11月月例報告:「消費に弱さみられるが回復」-23カ月ぶり判断下方修正

大田弘子経済財政政策担当相は22日夕、 11月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出した。報告は景気の現状について 「消費に弱さがみられるものの、回復している」とした。2004年12月以来1年 11カ月ぶりの下方修正だが、景気が回復基調にあるとの見方は維持しており、 事実上、今景気拡大は11月で「いざなぎ景気」を超え、戦後最長となる。

基調判断は2月に上方修正した後、8カ月連続で据え置いていたが、足元 で個人消費の減速が目立ってきたことから下方修正した。個人消費についての判 断は「おおむね横ばいとなっている」で、前月の「このところ伸びが鈍化してい る」から下方に修正した。天候不順という一時的要因に加え、「消費者マインド がおおむね横ばいで推移する中で、所得の伸びが鈍化している」ためだ。

7-9月GDP(国内総生産)の個人消費は、梅雨明けの遅れなど天候不 順、7月の株価低迷、所得の伸び悩みなどを背景に、前期比0.7%減と2四半期 ぶりにマイナスとなった。内閣府では、7月に梅雨明けの遅れなどで落ち込んだ 消費が8、9月に戻っていないと説明した。新車新規登録・届出台数も7-9月 に前期比3.2%減少した後、10月も前月比2.3%減とマイナス。旅行業者取り 扱い金額も国内、海外とも9月は減少しており低調だった。

雇用は厳しさ残るが改善に広がりも

気象庁によると、7月は梅雨前線が本州付近に停滞して梅雨明けが遅れた ため、降水量が非常に多く、日照時間はかなり少なかった。山陰、北陸、九州地 方や長野県では記録的な豪雨となり、被害も出た。8月は残暑で秋物衣料の動き が鈍かった。

実質雇用者所得は05年以降改善していたたが、直近では横ばい圏内の動き にとどまっている。一方、マインドを示す消費者態度指数もほぼ横ばいで推移し ている。雇用情勢についての判断は「厳しさが残るものの、改善に広がりがみら れる」とし、前月から変えていない。報告では消費の先行きについて、「雇用情 勢が改善していることから、所得の伸びが改善すれば、個人消費は増加していく ものと期待される」としている。

そのほかの個別項目の判断は変えておらず、輸出は「横ばいとなってい る」、生産は「緩やかに増加している」、企業収益は「改善している」、設備投 資は「増加している」。企業部門の好調さは続いているとしている。

景気拡張58カ月-戦後最長

現在の景気拡張局面(2002年1月を谷)、06年11月で58カ月(4年10 カ月)となった。正式な景気の山谷判断は内閣府の景気動向指数研究会が決定す るが、11月の月例経済報告で「回復基調」が確認されたことで、事実上、戦後 最長の「いざなぎ景気」(65年10月-70年7月、景気拡張期間57カ月)を超 えたことになる。

長期にわたり景気回復が続いている背景には、リストラなど企業の努力、 世界経済好調を背景とした輸出堅調、金融不安の払しょく、不良債権処理の進ち ょく、金融政策による下支えなどがある。

06年度の「年次経済財政報告」(経済財政白書)では、雇用・設備・債務の 「3つの過剰」を解消する構造改革の進展で柔軟性が増したこともあり、4年以 上にわたる景気回復期にあると指摘。「いざなぎ景気」では社会構造の変化を伴 う高度成長を実現したが、今回の景気回復は「成熟した経済が構造調整を通じて 正常化した状態に回帰する」という特徴があると分析している。

民間エコノミストの間でも「現在の拡大局面はいざなぎ景気を超えて戦後 最長となった可能性が高い」(新光総合研究所、宮川憲央エコノミスト)との見 方が多い。

先行き、家計への波及は-3度目の踊り場も

しかし、米国経済の減速鮮明化や、国内でもこのところ弱めの経済指標が 目立ってきていることもあり、いざなぎ景気を超えた後は「踊り場」を迎えると の見方も強まっている。11月の月例経済報告でも、先行きについての判断を前 月から若干弱めて、「企業部門の好調さが持続しており、これが家計部門へ波及 し国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる」とした。前月は「企 業部門への好調さが家計部門へ波及しており」としていた。

企業部門の好調が明確に家計部門の数字に表れない状況について、大田経 財相は14日のGDP統計発表後の会見で、「大きな流れとしては、じわりじわ りと企業から家計への波及は進んでいる。この成長を持続的に長く続けることに よって、家計部門へは確実に波及していく」との見方を示していた。

三菱総合研究所は、企業収益の好調の割に賃金の増加テンポは緩やかだと しつつも、企業部門は中期的に前向きな経営戦略を講じつつあるとし、企業収益 が家計部門にしみ出す形で家計所得は増加していくとしている。

一方、農林中金総合研究所は、90年代末以降強まっている賃金のフラット 化の影響、人口動態の変化により、比較的賃金水準が高めの雇用者が今後退職し ていくことから、人手不足感の高まりで賃金上昇が発生したとしても、一人当た り賃金はそれほど高まらずに推移するとみている。

米国経済は拡大テンポが緩やかに

民間エコノミストの標準的なシナリオでは、日本経済は年度後半から米国 経済の鈍化などを背景に一時的に減速するとの見方が多い。ブルームバーグ・ニ ュースが民間調査機関を対象に毎月実施している「ブルームバーグ景気調査・ 10月中旬調査」では、実質GDP(国内総生産)は10-12月に前期比0.7%増 加した後、07年1-3月に同0.5%増、4-6月に同0.4%増と緩やかに減速す る見通し。輸出は10-12月に同1.0%増、07年1-3月に同0.6%増と鈍化する 見込みだ。同調査は10月12日から20日にかけて実施した。

米国の実質GDPは、前期比年率で06年1-3月に5.6%となった後、4- 6月は2.6%、7‐9月は1.6%と減速している。新光総研は、住宅市場の調整 の影響、企業の在庫調整の動きなどから、当面は減速が続くものの、住宅市場の 調整の最も厳しい局面は通過しつつあることから、07年前半にかけて軟着陸を 達成し、調整が一巡する後半には巡航速度並みの成長路線の復帰への動きが明確 になる、と予測している。

月例報告での米国経済についての判断は「景気は拡大テンポが緩やかにな っている」で、前月の「個人消費などの伸びは緩やかになっているものの、景気 は拡大している」から下方修正した。アジア経済、欧州経済についての判断は変 更しなかったが、世界経済全体の判断は前月の「景気は着実に回復している」か ら「景気は回復している」に後退させた。

--共同取材:下土井京子、Editor:Hidaka

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