安倍首相:自ら3割・閣僚1割の給与返納-「美しい国づくり内閣」(3)

安倍晋三新首相は26日夜に就任記者会見を 行い、同日発足の新内閣を「美しい国づくり内閣」と銘打ち、小泉純一郎前内閣 が5年5カ月にわたり進めた構造改革を継承し、さらに加速、補強していく方針 を表明した。

安倍新首相は「財政をしっかりと再建していくことも私の内閣の大きな使命 だ」と強調。「『成長なくして財政再建なし』との考え方の下、歳出削減を進め ていく。2007年度予算では新規国債発行額を06年度の発行額以下に下回るよう にしていく」と語り、07年度予算案に計上する新規国債発行額を06年度の29 兆9730億円(予算ベース)を下回るよう抑制する考えを強調した。

そのうえで「『隗(かい)より始めよ』という考え方の下、私の首相給与を 30%カットする。また国務大臣の給与も10%カットする。まず私たちが範を示 したい」と述べ、行財政改革推進の観点から、首相は議員歳費と首相給与の合計 額の30%、閣僚は議員歳費と大臣給与の合計額の10%を返納する方針を打ち出 した。

新首相は日本の外交に関して、「日米の同盟関係はまさに外交、安全保障の 基盤だ」と述べ、同盟、信頼関係を強化する方針を打ち出した。そのうえで「ア ジア外交を重視していく。近隣国の中国、韓国、またロシアといった国々との関 係をさらに緊密化する努力を行っていきたい」と語り、中韓ロなどとの連携強化 を目指す方針を示した。

特に小泉純一郎首相の靖国神社参拝で冷え込んだ日中関係については、「平 和に発展していく中国は日本にとっても重要な国だ。中国の発展は日本にとって もプラスだ。日中関係を発展させるために努力していく」と訴えた。韓国に関し ては、「自由、民主主義、基本的人権で日本と共通の価値観を持っている」と語 り、関係強化に楽観的な認識を示した。

新首相は、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合前に日 中首脳会談が実現できるかどうかには言及を避けつつ、「日本は常にドアを開い ており、日本が首脳会談を拒否しているわけではない」と指摘。そのうえで「利 害が違うこともあるが、首脳同士が会って胸襟(きょうきん)を開いて会談する のが大事だ。そのために私も努力していきたい。両国に一歩前に出てきてほし い」と語り、間接的ながら靖国参拝中止を首脳会談開催の条件としないよう中韓 に促した。

新首相の発言(要旨)は次の通り。

  「第90代首相を拝命した安倍晋三です。私は自民党、公明党の連立政権の
下、戦後生まれ初の首相としてしっかりと正しい方向にリーダーシップを発揮し
ていく。日本を活力、チャンス、優しさに満ちあふれた国にしていく。本日より
新しい国づくりに向けてしっかりとスタートしていく」

  「特定の団体、特定の既得権を持った人たち、特定の考え方を持つ人たちの
ための政治を行うつもりはない。毎日額(ひたい)に汗して働き家族を愛し、地
域を良くしたいと願い、日本の未来を信じたいと考えている普通の人たち、すべ
ての国民のための政治をしっかり行っていく。そのために本日、『美しい国づく
り内閣』を組織した」

  「まずはっきり申し上げたいのは、5年間、小泉首相が進めてきた構造改革
を私もしっかり引き継いでいく。構造改革はしばらく休んだほうがいいとか方向
を修正したほうがいいと言う声もあるが、私はむしろ構造改革を加速させ、補強
していきたい」

  「頑張って汗を流した人、一生懸命切磋琢磨して知恵を出した人が報われる
社会を作っていきたい。公正でフェアーな競争の中で生まれてくる活力が、日本
経済と国の力を押し上げていく。しかし人間だから失敗することもある。一回の
失敗が人生を決めてはいけない」

