ニュースのインタビューに応じ、再生機構の 発足以降、日本の経営スタイルが企業価値の向上を目指す欧米型に近づいてき たとしたうえで、日本の株価価値は安定的に上昇するとの見方を示した。その うえで企業再生は民間の再生ファンドが十分担えると述べ、再生機構の役割は 終わったとの見方を示した。インタビューは21日に行った。

再生機構は26日、支援案件41件のうち残る1件のスカイネットアジア航 空のスポンサーを決定し、来年2月までに保有する株式を公開買い付け(TO B)に応募する形で譲渡する方針を発表。事実上、企業再生の役割を終えた。 これを受け、法律上の規定を1年前倒しし、来年春の解散が確実となった。

民間ファンドが機構の役割担える

再生機構が発足したのは2003年4月。多額の不良債権を抱えていた金融機 関と貸出先の企業の一体再生を目指す「金融再生プログラム」の一環だった。 その後の経済の流れについて斉藤氏は「この1、2年で増配したり、資本に対 する配当をターゲットに経営したり。企業経営者の感覚が変わってきており、 それが今日の株価上昇の原因になっている。企業価値を数字でターゲットを置 いて上げていく経営を目指す方々がリーダーになりはじめた」と振り返る。

斉藤氏は「米国では企業価値をどう上げるかという発想をベースに経営が 行われてきたため、市場の効率性が非常に高かった。再生機構だけでなく、投 資ファンドなどもかなりの勢いで欧米型の経営スタイルを導入してきた」と両 者の相乗効果を指摘。民間ファンドが再生機構の役割を「十分担える」と強調 した。

斉藤氏が挙げた好例は武田薬品工業。今年5月以降に取得した自己株式を 活用することで欧州市場でM&A(企業買収)を展開し、同市場でのシェアを 高める攻めの戦略へとシフトしている。1兆円を超える豊富な資金を元手にし たM&Aと株主への利益配分の拡大の期待感から株価は高値で推移している。

そのうえで「日本の経営はようやく世界の流れにのった。日本の株式価値 は比較的安定的に上昇するのではないか。三角合併に反対の経営者もいるが、 賢い経営者はすでに株を使ったM&Aで攻めにいっている。日本の株式、金融 市場はすでにわれわれがこうあるべきと思った市場にずっと近づいている」と する。

人材育成の成果

再生機構は人材育成の場でもあった。弁護士や公認会計士などあらゆる分 野から集まった職員は約220人。今やその半数以上が民間に戻り新たなステッ プを踏み出した。さらに、機構に関わった法律事務所や監査法人、不動産鑑定 やビジネスコンサルタントなど関係者を推計すれば延べ1000人にのぼる。

斉藤氏は「破産法などの分野だけでこられた弁護士が、再生機構ではビジ ネスモデルや財務構成について同じテーブルで論じ合う。逆に公認会計士が法 律やビジネスも交えた視点でバランスシートを見る。現実に、民間に戻られた が、物足りなくて会社をつくった人も何人か出てきた」という。

「弁護士や公認会計士が企業再生の会社やファンドをつくったり、企業の 社長になったりする時代がもうきている」と斉藤氏はみる。事実、米国では経 営者の多くは弁護士や公認会計士。斉藤氏は「国際競争の時代。日本も正々堂々 と社会の知的レベルを上げ、海外に飛び出すトヨタ自動車のような強い企業に なってもらいたいと、支援企業を再生した」と成果を強調する。

内部統制のエキスパートに

日本の企業体質が変ぼうを遂げる中で、次なる課題として挙げるのはコー ポレートガバナンス(企業統治)や内部統制の見直しだ。斉藤氏は「これまで の経営はR&D(研究開発)に資金や人材を投入するなどして会社を大きくし てきた。1つの開発で失敗しても会社はあまりダメージを受けないが、これか らは間違った経営をやると訴訟問題になり、会社は潰れる」と警告する。

米国では総合的なエネルギー取引を行っていたエンロンが巨額の不正経理 や不正取引が明るみに出たために破たんした。これらの事件を受け、米国では 企業会計や財務報告の透明性を高めるために、コーポレートガバナンスと監査 制度を抜本的に改革し、企業経営者の責任と義務・罰則を明確に規定したサー ベンス・オクスリー(SOX)法を2002年7月に制定した。

これに倣った日本版企業改革(J-SOX)法が2009年3月期から導入さ れる。斉藤氏は「厳しい米国のSOX法に十分対応している会社は他と比べ大 きな格差をつけている。厳しいウオッチの中で耐えた会社は質が上がる。日本 の経営も今からここへ人材や資金を投入してかなければならない」と指摘する。

そのうえで、斉藤氏は「再生機構で鍛えられた人達はビジネスモデルだけ でなはい。内部統制的感覚、つまり財務を通じて経営の真実をしっかりつかみ、 実態的なバランスシートをつかむ能力を持っている。そういう分野で機構の経 験を生かしてほしい」と述べ、内部統制のエキスパートとしての活躍に期待を かけた。

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