自動車から携帯電話まで積み上がった在庫の調整、世界景気に悪影響か

ジャスト・イン・タイム方式でも、世界中の 企業で在庫が積み上がる事態が発生している。

ピックアップトラックの「ダッジ・ラム」から三洋電機の携帯電話まで、 幅広い製品が売れ残り、在庫として世界中に積み上がっている。この在庫一掃 に向けた減産が、世界経済の足を引っ張る可能性がある。

スイスの銀行UBSのロンドン在勤エコノミストらによれば、世界中の工 場で7-9月期に増えた在庫ペースは売り上げを2001年以来で初めて上回った。 この背景には予想外の需要鈍化、特に年央のエネルギー価格急騰と住宅市場の 減速がもたらした米国での鈍化がある。

ドイツ銀行傘下ドイチェ・バンク・セキュリティーズの米国担当チーフエ コノミスト、ジョゼフ・ラボーニャ氏(ニューヨーク在勤)は、在庫減らしは 痛みを伴うと指摘。「企業が在庫一掃ペースを速めれば、それだけ経済への影響 も大きくなる。経済全体に波及し、雇用や個人消費に響くだろう」と述べた。

鉄鋼世界最大手、オランダのアルセロール・ミタルからサンフランシスコ を拠点とする米小売りのウィリアムズ・ソノマ、ドイツの玩具メーカー、ツァプ フ・クリエーションに至る幅広い業種で減産が行われている。危険なのはこの 在庫削減が、雇用や投資の伸び鈍化からさらなる需要減少へつながり始めるこ とだ。ゴールドマン・サックス・グループのジャン・ハッチウス、ドイチェ・ バンク・セキュリティーズのピーター・フーパー両チーフエコノミストらは既 に、景気見通しを下方修正している。

主要中銀は懸念せず

ただ、主要各国の中央銀行総裁はこのような景気減速懸念を共有してはお らず、減産は調整にすぎないと主張し、過剰供給への対応が終われば、企業は 再び増産に動くとの見方を示している。

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は11月28日にニューヨ ークで行った講演で、住宅市場の減速や自動車減産はそれほど景気に響かず、 米国の経済成長は来年強まるとの認識を示した。日本銀行の福井俊彦総裁も同 月17日に、メルボルンで記者団に対し、日本での電子部品・デバイスの在庫増 加は「一過性のもの」であり、金融政策の判断に「直結する話ではない」と述 べた。また、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は今週、追加利上げを実 施する意向を示している。

「ジャスト・イン・タイム」方式の採用で、企業は過去15年間にわたって 在庫縮小に成功してきた。それでも、経済成長や需要が突然鈍化した場合、在 庫積み上がりを完全に削減することはできないと、グローバル・インサイトの チーフエコノミスト、ナリマン・ベーラベシュ氏は指摘する。

実際、2000年半ばに輸出や資本財支出の勢いが予想外になくなり、メーカ ー各社で在庫がかさむと、その9カ月後の2001年3月には、経済はリセッショ ン(景気の後退期)に入った。

企業を不意打ち

今回は米国の住宅産業の予想を上回る落ち込みや年央のエネルギー価格が 驚くほど急騰したことを受けて、需要が減少、企業は不意打ちを食わされた格 好だ。そのため、問題は米国で最も深刻なようだ。今年7-9月期の経済成長 率は年率2.2%と、4-6月期の2.6%や1-3月期の5.6%を下回った。また、 米供給管理協会(ISM)が1日発表した11月の製造業景況指数は約3年ぶり に景気の拡大と縮小の境目となる50を割り込んだ。

HVBアメリカのシニア経済アドバイザー、ロジャー・クバリッヒ氏は、 在庫一掃の景気への影響は来年いっぱい続く可能性を指摘する。

減産による雇用への影響は既に始まっており、在庫減らしの動きは米自動 車業界のみならず、アジアのハイテク企業、鉄鋼業界に広がっている。

JPモルガン・チェースのエコノミスト、マイケル・E・フェロリ氏は、「か なり広範な業種に影響が及んでいる。ジャスト・イン・タイム方式は必ずしも 万能な解決策ではない」と述べた。