東芝:フラッシュメモリー首位奪還、4工場追加建設へ-収益向上(4)

東芝の室町正志専務はブルームバーグ・ニュ ースとのインタビューで、主力のNAND型フラッシュメモリー(電気的に一括 消却・再書き込み可能なメモリー)事業を拡大し、ライバル韓国サムスン電子か らの首位奪還に不退転の決意を示した。そのため、07年度以降に工場をさらに4 棟建設し、8棟まで拡張する構想を明らかにした。

半導体事業が好調な東芝は、携帯音楽プレーヤーやデジタルカメラなどの記 録媒体として需要が急拡大しているフラッシュメモリーの増産を加速、事業拡大 に注力している。08年度までの半導体部門の計画では、メモリー事業の売上高は 5000億円(06年度予想)から9000億-1兆円弱へほぼ倍増する見込み。現在は 東芝単独で25%の世界シェアを、08年度には提携先の米サンディスクとの合算で 40%を目指す。

同時に室町専務は、メモリー以外の主力事業も強化する方針を明確化。シス テムLSI(大規模集積回路)事業で早期に10%の売上高営業利益率を目指す一 方、世界シェア首位のディスクリート(個別半導体)事業はパワーデバイスや光 半導体などの主力製品群を増産し拡販する。これにより、半導体部門全体で少な くとも13%の営業利益率を確保し、中期的には15%程度まで高めたい考え。

メモリー工場、第8棟まで視野

NAND型フラッシュメモリーを発明した東芝は、2001年ごろまで50%のシ ェアを握るトップだったが、その後はサムスンが急速に伸張したことで現在は2 位。室町専務は「当社のシェアと収益をきちんと確保することで、当然、首位に 返り咲きたいと思っている」と語り、「これだけの経営資源を投入したのだから、 途中でギブアップはしない」と強い決意を示した。

量産拠点の四日市工場は、直径200ミリメートルウエハーのラインを持つ第 1棟と第2棟の能力が月産10万枚強、300ミリウエハー対応の第3棟は同11万 枚まで拡張する予定。8月に着工した第4棟の計画も概要が大筋固まり、最大生 産能力は月産15万枚規模、総投資額はサンディスクとの合計で約6000億円とな る見込み。第5棟以降は別の地域で拠点を確保し、第8棟までの計4棟を建設す る方向で検討する。4棟分の建設に必要な投資額は2兆5000億円程度に達する公 算だ。

東芝は5月、第5棟の建設に向けて検討を開始。具体的な計画を07年前半に 決定し09年には量産を開始する。ただ、需要は数量ベースで年率2倍以上の伸び が予想され、生産能力のいっそうの拡大が必要と判断。室町専務は「第5棟だけ ではなく、第6、第7、第8棟くらいまではリソースが分散しないよう、同じエ リアでつくりたいと思う」と述べた。07年度以降に着工する第5棟を皮切りに 「切れ目のない、連続的な(量産の)立ち上げを実現したい」としている。

4者競争の市場構造

一方のサムスンは、向こう7年間で330億米ドル(約3兆8000億円)を投じ て8つの工場を建設する計画を昨秋に決定。室町専務も「サムスンも2012年まで に7-8棟つくると言っている」と、競合他社の動向を強く意識。新規参入した 米インテルも、米マイクロン・テクノロジーと組んで米ユタ州に新工場を建設中 で、韓国ハイニックスも激しく追い上げている。シェア拡大を目指した投資競争 と技術開発競争は熾烈を極め、毎年のように各社が新工場を建設する勢いだ。

こうした状況を、室町専務は「パワーゲームの様相」と述べ、「プレーヤー が4者に絞られてきたことで、過当競争は終焉に近づいている」と指摘。上位4 者のサムスン、東芝・サンディスク連合、韓国ハイニックス・伊仏マイクロエレ クトロニクス連合、インテル・マイクロン連合による戦いの構図が明確になって おり、「ある意味で競争がしやすくなった」とみている。東芝は1つの素子に2 倍以上の情報を書き込める「多値化」の技術で1年以上先行しているため、技術 的な優位性を保ちながら大容量製品の早期市場投入を続ける。

ただ、不透明要素もある。市場の拡大とともに価格は年率40%以上で下落し 続けており、収益の確保は容易でない。08年までの半導体市況は最大2ケタの成 長予測もあるが、08-09年以降に市況が大幅軟化するリスクも一部懸念されてい る。相次ぐ大型投資で各社の生産能力が拡大の一途を続けるなか、市況が軟化す れば設備に余剰感が発生する恐れもある。

システムLSIをてこ入れ

システムLSI事業の収益向上にも取り組む。現状、同事業の半導体部門に 占める比率は41%と最大だが、開発投資の負担が大きく収益は相対的に低い。主 力製品はデジカメの画像素子に使われるCMOSイメージセンサー、ソニーのゲ ーム機用に代表される高性能半導体のほか、テレビ用画像処理LSIや携帯電話 用アプリケーションプロセッサ、マイコン、液晶表示駆動用半導体(LCDドラ イバー)などだが利益率には、ばらつきがあり、事業の収益は浮き沈みを繰り返 してきた。

