やさしい飛びへの追求、「XXIO」で躍進のSRIスポが1部上場へ

ゴルフクラブのトップメーカーであるS RIスポーツが13日、東証1部市場へ直接新規上場する。クラブのやさしさ を追求した「XXIO(ゼクシオ)」を2000年に発売、同商品のヒットを機 に一躍国内トップブランドに成長するなど、製品開発力が強みだ。

プロゴルファーで、ゴルフクラブに関する著書でも知られる岩間建二郎氏 は「国内メーカーの中にあって、『ゼクシオ』はゴルファーに対するやさしさ がベースに作られている。プロからアマチュアまで万人に適しているやさしい クラブで、大手メーカーのクラブでは常に一番良い」と、高評価を与えている。

SRIスポーツはゴルフとテニス用品を手掛け、03年に住友ゴム工業のス ポーツ事業部門(日本ダンロップ)が分社独立して発足した。主力事業のゴル フクラブに対する専門家の評価は高く、持ち前の製品開発力・マーケティング 力を武器に、国内での優位を維持している。

「ゼクシオ」のすごさ

自社開発の「ゼクシオ」は、2000年の発売とともに爆発的なヒットを記録 した。ウッドで年間5万本、アイアンで同1万セットがヒットの基準とされる 業界で、初年度ウッド16万本、アイアン6万セットに達するトップブランド となった。その後も「ゼクシオ」ブランドは02年に2代目、04年に3代目と 次々に新モデルを投入。今年には、飛距離性能と方向安定性を高めた4代目 (オールニューゼクシオ)を発売した。

4代目も好調な出だしで、今年上半期(1-6月)の全国主要店舗におけ る売れ筋調査では、ウッド部門でブリヂストンスポーツの「ニューViQ」を 抑えてトップ。アイアン部門でも同じく「ニューViQ」を上回って首位とな っている(『ゴルフ用品界』調べ、売れ筋上位をポイント化して集計)。

馬場宏之社長はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、「現在 20%弱の国内ゴルフクラブシェアは、25%まで高められるだろう。米国市場で の認知度上昇によって海外売り上げ比率をさらに上昇させ、2010年には売上高 700-750億円を目指したい」と述べた。06年12月期の売上高見通しは583億 円だ。

危機感がやさしさに

SRIスポーツは、国内では「DUNLOP(ダンロップ)」、海外では 「SRIXSON(スリクソン)」ブランドでスポーツ用品を販売している。 主力のゴルフ事業において最大の転機となったのが、世界有数のゴルフクラブ メーカーである米キャロウェイゴルフとの販売契約満了だ。

「当時のクラブ売り上げ構成比の5割以上を占めていたキャロウェイブラ ンドの取り扱いがなくなる危機感から、マーケットの大きいアベレージ層に向 けた『癖がなく飛ぶやさしいクラブ』の開発に着手した」――。馬場社長は当 時の状況を振り返る。

旧日本ダンロップはキャロウェイと契約を結び、国内で「キャロウェイ」 ブランドの販売代理店を行っていた。1990年代当時のキャロウェイは、91年 ビックバーサ、97年にはグレートビックバーサ(GBB)という世界的な大ヒ ットクラブを次々と投入。特にGBBは、「やさしく曲がらないクラブとして きょうまで続くヘッドの大容量化に先鞭をつけた」(キャロウェイゴルフ・田 島佳代PRアシスタントマネージャー)。

キャロウェイは、97年以降にGBB効果や他メーカー買収から世界シェア トップとなり、日本ダンロップもその恩恵を受けて事業規模が拡大。しかし、 99年末の契約期間満了以降は、キャロウェイが自ら販売も行った。

タイヤで培った技術と開発力

高いクラブ評価の背景にあるのは、徹底した「やさしさ」を追求する姿勢 だ。「やさしさ」を分解すると、ボールの上がりやすさと曲がらなさに行き着 く。同社はロフトの違う番手ごとに重心位置を変えるなど、常に真っ直ぐ飛ば す研究などを行い、目には見えない部分を工夫しているという。

そうした開発力を支えるのは、住友ゴムの一部門だった時代からのシミュ レーション技術だ。住友ゴムは、スーパーコンピュータを使ったデジタルシミ ュレーション技術を駆使し、設計や材料などに応用したタイヤ「デジタイヤ」 を積極展開。タイヤの場合は、走行時の道路との接着面積やその際の形状など 実際に確認が困難な状況でも解析でき、磨耗場所の特定や商品化までの設計期 間の短縮を可能にした。

ゴルフクラブ開発では、クラブにボールが当たった瞬間、ボールがどう構 造的に変形して飛んでいくかなどを解析。「ゼクシオ」でこだわったドライバ ーのインパクト音では、人間が好む周波数をまず作り、それをベースにヘッド の設計を進め、ヘッドが出来てから音を調整する従来法より高度な試作品が可 能になったという。

プロゴルファーの岩間氏によると、初代「ゼクシオ」が発売された当時、 クラブヘッドの重心位置がクラブのトゥ側(外側)にあるのが普通だったが、 それをヒール側(内側)に移動させた。重心がトゥ側にあると、ゴルフスイン グ時にクラブヘッドが回転(ねじれる)することで初心者には優しいが、ゴル フに慣れればボールが左に飛びやすくなるなど悪影響が出る。「クラブはヘッ ドのねじれがあると難しい。今ではほとんどのメーカーのクラブの重心はヒー ル側にある」(同氏)。

