米VC業界、ペロシ次期下院議長を味方にSOX法の見直し迫る(2)

米企業改革法(サーベンス・オクスレー法 =SOX法)の威力を弱めようと、シリコンバレーのベンチャーキャピタル (VC)が政界トップから理解を得ようとしていたこれまでの努力は実を結ぶ かもしれない。

次期下院議長となる民主党のナンシー・ペロシ院内総務(カリフォルニア 州)はSOX法の修正を優先事項のひとつと位置付けている。同議員が今年受 け取った選挙資金は、民主党の伝統的な支持基盤である米労働総同盟産業別組 合会議(AFL-CIO)からよりもVC大手のクライナー・パーキンス・コ ーフィールド・アンド・バイヤーズからの方が多かった。同社はインターネッ ト検索のグーグルやネット通販のアマゾン・ドット・コムなどを支援したVC。

VC業界は過去何カ月にもわたって、ホワイトハウス、議員や当局者に対 し、SOX法で会計や法的コストが高くなり、結果的に企業が新規株式公開(I PO)の場を海外に求めるようになっていると主張し、同法の内容を緩和する ようロビー活動を行ってきた。同業界は今、クライナー・パーキンスなどが拠 点としているメンロパークから北方35マイル(約50キロ)に選挙区が位置す るペロシ氏という有力な味方を手に入れた。

全米ベンチャーキャピタル協会(NVCA)のマーク・ヒーセン会長は、「ペ ロシ院内総務はこれまでに何度も、特に小規模でこれから伸びる企業にはSO X法の修正が必要だと言明している。変化が起きる可能性は本当にある」と語 る。

ブッシュ元大統領の側近を務めた経歴があり、現在は米投資会社カーライ ル・グループで運用を担当するロバート・グレイディ氏もSOX法の改正は「超 党派の協力を必要とする」と指摘した上で、同法の修正にはタイミングが良い と指摘した。同法を考案したポール・サーベンス(民主、メリーランド州)、マ イケル・オクスリー(共和、オハイオ州)両議院が今年末で引退するためだと いう。

民主党内でSOX法修正を目指すのはペロシ院内総務ばかりではない。米 証券取引委員会(SEC)を監督する下院金融委員会の委員長となる見込みの バーニー・フランク議員(マサチューセッツ州)も前向きだ。また、上院銀行 委員会の次期委員長となるクリストファー・ドッド議員(コネティカット州) も同法が本来の趣旨に沿っているか、見直したいとしている。

裏目に出る可能性も

SOX法が成立した背景には、エネルギー取引会社エンロンや長距離通信 ワールドコムの経営破たんにつながった巨額の不正会計が投資家や国民の信頼 感を揺さぶったことがある。ただ、会計報告の正確性を確実にするために追加 監査を義務付けるのは規模の小さい企業にとって負担が大き過ぎると批判する 向きもあり、IPOの減少やハイテクバブル崩壊からの回復が遅れるとの主張 につながっている。

グレイディ氏は、「危機的状況になってきている。資本市場はうまく機能し ていない」と強調する。こうした声に対し、ペロシ議員は「SOX法が過剰負 担とならないよう」、中小企業が順守しなければならないルールを緩和したいと 述べている。

NVCAと調査会社トムソン・ファイナンシャルがまとめた調査によれば、 VCが出資した米企業による2006年7-9月(第3四半期)のIPOは8件と、 2003年以来の低水準だった。4月には、SECの諮問委員会が時価総額で7億 8700万ドル(約923億円)を下回る企業にはSOX法による義務が軽減され るべきだとの結論を出している。

ただ、ペロシ議員らがSOX法の骨抜きに回れば、民主党にとってはリス クだと指摘する声もある。カリフォルニア大学バークレー校の政治学者、ブル ース・ケイン氏は、同党が7日の中間選挙で勝利したのは有権者が倫理に反し た共和党のスキャンダルにうんざりしたことが一因だと分析。投資家を企業不 正から保護する目的の規制を弱める動きは民主党に裏目に出て、同党のスキャ ンダルに発展する可能性があると警告した。