足元は利益を確保しているが、安定的な収益向上が不可欠として、室町専務 は「最低でも10%の営業利益率がなければだめだ」と強調。過去数年間は製品の 絞り込みや欧州の後工程の工場閉鎖などに取り組んできたが、「“選択と集中” の集大成に入りたい。競争力のない製品は撤退も考える」と述べた。

強化するのは、薄型テレビ、AV(音響・映像)、携帯電話などデジタル家 電用の分野。経営資源を傾斜配分し、競争力の高い特定用途向け標準半導体(A SSP)の育成を急ぐ。特に、自社のテレビ製品との相乗効果が高いテレビ用画 像処理LSIは「デファクト(事実上の世界標準)に育てたい」と意気込みを示 した。

★室町専務の主な発言は以下のとおり。

――東芝の半導体事業の長期的な経営課題は。

「2つある。開発・生産・販売まで垂直的に手がける総合半導体メーカーと して一貫した事業を続けることと、システムLSI、メモリー、ディスクリート の3事業間のシナジーを追求することだ。技術開発の手綱を緩めず、基礎体力を つけて収益を上げていくことが重要。より長期的な観点では、優秀な人材の確保 と育成が大きな課題で、技術者の採用を活発に行っている」

――競争力の源泉は何か。

「やはり最先端のメモリー事業を持っていることだ。メモリーを成長のけん 引役とし、システムLSIやディスクリートを技術的にサポートする。メモリー の生産設備をシステムLSIなどに回し、有効活用している。多値化の技術は、 他社が追随できないレベルだ。現在の多値は1ビットを2ビット(容量16ギガビ ット)として使う技術だが、これを3ビット(同32ギガビット)、4ビット(同 64ギガビット)に大容量化できる技術を08年度までに開発できると思う」

――メモリー事業の戦略は?大型投資を継続し、戦い抜けるか。

「技術開発と投資を継続することに尽きる。新工場建設の判断には、市況の 需給の読みがもっとも重要なファクター。設備投資は、基本的にセミコンダクタ ー社のキャッシュフロー内でやりたい。第5棟以降の用地は、岩手が選択肢の1 つだが他の候補地も検討している」

――システムLSI事業の具体的な収益向上策は。新たな主力製品は何か。

「営業利益率10%はチャレンジングな水準とはまったく思わない。強化すべ きは、やはりテレビ向けの画像処理LSI。ここでデファクトを目指したい。今 からパソコン用CPU(中央演算処理装置)や携帯電話用ベースバンドチップで 食い込もうとしても無理があるので、やはり残された道はテレビの分野になる。 米IBM、ソニーと共同開発した超高速プロセッサ“CELL”は、08年に自社 製品への搭載を考えている」

――昨今、世界的な再編の動きが激しい。

「プロセスの技術開発は、線幅が45ナノ(ナノは10億分の1)メートル、 あるいは32ナノ世代まで他社と協業してやっていく。それで十分かどうかは別だ が、部分的な協業、最適化は進んでいくだろう。半導体部門は東芝の大きな柱だ から、分社はいまのところ考えられない。東芝の中にいることで、社内のリソー スを互いに活用できるメリットもあり、その強みをもっと出していきたい」

――半導体部門の将来的なポートフォリオと収益性をどう考えるか。

「メモリー事業が拡大しているので、08年度の半導体部門の売上高1兆8000 億円のうち、メモリー50%超、システムLSI30%、ディスクリート20%くらい の配分になるだろう。いまはメモリーの利益率が高いが、システムLSIの利益 を上げ、部門全体として最低13%の営業利益率、できればそれ以上を目指す」

【NAND型フラッシュメモリー8社の世界ランキング(06年4-6月期)】
                                 売上高(増減率%)     シェア
 1.韓国サムスン電子                 1,264( -20.1%)      46.2%
 2.東芝                               673( -16.0%)      24.6%
 3.韓国ハイニックス                   505(   5.0%)      18.5%
 4.ルネサステクノロジ                 145( -15.2%)       5.3%
 5.米マイクロン・テクノロジー          68( -28.4%)       2.5%
 6.伊仏STマイクロ                      40( -49.6%)       1.5%
 7.独インフィニオン                    21( -19.2%)       0.8%
 8.米インテル                          18( 157.1%)       0.7%
計                                  2,734( -15.7%)     100.0%
出典:アイサプライ(2006年8月)
注)売上高単位:百万ドル、カッコ内は06年1-3月期との売上高増減比率
(%)

東芝の14日終値は前日比8円(1%)安の801円。

--共同取材 小笹俊一   Editor: Murotani

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