トヨタ快走がファンドにも恩恵、「力」で日産Gとの株価格差が鮮明化

トヨタ自動車の株価が再び7000円台に乗 せて上場来高値をうかがうなど、株式市場ではこの1カ月間、トヨタ自動車グ ループの快走ぶりが顕著だ。モノづくり日本を代表する高収益企業群として、 グループ全体への評価が高まっており、同グループに投資する株式ファンドの 足元の運用成績も、そのほかのアクティブ運用型の日本株ファンドをしのぎ、 トップの座を獲得した。トヨタパワーは、本業の自動車業界のみならず、金融 界でもその存在感を増している。

トヨタファンドの「力」、リスク消す安定感

トヨタグループの株式をパッケージにした商品の運用成績が好調だ。トヨ タアセットマネジメントが運用する「トヨタグループ株式ファンド」の年初来 上昇率は6日時点で11%と、純資産総額が50億円以上の追加型の日本株ファ ンド(除く指数連動型)219本中でトップになった。同ファンドは、東証1部 に上場するトヨタ自動車とその連結子会社、持分法適用会社の株式を時価総額 に応じて組み入れる。アクティブ運用者も、トヨタGには脱帽せざるを得ない 状況だ。

運用成績だけでなく、販売も好調に推移している。2003年11月に41億円 で運用を開始した同ファンドは、純資産総額が800億円を超えるまでに成長し た。「トヨタグループ株式ファンド」は、トヨタの膝元である東海3県の地方 銀行を中心に、株式投資に比較的馴染みが薄い銀行の顧客を主要ターゲットと している。「発売開始からトヨタの状況が良く、地元の中部地区での信頼度も 高いようだ。アクティブ性を排除してファンドの中身が分かりやすいことも、 販売好調の一因」と、トヨタアセット営業企画部の北村邦男部長代理は見る。

10月23日に、同ファンドを販売商品に加えた京葉銀行は千葉県が地盤の 地方銀行だ。千葉県にトヨタの工場はなく、膝元という利点はないものの、同 行では「ほかの企業グループのファンドも検討したが、トヨタはずば抜けて一 流で、世界に通じる優良企業。イメージの良さから、顧客もトヨタなら買って みようと思ってくれるだろう」(証券国際部の垣井清和・証券営業グループリ ーダー)と判断し、採用を決めた。

投資信託の利点は分散投資。1つ1つの銘柄に投資するとリスクが高いが、 投資銘柄数を増やすことでリスクを低減する。しかし「トヨタグループ株式フ ァンド」はトヨタ1企業の収益動向に左右される20銘柄に集中投資しており、 リスクは高くなる。京葉銀でもこの点を議論したが、「中身がなかなか見えな い他のファンドと異なり、投資銘柄と比率が明瞭で、基準価額が変動しても理 解しやすい。商品について顧客にわかってもらえる」(垣井氏)。

集中投資のためリスクは高いと思われるが、リスク当たりのリターンを示 すシャープレシオ(1年)は1.42と、219ファンドのうち算出可能な186本の 平均0.64を大きく上回り、4番目に高い。安定した収益を生んでいるという 結果が出ている。

トヨタ株の「力」

日本の株式市場において時価総額で群を抜くトヨタ自動車は、国内外の幅 広い投資家の関心を集めている。10月の月間上昇率は7.9%と、東証株価指数 (TOPIX)の0.4%高を大きく上回った。

直近の株高についてちばぎんアセットマネジメント運用部・大越秀行部長 は、「良好なファンダメンタルズをベースとしながら、日本の中心銘柄として 海外機関投資家を中心に買いを集めた。自動車セクターに対する強気の見方が 変わらないなか、セクター内でもトヨタと他社との差は趨勢的に縮まらない」 とみている。

国内の自動車販売は他社同様にさえないが、米国でシェアを高めるなど海 外でトヨタ車の需要は伸びている。トヨタの4-9月の国内販売台数は前年同 期比3.4%減の77万8200台に減ったが、輸出は27%増の126万7400台と好 調を持続。一方日産自は新車投入の端境期だったこともあり、4-9月の国内 販売が20%減、輸出は10%減少した。

安田投信投資顧問の礒正樹株式運用部長は、直近の株価急騰もこうした販 売、業績面の裏付けがあることから、「オーバーシュートしているとは考えて いない」という。

さらば2強時代、不死鳥及ばぬトヨタ自の「力」

トヨタ自動車と対照的なのが日産自動車だ。2社は戦後、日本の自動車業 界の両雄として競ってきたが、バブル経済が崩壊して1990年代に入ると明暗 が分かれた。トヨタが順調に販売を伸ばす一方、日産自は既存車の商品力向上 などに遅れを取ってブランド力が低下し、売れ行きが鈍った。過剰投資が生ん だ多額の有利子負債が重くのしかかり、開発費を削減したことで、ヒット車種 を生み出せず、赤字が恒常化していく。

95年に、基幹工場の1つだった神奈川県の座間工場を閉鎖。99年に仏ル ノーから資本参加を受けるとともに、カルロス・ゴーン氏をCOO(最高業務 責任者)に迎えて再建を進めた。東京の村山工場も閉鎖に追い込まれた。

