日本の個人消費、勢いどこまで-伸び不十分なら成長脅かす可能性も

安倍晋三首相や福井俊彦日銀総裁が日本の経 済成長のけん引役として期待している個人消費の伸びは、勢いを失う可能性が ありそうだ。

日本は景気拡大期が56カ月目に入ったにもかかわらず、賃金水準は依然と して10年間続いた低下から完全に回復していない。企業は設備投資を16年ぶ りの速いペースで拡大させているものの、原材料や燃料価格の大幅な上昇を受 け、従業員の賃上げには消極的だ。

個人消費が輸出の伸び悩みを穴埋めしなければ、日本経済は問題を抱える ことになるかもしれない。世界2位の経済大国である日本は1991年以降、3回 のリセッション(景気後退)を経験。そのうち2回では輸出が低迷した。

アジア開発銀行(ADB)によると、海外からの需要低下は、第二次世界 大戦後最長となっている今回の景気拡大期を「台無し」にする可能性がある。

ソシエテ・ジェネラル・セキュリティーズのフィマット部門のストラテジ スト、カービー・デーリー氏は「輸出と個人消費が球場にそろわなければ、試 合をすることはできない」と語り、「企業が生産する製品を買う人がいなければ 始まらない」との見方を示した。

景気の減速は、持続的な成長が来年7月の参議院選での勝利につながるこ とに期待を寄せている安倍新首相にとっても打撃だ。

エコノミストの間にも、米景気が冷え込むなか、世界経済の成長が中国や 欧州に加えて日本の景気拡大によって持続することへの期待が大きい。

世界経済にとって問題

米財務省の元エコノミスト、ノーリエル・ルービーニ氏は「米景気減速の 影響を受けるかどうかは、これらの国の内需の行方にかかっている」と指摘。「日 本の消費者が打席に入らなければ、世界経済にとって問題だ」と語った。

福井総裁は5月31日、日本の経済成長のけん引役は企業投資から個人消費 に次第に移っていくとの見通しを示した。それ以降の展開を見る限り、総裁の 見通しはまだ現実化していない。4-6月期の設備投資は個人消費を7倍上回 るペースで増加した。一方、8月の全世帯の消費支出は4.3%減少。今年は月間 ベースで年初から毎月減少している。

バークレイズ銀行チーフFXストラテジストの梅本徹氏は、日銀は企業収 益の伸びが賃金水準の上昇につながり、個人消費を押し上げると考えていたと 指摘。しかし現実はそのシナリオ通りにいっていないとの見方を示した。

失業率は8年ぶりの低水準に達しているものの、厚生労働省が2日発表し た8月の1人当たり現金給与総額は前年同月に比べ0.5%減少した。

円相場のマイナス要因

梅本氏は、企業は雇用に関して依然として非常に慎重な姿勢を取っている と指摘。その結果、小売価格は低水準にとどまり、日銀は利上げを実施するの がさらに難しくなると語り、これは確実に円相場のマイナス要因だ。円売りに 拍車を掛けることになるとの見通しを示した。

梅本氏の円相場の年内予想レンジは113-118円。10月6日は約119円で取 引された。

韓国とドイツ

すでに、日本にとって最も重要な輸出市場の一部には減速の兆しが見られ る。4-6月期の米成長率は2.6%と、前期の5.6%を下回った。

また、韓国の個人消費は金利や燃料コスト上昇の影響で鈍化。ドイツの個 人消費も付加価値税導入の影響で悪化する可能性がある。

厚生労働省によると、日本の現金給与は1997年から2005年までの間にほ ぼ10%低下。平均で1人当たり40万円を超える減少となった。その間、通常な ら将来のための貯蓄に回るはずの資金によって、日本の個人消費は支えられた。 この結果、貯蓄率は10.4%から2.4%へと低下した。

賃金水準は2006年1-6月期に上昇したものの、こうしたトレンドの転換 にはほとんど貢献しなかった。同期の賃金増加額は1人当たりわずか8700円。 トヨタ自動車の「カローラ」のガソリンを満タンにすることができる程度の金 額だ。

賃金水準がこれまでより速いペースで上昇したとしても、家計は消費より も再び貯蓄を優先するリスクがあると言うキャピタル・エコノミクスのチー フ・インターナショナルエコノミスト、ジュリアン・ジェソップ氏は「消費者 は非常に神経質になるだろう。それが今の状況だ」と語った。

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