  「勝ち組、負け組で固定化させてはならない。何度でも人生にチャンスの
ある社会をつくっていかなければならない。単線的な人生から、多様な機会のあ
る複線的な人生が可能になるよう社会を変えていきたい。そのために再チャレン
ジ推進の施策をしっかりと実行していく」

  「『地域の活力なくして国の活力なし』という考え方の下、魅力ある地方、
地域づくりをしっかりと推進していく。頑張る地域をしっかり支援するためにし
っかりと地方分権を推進していく。また道州制も視野に議論を進めていく」

  「財政をしっかりと再建していくことも私の内閣の大きな使命だ。『成長な
くして財政再建なし』との考え方の下、成長戦略を実施し、さらに無駄遣いを省
き、歳出の改革、削減を進めていく。2011年に国と地方を合わせてプライマリ
ーバランスを黒字化する目標に向けてしっかりと前進していく」

  「2007年度予算では新規国債発行額を06年度の発行額以下に下回るように
していく。しっかりと無駄遣いを省いて、『隗より始めよ』という考え方の下、
私の首相給与を30%カットする。また国務大臣みなさまの給与も10%カットす
る。まず私たちが範を示したい」

  「06年から日本の人口が減少し始めたが、減少局面でもしっかりと成長し
ていく国を目指したい。そのためにやるべきことは3つある。1つは人材育成、
もう1つは技術革新(イノベーション)に力を入れていく。またイノベーション
に投資していくことで生産性を高めていける。もう1つはオープンだ」

  「社会、経済、国を開いていくことで、海外からたくさんの投資が行われる。
そして有為な人材が日本にやってくれば活力を生み出す。自由貿易協定(FT
A)、経済連携協定(EPA)を進めていくことで、アジアの成長を日本に取り
入れていくことも十分に可能だ」

  「人材育成、イノベーション、オープンをしっかりやって経済を成長させた
い。きょうよりもあすが豊かになる社会、国を目指したい」

  「また私の内閣で、しっかりと進めていく重要な課題が教育の再生だ。すべ
ての子供たちに高い水準の教育と規範を身につける機会保証していかなければな
らない。そのためには、だれにでも通うことができる公立学校をしっかりと再生
させたい。まずはこの臨時国会で教育基本法の改正案を成立させ、英知を集めて
内閣に教育再生会議を発足させてしっかりと教育再生改革に取り組みたい。

  「また自民党総裁選を通じて多くの肩から、社会保障制度は大丈夫なのかと
いう声があった。国民の安心である社会保障制度をしっかりと守っていきたい。
そのためにも一体的な改革が必要だろう。年金、医療、介護、そしていざという
ときの生活保護などの社会福祉の一体的な改革を行っていく。保障制度は公平で
あることが大切だ」

  「官民格差があるといわれている厚生年金と共済年金の一元化を進める。そ
して社会保険庁の解体的な手直しが必要だ。また分かりやすい制度にするため、
年金の支払い額、支払い期間、将来いくらもらえるのかを国民に分かりやすく説
明していく必要がある。国民に通知する仕組みを1日も早く構築したい」

  「外交では、日米の同盟関係はまさに日本の外交、安全保障の基盤だ。その
日米同盟の信頼関係を高めることで強化していきたい。そのためにもお互いが信
頼感を増して、双務性を高めていく必要もある。お互いにいつでも話ができる体
制も構築したい」

  「また日本はしっかりとアジア外交を重視していく。近隣国の中国、韓国、
またロシアといった国々との関係をさらに緊密化する努力を行っていきたい」

  「韓国は自由、民主主義、基本的人権で日本と同じ価値観を持っている。日
韓がしっかり信頼の絆で結ばれて将来ともに発展できるよう努力したい」

  「平和に発展していく中国は日本にとっても大切、重要な国だ。中国の発展
は日本にとってもプラスだ。日中関係をより発展させるために私も努力してい
く」

  「アジアで日本と同じ価値観を持つ国々、自由、民主主義、基本的人権、そ
して法の支配という価値観を共有するインドやオーストラリアとの関係をさらに
強化していきたい。そしてしっかりと日本が主張する外交を展開していきたい。
やみくもに日本の国益を主張するのではなくて、世界は何をすべきかを主張する
外交を展開したい」

