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王子製紙に手詰まり感、唯一の活路は三菱商事-一橋大学の服部氏(3)

M&A(企業の合併・買収)に詳しい一橋大学 大学院の服部暢達・助教授(48)は15日、王子製紙が仕掛けている北越製紙への敵 対的買収をめぐり、王子紙の打つ手がなくなっているとの見解を示した。日本製紙 グループ本社の北越紙株取得を経済合理性がないと批判しながら、この行為で買収 実現が難しくなっていると分析した。

都内事務所でのインタビューで服部助教授は、売値が高くても株式を売却しな い北越紙株主が多く、王子紙がTOB(株式公開買い付け)の価格を上げてもTO B成立は難しいと予想した。北越紙株主(信託名義を除く)は現在、三菱商事、日 本紙G、日本興亜損害保険、みずほコーポレート銀行、第四銀行、北越銀行など。

このうち増資を引き受けた三菱商、TOB阻止狙いで株式を買い増した日本紙 Gは株式を売却する可能性は低い。第四銀と北越銀も株式保有を実質的に表明して いる。日本興亜も政策投資のもようで価格次第で株式を手放す投資家ではない。株 式を継続保有する投資家の持ち分は少なくとも4割に達しているもようだ。

王子紙は株式約5割の取得をTOB成立の条件にしているが、仮に価格を上げ てもこうした株主が多くTOBは成立しないとみている。そのうえでTOB成立阻 止を目指して北越紙株を買った日本紙Gについては「非合理的な行動であり、TO Bが成立しなければ北越紙株が急落して含み損を抱えることになる」と指摘した。

さらに王子紙と北越紙の連合が脅威ならば、日本紙Gは北越紙に対抗TOBを 仕掛けるべきだったとしている。服部助教授は「一番損をしたのは北越紙の株主、 続いて日本紙Gの株主」として北越紙株主は会社側に損害賠償訴訟を起こすべきと も述べた。北越紙については、三菱商への増資を撤回すべきだったとしている。

王子紙、唯一の活路は三菱商事

王子紙の北越紙買収案件はすでに勝負はついているとしながら服部助教授は、 王子紙は三菱商との提携に活路を見出すことはできると予想した。例えばTOB成 立の条件を3分の1の株式取得に引き下げてTOBを成立させ、三菱商と合わせて 株式の過半数を握るとの見方だ。

ただ北越紙の了解がない限り三菱商が王子紙と組むことはないとして、この想 定も「可能性が低い」と付け加えた。三菱商が引き受けた際の増資契約には三菱商 の保有株転売(規制)契約も盛り込まれている公算が大きいとしている。

さらに三菱商も、増資で引き受けた直後の株式を他社に売却すれば、大きなレ ピュテーション(評価・評判)リスクを背負うことになるとしている。

10%以上の株式を保有している投資家が短期売買で差益を確保した場合、対象 会社からの請求があれば返還する義務も証券取引法に規定(短期売買差益返還)さ れている。三菱商が北越紙株を手放せば、こうした懸念も生じる。

日本紙Gの北越紙株取得がなければ、王子紙TOBは成立していた公算が大き い。この場合は北越紙が買収防衛策を発動して新株予約権を発行、これに対して王 子紙が発行差し止め仮処分を申請して法廷闘争になる可能性があった。この場合の 司法判断については、発行差し止め判決が下されると服部助教授は予想した。

王子紙の北越紙への敵対的買収は「会社は誰のものかではなく、発行済み株式 は誰のものかを問いかけ、株主のものという結論を導いた。このためにもこうした 司法判断が必要だったが、これを阻んだ日本紙Gは万死に値する」と強調した。

買収防衛策は買収者との条件闘争の交渉を可能にするのが趣旨であり、交渉が 終わったらこの武器は収める必要があるとしている。

王子紙の篠田和久社長は17日から新潟県を訪問して、第四銀や北越銀の首脳と 会談する予定。王子紙と北越紙の統合効果を説明してTOBへの応募を求める方針 だ。すでに2行の頭取は北越紙の三輪正明社長と会談してTOBには応じない意向 を表明している。

今回の案件での財務アドバイザー(FA)は、王子紙が野村証券、北越紙はク レディ・スイス証券、日本紙Gはモルガン・スタンレー証券。

服部助教授は東京大学工学部を81年に卒業、81-88年に日産自動車勤務、89 -2003年までゴールドマン・サックスでM&Aアドバイザー、2003年から一橋大学 大学院国際企業戦略研究科助教授。

北越紙の株価終値は、前日比5円(0.6%)高の822円。

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