タイ軍部主導の暫定政権、市場に敗北喫す-外為新規制を一部解除

タイ軍部が無血クーデターでタクシン首相 (当時)を退陣に追いやってから3カ月。暫定政権は株式市場を相手にし、敗 北を喫した。

同国中央銀行のタリサ総裁は18日、バーツ高を抑制し輸出産業を支援する 目的で、海外から国内金融機関に流入した資金の30%を1年間凍結させる措置 を発表。しかし、これに投資家が反発。その翌日の19日、同総裁の前任者でも あるプリディヤトーン財務相は、株式市場への投資資金についてはこの新規制 の適用対象外にすると発表した。

この間の27時間で、タイの株式市場ではSET指数が16年ぶり最大の下 げを記録、時価総額にして230億ドル(約2兆7170億円)が吹き飛んだ。軍部、 暫定政権、中銀への信頼がどれほど傷付いたのかはまだ分からない。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの為替ストラテジー世界責任者、マーク・ チャンドラー氏(ニューヨーク在勤)は、この展開について、「タイの軍事政権 と中央銀行は市場が分かっていないとの一部の見方を裏付けるだろう」と語る。

タイの株式急落はアジアのほかの国々や欧州市場にも影響を与え、インド のセンセックス30種指数は19日、前日比2.5%下落、マレーシアのクアラルン プール総合指数は2%、インドネシアのジャカルタ総合指数は2.9%それぞれ下 げた。新興市場ではロシアやチェコの株式相場も下げ、中南米ではペルーの主 要株価指数が2.3%下落した。

新規制の内容

タイ中銀が18日発表した外為取引の新規制では、海外から流入する投資資 金の70%を国内の株式、債券、不動産投資に回してもよいが、残る30%は国内 金融機関に据え置き、投資家が全額を引き出し外貨交換する場合にはその33% に制裁金を科すという内容だった。

この規制は、年初来で16%も上昇したバーツ高抑制を意図していた。無血 クーデターを好感した海外からの資金が短期的に株式や債券市場に流れ込み、 バーツの対ドル相場を押し上げていたからだ。輸出企業の一部からはバーツ高 抑制策を求める声が上がっていた。

しかし、19日の株式市場取引終了から4時間後、SET指数の約15%の下 落を受け、プリディヤトーン財務相は株式投資資金に対する規制は解除すると 発表するに至る。ただ、債券や不動産に対する投資資金は規制の対象のまま残 した。

同相は記者団に対し、「株式相場の下落はあまりにも大きかった。これは中 央銀行による政策の副作用だが、われわれはこれを修正した」と述べた。

相場急落という市場の反応を受け、政府は修正するしかなかったと投資家 はみる。ベアー・スターンズ・アジアのシニア・マネジングディレクター、マ イケル・カーツ氏(香港在勤)は、「この政策転換の驚くべきスピードと対応は、 タイ中央銀行の信用を深く長期にわたって傷付けることを防ぐだろう」と指摘 した。