  「日本が国連の場で、しっかりと国連改革に力を発揮し、安保理の理事国と
して、さらに素晴らしい国連にするために責任を果たしたい。そのために国連の
安保理常任理事国入りを目指したい」

  「私は日本が持つすばらしさや日本が目指す方向を世界に発信していくべき
だと考えている。そのためにも日本の外に発信していく力、広報の力を強化した
い。日本が世界の国々から信頼され、尊敬され、子供たちが日本に生まれたこと
を誇りに思う『美しい日本』をつくっていく」

【質疑応答】
――美しい国つくり内閣ということで、具体的なイメージがわきにくい。日本を
どういう国にしたいのか。そのために何をして、国民生活はどうなるのか。

  「その姿の1つは、美しい自然や文化、歴史、伝統を大切にすることだ。し
っかりと環境を守っていくことだ。そして家族の価値観を再認識していくことだ。
そして自由な社会を基盤として、しっかりと自律した凛(りん)とした国を目指
していくことを考えている」

  「そのためにも改革が必要だ。そして規範を守る経済でなければならない。
今後、力強く成長してエネルギー(活力)を持ち続ける国でなければならない。
しっかりと成長していける経済、強い経済をつくっていきたい。そのために人材
育成、イノベーション、オープンが必要だ」

――今回の組閣の狙いは。「論功行賞」という批判が出ているが。

  「適材適所。その分野に精通した方、あるいはいわばその分野をずっと客観
的に見てきて優れた見識を持っている方を配置した。自民党には雲霞(うんか)
のごとく有為な人材がいる。もちろん自分で務まるという方もいると思うが、な
かなかそこが人事の難しいところだが、今の時点で私が考えた適材適所で配置し
た」

  「これは論功行賞人事では決してない。政治は結果が大切だ。しっかりと結
果を出せる方々を選んだ。党内からはいろんな声がある。だれを使かってくれと
いうことは今の時代ない。私は同僚、先輩の議員を見ながら、最後は自分1人で
決定した」

――中韓関係をめぐり、年内にも首脳会談再開の可能性はあるのか。中国は靖国
神社参拝の中止を条件にしているようだが。

  「日本は常にドアを開いている。首脳会談について日本側が拒否しているわ
けではない。国が違えば利害が対立することもあるが、そういうときこそ首脳同
士が会って胸襟(きょうきん)を開いて話をしていくことが大切だ。そのために
私も努力していきたい。両国に一歩前に出てきてほしい」

――人権擁護法案と皇室典範改正に関する対応は。

  「人権擁護法案は、党でもいろいろな意見がある。法務省でしっかりと前回
の法案の際にあった議論を吟味しながら慎重に対応したい。また皇室典範の改正
問題に関連して、安定的な皇位の継承が極めて重要だ。重要な問題だからこそ、
国民に納得されるものでなければならない。慎重かつしっかりと議論されていく
必要ががある」

――集団的自衛権の解釈見直しを検討するのか。
  「まず日米の双務性というのは、お互いがお互いを助け合って対応していく
ということだ。それこそがまさに当面極めて重要だ。問題提起してはいけないと
いうことがあってはならない。私は首相として、日本の国民の命を守っていかな
ければならない。そして平和をしっかり守るという大きな使命がある。そのなか
で研究すべきは研究し、解釈については、より日本は、地域の平和と安定のため
にやるべきことをしていかなければならない。今までも研究してきたが、さらに
進めて結論を出していきたい」

――憲法改正は5年以内に実現するのか。
  「憲法改正についてはしっかりと政治スケジュールに乗せていくべく、自民
党総裁としてリーダーシップを発揮していく。ただ今後、基本的には自民党が中
心になって他党とこうしょうしていくことになる」
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