海外展開がカギ、世界2位のフューリクと契約

SRIでは今後の成長戦略として、特に重視しているのが国内では上級者 向けの開拓、海外では認知度の向上だ。ゼクシオが中級者層を中心としてシェ アを押さえたのに対し、上級者層と低価格帯はまだ相対的な市場の開拓余地が ある。その中心となるのが上級者向けブランドの「スリクソン」で、国内では 次第に同分野で軌道に乗りつつある。

一方、海外では「スリクソン」ブランドでボールやクラブを展開。ボール では英国でシェアが14%まで高まっているほか、マレーシアでは20%、オー ストラリア10%と存在感を強めている。もともと同社は、国内ではボールで認 知度を上げて販路を拡張し、その後クラブを投入してシェアを獲得してきた経 緯がある。国内シェアでボール2位、クラブ1位まで上りつめたのと同様の手 法を、今度は海外でも進める方針。今回の上場も、企業体質の強化とともに、 海外展開をにらんだ資金確保を大きな目的としている。

海外での認知度向上のため、1月からは米PGAで活躍するジム・フュー リクと契約した。ジム・フューリクは03年全米オープンの優勝者で、男子ゴ ルフの世界ランキングでタイガー・ウッズに次ぐ2位(9日発表の最新ラン ク)に位置する。

馬場社長は「世界で通用するブランドをつくるには、世界中のゴルファー が見ている米PGAツアーのプロに投資する必要がある。ボールを変えない選 手であるフューリクとの契約によって技術力への評価が高まり、米国でのブラ ンド認知度は昨年の36%から今年は56%に上昇した」と強調した。海外売り 上げ比率は、前期の11%から今期は12-13%、当面20%まで高める考えだ。

岩間プロは、「欧州や米国のツアーに行ってもボールのネームバリューは 定着しており、海外ではボールのイメージがクラブのイメージにつながる。ス リクソンのクラブは打ちやすさと飛距離を兼ね備え、完成度は今やキャロウェ イを上回り、将来は世界制覇が可能だろう」と予測している。

足元業績は伸び悩み、08年ルール規制で買い控えも

足元の業績は伸び悩んでいる。06年12月期は売上高が前期比5.9%増の 583億円となるものの、経常利益は同1.2%増の73億6000万円、当期利益は 同2.3%減の35億円となる見込み。新発売のゴルフクラブや輸出の伸びが売り 上げ増に貢献するものの、チタンやカーボンなど原材料価格の高騰、海外プロ との契約金や広告宣伝費といった先行投資負担が響く。

また、08年1月からはドライバーヘッドのスプリング効果に関し、英R& A(ロイヤルアンドエインシェント・ゴルフクラブ、英ゴルフ協会)のルール が変更される。反発係数が一定の水準を上回る現状の「飛ぶ(高反発)クラ ブ」に対し、公式競技での使用規制が行われるため、ゴルフ市場の一部には来 年にかけて買い控えの影響を懸念する声は多い。

SRIは、4代目ゼクシオで高反発クラブとルール適合クラブを同時に投 入。ルール適合クラブは3代目の高反発クラブを上回る飛距離を示すが、4代 目の高反発クラブに比べると飛距離が落ちる。08年1月に合わせて、4代目高 反発クラブを上回る飛距離となるルール適合クラブを投入する予定だ。

財団法人社会経済生産性本部がまとめたレジャー白書2005によると、ゴ ルフ用品市場は05年に前年比0.7%増の4400億円と2年ぶりにわずかながら 増加した。「景気回復でゴルフ需要全体に底打ち傾向が出てきた」(柳田尚也 主任研究員)ことや、高反発クラブの新製品ラッシュもゴルファーを刺激した。 ただ、今年と来年については08年からのクラブ規制を前にした買い控えなど もあり、横ばい圏で推移すると見られている。

丸三証券投資情報部の牛尾貴部長は、当面の投資対象としてのSRI株に ついて「高反発規制前の買い控えでグラファイトデザインが業績減額修正を行 うなど、マーケット全体の成長イメージに乏しい」と指摘。ゴルフ人口の増加 や会員権相場の底入れなどには注目しつつも、今後の成長性を見極めたいとの 姿勢を見せている。

PERは他社比較で低い、2%超の利回り

一方、公募価格の19万円は、予想PERで16倍水準。スポーツ用品メー カーではミズノの22倍(11日終値現在、以下同じ)、ヨネックスの29倍、ア シックスの25倍、マルマン8倍などと比べ相対的に低く、バリュエーション 面の割高感はない。売上高経常利益も今期予想で13%と、ミズノの5%、アシ ックスの10%などと比べて収益性も高い。

06年12月期の配当は4000円を予定。公募価格での配当利回りは2.1% (配当性向33%)で、東証1部市場の平均1.2%、長期金利1.7%を上回って いる。馬場社長は「投資家に長期保有してもらうため、配当性向は20%を最低 線として安定配当を行いたい。ファンづくりも兼ね、自社製品の商品券などと いった株主優待制度創設も考えたい」との意向。成長力につながる海外展開の 方向性が見えてくるまで、当面はバリュエーションや配当利回りを意識した株 価形成が行われそうだ。

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