89年末からの両社の株価チャートを見ると、95年からトヨタが右肩上が り、日産自は98年に向かって安値を模索と、対照的な動きだ。日産自はその 後、ゴーン氏の下で進めた「日産リバイバル・プラン」によって赤字から脱却。 不死鳥のごとくよみがえったが、06年10月末時点でトヨタの株価は89年比で

3.9倍になったのに対し、日産自の上昇率は18%に過ぎない。

トヨタの車が支持を獲得している理由は、「モノづくりの基本がしっかり していることに尽きる。デザインの良さは一時的な人気を集めるが、5年10 年と乗り続けるには、車の品質や性能などで顧客を満足させなくてはならな い」(東洋証券・横山泰史アナリスト)という。

みずほインベスターズ証券の河合敦シニアアナリストは、「販売力、商品 力など全てにおいてトヨタ自は優位。日産自との格差は生産台数、販売台数、 足元の業績などあらゆる点ですでに明白だ」と述べる。

開発、生産、販売面での高い競争力を背景に、トヨタ自は日産自との株価 格差をさらに広げている。この1年間でみると、日産自は19%の値上がりにと どまったが、トヨタ自は32%上昇した。

こうした株価格差はグループ会社にも当てはまる。トヨタ自動車が20%以 上株式を保有しているグループ企業の合成株価指数は、04年末を起点とすると 10月末時点でトヨタグループは164、日産グループは124。親会社を除いたグ ループ会社のみではトヨタGが160、日産Gは101。トヨタと日産で差が付い ただけでなく、トヨタはグループ全体として評価されていると言える。同合成 指数は、ブルームバーグ・ニュースが独自に算出した。

トヨタグループの「力」、東海地方のクラスター化

住信アセットマネジメントの三澤淳一運用第2部長は、トヨタ自について 「総合力で際立っている。これまでの株価上昇は規模のメリット、コスト効果、 研究開発の積み重ねなどが背景。最近リコールがあったとはいえ、まだ品質に 対する安心感もある」と指摘し、潜在成長性を評価している。住信アセットが、 高い利益成長が期待できる日本企業を中心に運用する「住信ジャパン・グロー ス・ファンド」では、トヨタ自は組み入れ1位だ。

トヨタ自はデンソーやアイシン精機といった優良企業を多く傘下に持つ。 「マフラーなど自社で行っていた加工工程をどんどんグループ会社に移管し、 グループの結びつきを強めている」(東洋証の横山アナリスト)点が特徴だ。 自動車の部品点数は3万点に及ぶと言われる。

完成車メーカーは、部品メーカーに車の部品の生産を委託する。国際競争 力を高めるためには、部品コストの削減も重要だ。日産自は再生を計る過程で、 系列部品メーカーとの取引を見直し、資本を引き揚げるなど関係を薄めてきた。 しかしトヨタ自は、さらに関係を強める道を取った。愛知県を中心とした東海 地方に自動車産業クラスター地域を形成。地域柄の通り、無駄を徹底的に省い た原価低減などによって効率的な生産体制を築き、高収益力を誇る。強い絆に よりグループ全体でトヨタの販売好調を享受できる構図だ。

産業クラスターとは、米国の経営学者であるマイケル・E・ポーターが提 唱した概念で、ぶどうの房のように関連企業や基幹が地理的に集中し、競争と 協力を同時に行っていく状態を指す。

成長余力

ハイブリッド車の開発で出遅れた日産自に対し、「原油価格の高騰を背景 に環境や省エネが意識され、北米の自動車市場は明らかに小型車にシフトして いることもトヨタ自に追い風」(みずほインベ証の河合氏)となっている。米 国での販売台数は10月も前年同月を9.2%上回り、1年5カ月連続で増えた。

11月は米テキサス工場が稼働して新型タンドラの生産を開始。07年1月 にはタイの第3工場も完成する。「国内生産も新型カローラ・オーリスの寄与 で、当面過去最高の1日1万8000台程度の水準を維持する」(クレディ・ス イス証券の遠藤功治シニアアナリスト)とみられている。

トヨタ自では07年3月期の連結営業利益を前期比1.2%増の1兆9000億 円と計画しているが、ブルームバーグ・プロフェッショナルによると同銘柄を カバーするアナリスト17人の平均予想は11%増益。アナリスト予想の平均は 08年3月期に8%、09年3月期も9%の増益と、増益基調が続く見通しとな っている。

一方、日産自は07年3月期の連結営業利益を前期比0.9%増の8800億円 と見込む。しかしアナリストの見方は厳しく、18人の平均予想値は1.9%減の 8555億円。来期、再来期は平均でともに11%増益を予想するが、トヨタ自よ り小さい収益規模にもかかわらず、変化率に大差はない。

トヨタ自株に投資している安田投信の礒氏は、グローバルな生産台数の好 調に加え、「高級車ブランド『レクサス』のフルモデルチェンジによって、車 種構成が改善して利益率もさらに上昇するだろう」とみて、為替の円安メリッ トも受けるトヨタ自に対し、当面ボジティブな投資姿勢を維持する意向だ。

--共同取材:鈴木 牧子    Editor:inkyo

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