榊原元財務官:利上げ、年内3-4割、ユーロは1.4ドル、160円も(3)

早稲田大学インド経済研究所所長で元財務 官の榊原英資氏は1日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、現在の 低金利は「極めて異常」で、日本銀行はできるだけ早く金利の正常化を進めるべ きだとの認識を示した。2007年1月までの利上げを予想し、年内の確率は「3 割から4割」と述べた。外国為替相場ではユーロ高・ドル安が当面続くと予想。 来年には1ユーロ=1.4ドル、160円、ドル・円は110円割れもあり得ると語っ た。

金融市場では、ゼロ金利政策を7月に約6年ぶりに解除した日銀による追加 利上げの時期に関心が集まっている。外国為替市場では、ユーロ圏の景気回復や 金利先高観測、外貨準備の多様化などを背景にユーロが上昇。4日には対ドルで 一時、1ユーロ=1.3367ドルと2005年3月以来の高値、対円でも1ユーロ=154 円18銭とユーロ導入来の最高値を記録した。ドル・円相場は1ドル=114円98 銭と、約4カ月ぶりのドル安・円高水準をつける場面があった。

「異常な」低金利、出来るだけ早く脱却を

榊原氏は、日銀が来年1月までに追加利上げすると予想。12月18、19日の 金融政策決定会合で決まる確率は「3割から4割」との見方を示した。

現在0.25%の政策金利は「極めて異常」とし、「ゼロとか0.25%というの は金融政策がないということ。ゼロ金利は金融危機の時の緊急避難措置であり、 今の日本の短期金利は当然、1%程度になっていなくてはいけない」との見解を 示した。今後の利上げは引き締めではなく、金融の正常化であり、「できるだけ 早くやったほうがいい」と強調した。

早期の利上げに対して経済協力開発機構(OECD)など海外からも慎重に すべきだとの意見があることに対しては、「外国の日本に対する認識が非常に間 違っている」と断じた。

日本経済は「いざなぎ景気」を超える戦後最長の拡大局面にあり、物価の上 昇ペースが鈍いのは、新興市場国の参入で世界的な競争が激化していることに加 え、雇用構造の急速な変化や価格引き下げ競争が激しい消費者向け市場といった 国内固有の要因も影響していると指摘。「日本経済の体質がいいから、物価が上 がらない。デフレを脱却していないから、利上げすべきではないというのは間違 いだ」と述べた。

企業行動に関しても、利上げは日本経済に悪影響を及ぼさず、「投資を縮小 させる要因になるとはとても思えない」と語った。

インフレターゲット論については「もう、過去の時代の議論だ」と述べた。

円キャリー、破裂すれば世界経済に影響

低金利の円を売って高い利回りが期待できる海外の資産に投資する円キャリ ートレードに関して、榊原氏は「異常な状況だ」との認識を示した。

日本の超低金利を背景に、ヘッジファンドなどに限らず「ヨーロッパでは住 宅ローンをキャリートレードでやっている例もある」と指摘。これがどこかで破 裂した時には、世界経済に様々な問題が起こる」との懸念を示した。

円キャリートレードを抑えるためにも、日銀が市場と対話しながら、「継続 的に上げる、3カ月に1回くらいは上げる」など、継続的な利上げ姿勢を見せる ことが重要だと語った。

地価などの資産価格については「今はまだバブルではない」としながらも、 資産価格の動向も「異常に低い金利を上げる時の1つの理屈としてはいいのでは ないか」と語った。

ユーロ高は来年にかけて続く

榊原氏は、外国為替市場でみられるユーロ高、ドル安、円安傾向は当面続く との見方を示した。ユーロ相場は今後数カ月間に1ユーロ=1.35ドル、160円に 上昇し、ドル相場は来年末までに1ユーロ=1.4ドル、1ドル=110円割れまで 下落する可能性があると述べた。

背景として、ユーロ圏経済の高成長と利上げ継続の観測、米国経済の減速と 来年の利下げ観測を受け、米欧間の成長率・金利格差が「欧州が米国を上回る形 で拡大する」ことを挙げた。米国の成長率は「来年央には1%台半ばくらい」に 減速する可能性があると予想した。

ユーロ高・ドル安をもたらすもう1つの要因として、榊原氏は外貨準備の多 様化を挙げた。アジアや中東、ロシアなどが「ユーロにシフトしている」と指摘。 こうした「ポートフォリオ・シフトは今後も続くと考えられる」と述べ、ユーロ はドルに対して「相当強くなると考えられる」との見通しを示した。

円高は限定的

イラクなど中東情勢の混迷などを背景とした「米国の政治力の低下」もあり、 榊原氏は「ドルが来年弱くなることは確実」としたが、超低金利の円に対しては それほど大幅には下落しない可能性があるとの見方を示した。

景気拡大でリスク許容度が高まった国内投資家による対外投資とドル安が相 殺されるとして、来年のドル安・円高は1ドル=110円割れ程度にとどまると見 通した。

人民元改革「正しい」、香港ドルが焦点に

中国当局による人民元改革に関しては、正しいスタンスで進めていると評価。 2005年に温家宝首相が掲げた3つの原則-「圧力には屈しない、制御可能な形 で、漸進的に進める」-は適切との認識を示した。人民元の対ドル相場が1ドル =7.8元台と香港ドルとほぼ等価に上昇したことを背景に、「次は香港をどうす るかだ」と語り、香港ドルの取り扱いが焦点になるとの見通しを示した。

榊原氏はブルームバーグ・ニュースの親会社ブルームバーグL.P.が設置 しているアジア環太平洋アドバイザリーボードのメンバー。

共同取材: Mike Firn Kosuke Goto -- Editor:Kosaka

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