8月機械受注6.7%増、2カ月ぶり増も予想下回る-「増加」判断維持(3)

民間設備投資の先行指標とされる船舶・電力 を除く民需の受注額は、8月に季節調整済みで前月比6.7%増と2カ月ぶりにプ ラスとなった。7月に調査開始以来最大の落ち込みとなった反動によるところ が大きい。発表した内閣府では、受注額は増加基調にあるとの判断を維持した。

同府が10日発表した機械受注統計では、船舶・電力を除く民需の受注額は、 7月に同16.7%減少したあと、8月はプラスとなった。しかし、事前予想(11.2% 増)より小幅な伸びにとどまった。予想を下回ったことを受け、株式市場は上 げ幅を縮小し、前週末終値比41円19銭高の1万6477円25銭、債券先物は下 げ幅を縮め、中心限月12月物は15銭安の134円51銭で引けた。

7-9月は前期比マイナスも

7月の最大の落ち込みは、携帯電話・半導体製造装置などの反動減と、鉄 道車両の受注増など特殊要因のはく落が影響していた。8月はその反動でプラ スとなったが、7月の落ち込みを相殺するほどではなかった。そのため、「7- 9月の受注額は2四半期ぶりに減少する可能性が高い」(BNPパリバ証券、河 野龍太郎チーフエコノミスト)との見方が出ている。

内閣府の試算では、7-9月受注見通し(前期比4.9%増)を達成するには、 残る9月に前月比44.3%増と大幅プラスとなる必要がある。また、9月に前月 比28.4%伸びないと、7-9月に前期比横ばいにもならず、9月が前月比横ばい だと7-9月は前期比8.8%減とマイナスになる。

同府では、見通しの達成は非常に厳しいとの見方を示した。一方で、4- 6月の水準が高いため、9月がある程度伸びれば、増加基調との判断に変更は ないと説明した。

設備投資の基調は堅調との見方

7-9月の受注が前期比マイナスとなる可能性が出てきたことで、先行き の設備投資への懸念も高まりそうだ。機械受注統計は民間設備投資に1-2四半 期ほど先行する。しんきんアセットマネジメント投信の宮嵜浩エコノミストは、 「7月の急減に続く8月の戻りの弱さから判断すると、設備投資が今秋から年 末にかけて弱含む可能性はさらに高まった」とみている。

しかし、設備投資の基調は底堅いとの見方が依然多い。三菱UFJリサー チ&コンサルティングの鹿野達史・主任研究員は、「7月機械受注の急減は、6 月の急増の反動に加え、通信業の通信機の発注、とくに携帯電話端末の大幅な 落ち込みが効いており、設備投資の実勢を表していない可能性が大きい」と指 摘。通信業の通信機の発注を除くと、増加基調は崩れていないとし、「企業収益 の増勢が加速するなか、日本銀行の企業短期経済観測調査(短観、9月調査) の設備投資計画は大企業を中心に堅調なものとなっており、設備投資の拡大基 調には変化はない」とみる。

バークレイズ・キャピタル証券の会田卓司チーフエコノミストは、8月の 製造業の受注が前月比9.3%増と予想通り堅調な結果だったとし、「米国経済減 速による製造業中心の景気モメンタム鈍化という結論は下せない。前年同月比 9カ月移動平均も安定的に推移している」と指摘。そのうえで「機械受注の月 次の振れは大きく、米国経済の減速もあり伸び率が加速していく局面ではない ものの、日銀短観でも確認された企業の強い設備投資意欲に支えられて、今後 も堅調な推移を続ける」との見方を示した。

日本銀行の企業短期経済観測調査(短観、9月調査)の結果によると、06 年度設備投資計画(含む土地投資)は、全規模全産業で前年度比8.3%増と、前 回調査時の同6.2%増から上方修正された。製造業、非製造業とも上方修正され た。大企業全産業は同11.5%増で1990年度(同18.4%増)以来の大幅な伸び となった。また、生産設備判断DIはマイナス1と約15年ぶりの不足超に転じ た。

金融政策への影響は

設備投資動向は追加利上げの時期を占ううえで注目される。アール・ビー・ エス証券のチーフ・エコノミスト・ジャパン、山崎衛氏は、「日銀が景気の上ぶ れリスク要因として設備投資を挙げているが、8月の機械受注統計は日銀の懸 念が短期的に現実化する可能性が低いことを示唆している。日銀が利上げを急 ぐことはないだろう」と指摘した。

農林中金総合研究所の南武志・主任研究員は、「目下インフレリスクは皆無 であるほか、海外経済動向の見極めも必要で、12月の短観を十分見極めた後に 政策判断をしても遅くはない」と指摘。一方で、「企業経営者の設備投資意欲が 強い状況が続けば、07年度にかけて成長率が潜在成長率程度まで減速するとい う日銀の軟着陸シナリオにとっての障害となる可能性が強い」とし、「年末まで に米国経済の大幅な景気悪化といったニュースが出ない限り、年明け後には利 上げ判断を行う可能性は強い」との見方を示した。

--共同取材:赤間信行、 Editor:Ozawa

David Tweed (81)(3)3201-2494 dtweed@bloomberg.net

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